【送料無料】外資系金融の終わり [ 藤沢数希 ]
外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」という本の一節が話題となっている。
年収5000万円トレーダーの悩ましき日々、という副題がインパクトを与えているが、興味の一節というのは、「キャバクラの経営をはじめたセールス部隊」の項目。
「株のセールスなど、社内のアナリストが書いたレポートを要約して、クライアントの機関投資家に毎朝電話するだけの誰にでもできる簡単な仕事。
機関投資家のファンドマネージャー達も、むさ苦しいおっさんから毎朝電話がかかってきたらうざいだけ。そこで、外資系投資銀行のセールスチームの優秀なマネージャーたちはすばらしいビジネスモデルを生み出した。セールス部隊は顔がいい女子大生を多数雇って、毎朝、客に電話させ、夜は酒を飲みながら接待させることにしたのだ。「ファンドマネージャーは玄人よりも素人のほうが好きだ」というのは本当の意味で真理の発見だった。」
アメリカ表現に、
What happens in Vegas stays in Vegas(ラスベガスでの週末の痴態は、門外不出だ)
というのがあります。
ラスベガスのホテル関係者などは、軽率に顧客の行状に関して口を割らない。証券の世界も、これと同じ。この守秘義務のルールを破ってしまうと、顧客(=運用会社)と証券会社の信頼関係にひびが入ってしまう……。
もう1つは、
dark pool of liquidity(一般投資家には見えていない流動性) です。
ダークプール
最近では、超高速の電子取引のことを言うらしいが、もともとは、人海戦術を意味します。証券界には、「靴ペロ」という言葉がありますが、金のためなら何でもする輩。
外資系金融では、ウォール街の常識というのがありました。
一つの職種の年収が5000万円で、もうひとつの職種の年収が2000万円だったら、優秀な奴は、必ず5000万円の仕事を選ぶ。それがウォール街の常識。
給料は安いけど……2000万円の仕事の方がプレステージアスだから、バイサイドに行く ということは、有り得ないのです。所詮は、金目当てだから、バイサイドが勤まる奴でも、競争の激しいセルサイドで、短期的な高収益を目指す。
それでもバイサイドが「俺達の方が優秀だ」という幻想を抱いていられる理由は、セルサイドが「ハイ、そうですね」とへりくだっているからです。だけど、セルサイドの輩は、まったく、バイサイドのえらそうな連中を尊敬しておらず、金づるとしか見ていません。
往々にして、セルサイドのほうが、バイサイドより高給な時代でした。大物女優と浮名を流すのは大概、外資系金融セルサイドの人間。今は、ウェブ関係企業になっているそうだが・・・
セルサイドは、「靴ペロ」、バイサイドは、「すけべじじい」。
これでは、この業界はもちません。
1990年代の外資系金融は、新しいビジネスモデルによる成長期で働く人々も意欲があった。
2000年代の外資系金融は、日本の金融機関の破たんが続き、日本企業からの流入の受け皿になったが、それほどの成長も成し遂げられず、高給取りも少なくなった。
今の外資系金融はもはや魅力のない世界。資本主義の悪いところばかりめだつ。人間をすててまでするべき仕事ではない。、そして、短期的に数年我慢すればリタイアできるほどの高給ではない。
お客がいなくなった。そう、安易な顧客がいなくなった。そして、年金問題なども生じ、バイサイドである運用会社の顧客もいなくなりそう・・・
「外資系金融の終わり」は、時代の趨勢であろう。
そして、たしかに、キャバクラやホストクラブに近い気がしてきた。