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日本は犯罪の少ない国です。多少行きすぎているようにも感じられますが、夜一一時半を過ぎても東京の山手線に乗ると、ときには若い女性の乗客の方が多いようなときもあります。国際的な犯罪率を比較すると、アメリカの一年間の殺人件数一万八〇〇〇件、検挙率六六%に対して、日本は殺人件数で一四分の一の一三〇〇人、検挙率九五%。人ロ一〇万人あたりの殺人件数はアメリカの七%、イギリス、フランス、ドイツ三カ国の平均三・四%に対して、日本はわずか一%!
日本が世界で飛び抜けて安全な国であるという例は、殺人などの犯罪件数以外にもいろいろな証拠があります。その一つが「自動販売機の防御態勢」です。日本には津々浦々にジュースやビールの自動販売機があり、とても便利で、これも少し行きすぎているといわれて、特に子供が自動販売機でどんどんジュースを買って飲む風景は日本だけだ、子供があんなことをしてよいのか、と心配する人もいます。 日本の自動販売機には商品を見せるために透明のプラスチックのカバーが使われますが、この材料はメタクリレート樹脂というプラスチックで、プラスチックの女王といわれるほどきれいで透明なものです。自動販売機に並べられる商品が美味しく見えるためにはきれいなものでなければ使えない、そこでメタクリレート樹脂が使用されるわけです。しかし、この美しい樹脂も日本以外の国ではこのままでは自動販売機には使えません。なぜなら、メタクリレート樹脂はきれいですが、ハンマーでも持ってこられればひとたまりもなく砕けるからです。 日本の自動販売機の防御態勢は「酔っぱらいが長靴や傘の柄で叩いても壊れない程度の防御」でよいので、自動販売機からジュースなどを盗ろうとして計画的にハンマーなどを持ってくる人はいなのです。つまり、日本人は「思いつき」や「酔っぱらってのでき心」で自動販売機を襲うことがあっても、計画的には自動販売機を壊さない国民なのです。 これがアメリカでは全く違い、メタクリル樹脂など全く使えないどころか無防備の自動販売機などを置こうものならいっぺんに壊されて、ジュースはおろか中のお金を抜き取られてしまうのですアメリカやヨーロッパなどの国はこのような状態ですが、日本を除くアジアの各国も似ています。ただアジアの国はアメリカほどでないので、簡単な防御を施せば自動販売機ごと盗まれたり、グチャグチャに壊されたりはしません。決して真似をしないようにしましょう。 自動販売機と同じような現象は「現金書留」でも見られます。もともと郵便制度と現金を届けることはほとんど一体といってよいほどですから、各国ともに郵便制度の中に現金書留の方式があります。たとえばある国では、給与などを現金書留で送る習慣があるので普通に使用されています。しかし、現金書留というのは「ここに現金がありますよ」といって宣伝しながら運ぶシステムでもあるので、かなり倫理観の高い社会でなければ安全に現金を運搬することはできません。その国ではたびたび配逹の郵便局員が現金書留の中の現金を狙って襲われるといわれます。 そこでその国では一度に多くの現金を運ばず、できるだけ分けて小口にして運搬します。数回に分けて届けるのも大変。第一、現金書留を運んでいる間、何時襲われるかとビクビクしていなければなりませんから、現実にも現金書留を配逹する人から苦情が絶えないのです。 このように一つの国の治安が守られ安全な生活ができるのと、危険と隣り合わせに 生活するのとではストレスも違うし、社会システムの経済性も大いに違ってきます。日本人が世界にも希な道徳観を持ち、そのために日本国民が享受しているメリットは計り知れないとともに、そんなに優れたシステムを持つ社会がリサイクルだからといってよーロッパやアメリカを学ぶ必要などないでしょう。日本人の高い道徳観は最近できたものではなく、むしろ、昔の日本の方が今よりずっと安全で、しっかりした国だったようです。それは、幕末に日本に来た外国人の手記でわかります。それを渡辺京二著『逝きし世の面影』(葦書房)から引用させていただきました。 モース「日本人の住まい」(アメリカの動物研究家、日本研究家)「鍵を掛けぬ部屋の机の上に、私は小銭を置いたままにするのだが、日本人の子供や召使いは一日に数十回出入りをしても、触っていけないものは決して手を触れぬ。」オールコック(幕末の駐日英国外交官) 「封建領主の圧制的な支配や全労働者階級が苦労し呻吟させられている抑圧については、かねてから多くのことを聞いている。だが、これらの良く耕作された谷間を横切って、非常な豊かさのなかで所帯を営んでいる幸福で満ち足りた暮らし向きの良さそうな住民を見て、これが圧制に苦しみ、過酷な税金を取り立てられて窮乏してる土地とはまったく信じられない。むしろ、反対にヨーロッパにはこんなに幸福で暮らし向きの良い農民はいないし、またこれほどまでに穏和で贈り物の豊富な風土はどこにもないという印象を抱かざるを得なかった。気楽な暮らしを送り、欲しいものも無ければ、余分なものもない」 ………カッテンディーケ(幕末に来日したオランダの海軍軍人) 「日本人が他の東洋諸民族と異なる特性の一つは、奢侈贅沢に執着心をもたないことであって、非常に高貴な人々の館ですら、簡素、単純きわまるものである。すなわち、大広間にも備え付けの椅子、机、書棚などの備品が一つもない。」 ………ハリス(幕末の駐日アメリカ外交官) 「彼らは皆よく肥え、身なりも良く、幸福そうである。一見したところ、富者も貧者もいない。これがおそらく人民の本当の幸福の姿と言うものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所為であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの他の国におけるよりも多く日本において見出す。生命と財産の安全、全般の人々の質素と満足とは、現在の日本の顕著な姿であるように思われる。」 ここに描かれた日本は若干、ほめすぎかもしれません。江戸末期の日本でも悲惨なとき、可哀相な人は多くいたからです。しかし、同時にここに描かれている生活、人生を私たちは忘れることはできません。 日本は温暖で自然に恵まれています。そのような気候の中で人間がどのような幸福を味わえるか、それを幕末の外国人は教えてくれています。 『リサイクル汚染列島』(青春出版社)武田邦彦著より お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.08.05 00:00:28
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