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カテゴリ:中江兆民
わが一族、生来酒を好む。年一回、正月の朝、家族集いて御神酒を飲みて時を知らず。父(豪傑君)年少の折に呉海軍少年兵となれり。娘が正月なのにチュニジアに外国旅行に行っているのが気に食わないのか、突然日本は改憲して軍隊を持つべし、と唱えり。
豪傑君「軍隊を持つべし。軍隊を持つべし。チュニジアの古の都はカルタゴである。日本のように貿易立国であったが、軍隊を持たなかったためにローマ帝国に攻められ、国を滅ぼされた。日本はその轍を踏むのはよろしくない。人間には闘争本能がある。守る手段を持っていなかったら殺されるだけだ。」 豪傑君に二人の息子あり。弟(紳士君)のほうは最近護憲運動に関わえり。豪傑君に反論していわく。 紳士君「何を無茶なことを。あなたは軍隊を持つことでさらに戦争への危険が増すことに気がついていない。さらにいえば、人間には闘争本能はあるかもしれないが、それが戦争には結びつかない。縄文時代に戦争はなかった。またカルタゴの場合は、戦争状態になる前にするべき外交手段はなかったのか、その当時無いにしても、現代はある。改憲は論外である。自民党草案を読んだことがあるのか。あれは軍隊を認めるということではない。集団的自衛権を認める、ということである。それは今まで歯止めになっていた「派遣」という言葉が「派兵」という言葉になるということだ。アメリカといっしょに戦争をするということである。」 二人の息子のうち兄(南海先生)は、二人の娘を持つ父親である。二人の言を評していわく。 南海先生「改憲をして戦争への歯止めがなくなるのだとしたら、それはよくないだろう。しかし、現代そのようなことが可能な世の中だとは到底思えない。実際の条文が出来上がってから考えても遅くはないだろう。」 豪傑君「元寇を知らないのか。外国はいつ攻めてくるか分からない。神風もあったが、武力があったからこそ、侵略されずにすんだのだ。」 紳士君「今の憲法でも自衛権はある。自衛のための武力を持つな、ということではない。改憲をしたら、よその国に攻めていくことが可能になるのだ。第二次世界大戦がいい例だ。満州という同盟国を守るという名目で侵略して行っただろう。」 豪傑君「あの戦争はよくなかった。あれは陸軍が暴走したのだ。山本大将はあの戦争には反対しておられた。東条が悪いのである。靖国にせよ、いつ東条が祀られたのか知らんがあの男を祀るからいかんのだ。」 南海先生「どちらにせよ、戦争になるような改憲ならば、それは反対していけばいい。現代に必要な部分があるなら変えていけばいいだろう。」 (ただ先生、墓参りのために結論を急げり。条文は読んだことはなし。) 以上、中江兆民「三酔人経綸問答」に擬して書いたが、会話の内容は今朝話されたことをそのまま書いたので、古典の内容と相当ずれていることを一応お断りしておきます。 明けましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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