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2007年09月22日
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カテゴリ:邦画(07)
「殯(もがり)の森」
監督・プロデュース・脚本 : 河瀬直美
出演 : うだしげき 、 尾野真千子 、 渡辺真起子 、 斉藤陽一郎 、 ますだかなこ

奈良県の一地方の町の少し外れにある古い庄屋(?)を改造したグループホームに暮らしている集団があった。住人は7人の老人と3人の若い女性の介護職員である。もしかしたら、老人は8人いたのかもしれない。最初の画面は昔ながらのしきたりでゆっくりと風に揺れる青稲の海と茶畑の間を行く葬列で始まる。ドキュメンタリーを思わすような映像。彼女の処女作品「萌の朱雀」の冒頭場面、朝の土間での場面でさりげなく家族の絆を見せたあの手法と同じ、これはこれで重要な場面ではある。舞台になったのは奈良市の田原地区。今も土葬の風習が残っているところだそうだ。

次はホームの老人たちの心のケアのためか、寺の住職が呼ばれて老人たちの質問に答えていく場面がある。しげきという名前の少し認知症が入った60代くらいの老人と坊主との「生きる」ことについての問答がある。それはそのまま、この作品の最初から最後までを貫くテーマとなる。

非常にシンプルな作品である。ストレートに、私たちに、生き残ったものはどのように死を受け入れたらいいのか、一つの体験を見せてくれる。

中には、しげきと真千子が二人で車で出かけていく目的がセリフの中ではっきりと明かされていないので、二人が森の中で迷うという設定が少々強引に感じる人はいるのかもしれない。ただ、映画が終わってみれば、二人のドライブの目的はしげきの33年前に死んだ妻の墓参りのためであり、グループホームはおそらくその妻の墓があんな山の奥にあることは露知らず(あるいはしげきが騙して)二人を送り出したのだろうと想像できる。念のために私はこの映画を二回見たという知り合いの介護福祉士の方に「あんなふうにたった二人で出かけることはありえるのだろうか」と聞いてみた。「ホームの方針によるのでは?」と言うことだった。絶対ないと言うことはないのではある。おそらくあれも「こうしゃんなあかんってこと、ないから」という主任の方針のひとつの表れなのだろう。主任はいい加減なのではない。一晩二人が帰らなかったことで、すぐにヘリコプターを飛ばしたことでも責任感の強さはうかがい知ることは出来る。けれども一人ひとりの介護をするときに、「こうしなければならないということはないのだ」と覚悟することは大切なことだろうと思う。

テーマとは関係ないが、もうひとつ気になったのは、7~8人の老人に3人の職員がつくのは多すぎると思うのだが、さきの知り合いの介護福祉士は「定員によって職員人数は決まる。その決定は、管理者の判断です。」とのことだった。あんなグループホームもありえるのでしょう。散歩のときはとても気持ちよさそうでしたね。

圧倒的な緑の洪水だった。稲田に茶畑、陽にかざす若葉、森の奥の陽の入りの少ない濃い緑、朝もやの草の広場、太古の木、墓の土、獣道、鉄砲水、焚き火だけの明かり、自然の色のあらゆるバリエーションをこれでもかと言うぐらいに見せ付ける。土葬にされた死者はその中で静かに眠り朽ちていく。

今まで監督は極端に説明的なセリフを嫌ってはいたが、今回は最低限の説明が入っているという気がした。坊主との問答もそれであるが、映画の最後にはこのような意味のテロップも流れる。
殯(もがり)とは、敬う人の死を悼み、しのぶ時間のことである。また、その場所の意。語源としては「喪あがり」すなわち「喪」があがることから来ているのではないかといわれている。
思うにはこの映画で言いたいことはこの説明に尽きる。





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最終更新日  2007年09月23日 01時23分47秒
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