環境を守り、持続性社会を作るための第二の方法は「人工鉱山」を作ることです。
ゴミには貴重な資源が含まれていますが、これを分別したり、リサイクル使用をすると、材料工学や分離工学の原理にしたがって資源としての価値を失ってしまうということを示しました。それは「劣化した材料と貴重な資源が一緒になって薄い状態になる」ということから来るものであることも理解しました。その上でゴミは結局どうしたらよいのでしょうか? それには環境を良くしたいという希望 、ものを大切にしたいという願いから、いったん少し離れて考えてみることです。
リサイクルの基本的な問題は、
① 使ったものは分散している
② 使った材料は劣化している
ということでした。そこで、この二つの現実を厳しく見て対策を練ることにします。
まず、分散しているのを無理に集めることにエネルギーを使わないで、ゴミはできるだけゴミの発生場所から近いところで焼却し、その灰だけをていねいに貯蔵することです。東京都の例ではゴミを焼却すると容積はおおよそ二五分の一になりますので、後で述べる「共白髪」と一緒に考えるとゴミの量は一気に一〇〇分の一程度になります。現在のゴミ貯蔵施設の寿命が二〇年としますと、これも約二〇〇〇年となり、全く問題がなくなります。
焼却した灰には鉄や非鉄金属が含まれています。実は焼却して灰の形で取った方が資源が保全できるのは私たちの製品が複雑な材料の組合せになっているからです。たとえば、手元のあるはさみを取り上げます。最近のはさみは手に持つところにプラスチックが巻いてありますが、このプラスチックは溶かして鉄の表面にライニングされているので家庭で捨てるときに取り去ることはできません。金属がおもな廃棄物でプラスチックが含まれている例です。
もう一つフロッピーを例にあげましょう。この製品はほとんどがプラスチックですが、窓の部分はアルミニウム、ディスクの上の磁気材料が鉄です。重量としてはプラスチックが主たるものですが、この金属はまた使用できます。しかしフロッピーからアルミと鉄を回収することは現実的にはできません。
このように一口に「分別する」「分ければ資源」といっても多くの材料は材料の特性を巧く組み合わせてできていて、分別することは基本的に難しいのです。そして何よりも重要なことは、これらのものは分別せずにまとめて焼却すると劣化しているプラスチックは燃料として使え、金属は人工鉱山に入るということです。もしこれを分別しようとすると現実的には分別できなかったり、不完全に分別することになりますので、結局資源の回収率が減少してしまいます。日本にとってゴミを分別して資源を失うのは耐え難い損失でなのす。
『リサイクル汚染列島』(青春出版社)武田邦彦著より
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最終更新日
2022.08.01 00:00:24
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