調剤薬局の比較・2006年版
調剤薬局の比較です。この業界は行政の医薬分業政策による誘導により急成長を遂げてきました。しかし今期は薬価改正・診療報酬改正ともに厳しい状況であり、明らかにステージの転換点を迎えています。今期以降、中小薬局の淘汰がより進んでいくのではないかと考えられます。年々上昇を続けてきた分業率ですが最新の日本調剤師会のデータによれば18年2月で55.6%となっており、前年より低下してるんですね。14年2月 15年2月 16年2月 17年2月 18年2月 47% 51% 53% 57% 56%ただ4月以降は薬価改正により病院で行われている調剤も収益が厳しくなり再び処方箋の院外化が進むのではないかと思われます。取り上げた8社合計の売上高は約2900億円。調剤市場の規模は3.8兆円と推測されていますが、上場8社で7.6%を占めていることになります。前期の売上高合計の伸び率は24.5%と高成長ですが、これは新規出店の他に上位企業のM&Aによる中小薬局チェーンの取り込みによるものです。今後もこの流れは続いていくと思われます。ただ今期予想が+10%と成長率が鈍化。これは薬価引下げに加えて、調剤報酬も4年振りに引き下げられたことも影響しています。アインFでは薬価▲6.7%、調剤報酬▲3%、合計▲9.7%の影響を見込んでいるようです。経常利益ですが、伸び率は62%→36%→8%→1%(今期予想)と伸び幅が急激に縮小。前期については処方箋の長期化、そして今期については薬価・調剤報酬改定の影響によるものです。経常利益額は前期は1位クラフト、2位アインF、3位日本調剤の順で3社ともほぼ30億円前後ですが、時価総額は1位日本調剤、2位アインF、3位クラフトとなっており、クラフトだけが引き離されて小さい額ですね。今後取り組む第2のビジネスの評価によるものと思われます。増収率・増益率の比較です。売上高は8社中6社が3期連続の2桁増収、経常利益は3社が3期連続の2桁増益。前期減益だったのはアインメディカルとアインFの2社。アインMは新規出店先の患者の集客が予想を下回ったこと、アインFはドラッグストアの不振によるものです。今期予想はメディシスを除くと2桁増益は日本調剤のみ。業界全体が苦しい経営状況です。減益予想は当初アインF、アインMの2社のみで他の会社は強気の増益予想でしたが、その後メディカル一光が中間は増益だったものの通期を下方修正しています。また阪神調剤も通期予想経常利益8.1億円に対して中間ではわずか0.3億円にとどまっている事から今後下方修正されると思われます。(会社の言い訳はM&A案件が多数あるので・・・というものですが)またクオールも中間決算では予想を10%下回っています。これらは薬価引き下げに見合う仕入値下げが獲得できていないことによるものです。従来では仕入もスライドして下がったのですが、今回は厳しい状況のようです。経常利益率・粗利率・販管費率の比較です。1位はアインM。4期前の3.2%から大幅に上昇しています。これは経費(原価に含まれる)削減努力によるところが大きいです。2位はクラフト、3位は日本調剤。こちらは安定した高利益率を持続しています。4位はアインF。前期利益率が大幅に低下していますが、主にドラッグストアの不振に伴う利益率悪化、本部管理費用の増加によるものです。セグメント別では調剤事業の利益率は6.9%、本部費用を売上比率で按分すると5.9%となり調剤事業では実質的に業界1位となります。キャッシュフローの比較です。前期はクラフトの営業CFが前期比+23億円と大きくなっていますが、これは減価償却費を除いた営業利益の大幅増益が+7億円、債権流動化に伴う預かり金増が+5.6億円となっています。投資CFはほぼ営業CF内ですね。アインF、日本調剤とも営業CFは30億円前後で安定していますが、両社とも投資CFが大きくなっています。積極的な出店、M&Aによるものとなっています。在庫回転期間の比較です。アインMが0.25ヶ月と非常に高いレベルの在庫管理体制です。阪神調剤は毎期減少傾向にあり経営効率化が進んでいます。アインFが最も多いですが、これはドラッグストア事業の影響です。PERの比較です。会社予想PERで一番低いのが阪神調剤。ただ中間で下方修正も通期据え置きなので通期下方修正を織り込みつつあると思います。アインMがPER9.7倍と2番目に低くなっています。通期減益予想なので仕方ないかもしれませんね。ただ中間は増益を確保しています。クオール、メディシスはPER14倍前後で相対的には妥当な水準~やや割安な水準と言えます。業界上位3社のアインF、日本調剤、クラフトですが、アインF、日本調剤がPER18倍前後なのに対してクラフトはPER13倍と低評価となっています。利益水準、成長率とも同レベルなのですけどね。この評価の差はジェネリック医薬品卸事業など第2の収益の柱に対する取り組みが評価されているのではないかと考えられます。これらが実際に利益に貢献するかどうかは全く未知数だと思いますけどね。やはりアインF、日本調剤と単純に比較してクラフトは割安ですね。今年の薬価改定後の医薬卸との仕入値交渉は非常に厳しい状況のようです。各社の4半期決算等を見る限り粗利率は1%以上悪化しています。ただクオール、クラフト、アインFの3社はあまり変わらないんですよね。クラフトは先週の中間決算を見ると逆に上昇しています。会社によって結構仕入に差が開いているのでしょうか?最新決算の粗利率比較 前期中間 今期中間クラフト 12.0% 12.5% +0.5%クオール 9.7% 9.6% -0.1%アインF 13.3% 12.9% -0.4% (1Q決算)アインM 9.9% 9.1% -0.8%日本調剤 16.8% 15.9% -0.9%メディ一光 10.3% 8.9% -1.4%阪神調剤 8.4% 5.9% -2.5%