ドイツの電機売り場で日本のテレビ産業を考える
今日はOstbahnhof近くのMediaMarkt に行ってきた。先日に引き続き、今日もパソコン売り場を見て帰ってきた。しかし、ついでにテレビ売り場をのぞいてみると、本当にサムスンとLGばかりだと感じた。パソコン売り場にはまだソニーや東芝も展示されているが、テレビ売り場では日本産メーカーの商品はほとんど目につくことがない。日本製品が展示されていなわけではないのだが、いかにもひっそりと置かれていて、目立たない感じだ。日本にいるときは、日本の電気メーカーが世界ではピンチだなんて思いもしなかった。日本の電気屋さんでは、日本製品であふれかえっているからだ(当たり前だが)。一方、ここドイツでは、日本製であろうと、韓国製であろうと中国製であろうと、結局は同じ「アジア製」である。ドイツ人の意識の中では日本製品の方が他国の製品よりも優れているなんて発想はないから、同じアジア製なら安くて機能のいい方を選択する。そもそもドイツ人はパナソニックが日本のメーカーだからとか、サムスンが韓国のメーカーだからとか、なんて考えないだろう。あくまでも性能と品質、それに価格とデザインの要素が加わって商品が購入されている。私が行ったメディアマークトでは、テレビ売り場正面のもっとも目につくところにはサムスン製の大型液晶テレビが置かれ、客の目を引いていた。少し中通路のほうに入っていくと、やはりサムスンの40インチくらいの液晶が400ユーロくらいで特価品として売られていて、商品の箱が山積みになっている。このサイズでこの値段で買えるのか、と衝撃である。もっと廉価モデルでは、22インチで200ユーロくらいの薄型液晶もあって、これもパレットにサムスンの商品が山積みされている。たぶん、売れ筋なのだろう。日本産のテレビは、どれもサムソンよりも少しだけ高い感じ。かといって機能的に特に優れているわけでもないので、なかなか勝ち目はないかもしれない。 ちなみに、世界の薄型テレビ市場シェアは、サムスン(韓国)28.5%LG電子(韓国)15.2%ソニー(日本)8.3%パナソニック6.8%(日本)シャープ5.0%(日本)となっているようだ(ディスプレイサーチ社調査、2012年第二四半期)。また、テレビ不振が尾を引いて、ショックなことに、2012年11月には、パナソニックとソニーの社債についてムーディズで格付けが下げられ、現在では、両社ともほとんど投機的ともいえるくらいのBaa3である。さらに悪いことに、アメリカ大手格付け会社のフィッチによれば、両社の社債はジャンククラスと評価されている。円高が日本の電機メーカーの国際競争力を下げる一つの要因だと指摘されているが、今では多くの場合、日本国内で電気製品を作って輸出しているわけでもないのだから、必ずしも最大の要因ではないと思う。むしろ、多くの格付け会社等に指摘されているように、最大の要因は日本の産業のテクノロジーの遅れである。パナソニックがプラズマテレビから撤退するなど、日本の電機メーカーのテレビ事業からの撤退が相次いでいる。日本のテレビメーカーは韓国に完全に敗北していることは間違いはないようだ。しかし、このまま負け続けていいのだろうか?廉価な大量販売のテレビでは負けるかもしれないが、テクノロジーで勝負するテレビなら、日本にだって勝ち目があるかもしれない。例えば、アメリカ大手調査会社のGartnerによれば、2016年までにすべての薄型テレビのうち85%はインターネットに接続できるスマートテレビに置き換わると予測されている。すなわち、直近数年間の見通しとして、安価で使いやすいスマートテレビの開発が求められるということだ。日本のメーカーは時代についていけているのだろうか?中国・インド・ブラジル・ロシアなどの大量需要が見込める国に対しては依然として廉価でシンプルなテレビの供給も必要だろう。一方、西欧やアメリカなどテレビ市場が飽和している地域においてはテクノロジーで勝負していくしかない。消費者をあっと言わせる商品を作り出してもらいたいものだ。※ムーディーズでは格付けは、Aaa,Aa1,Aa2,Aa3,A1,A2,A3,Baa1,Baa2,Baa3,Ba1,Ba2,Ba3,B1,B2,B3,・・・のように続いている。Ba1以降が投機的と評価されている)。