テーマ:映画館で観た映画(8351)
カテゴリ:日本映画
長野県下伊那郡、大鹿村。
南アルプスの麓に位置するこの小さな村は、300年以上の歴史と伝統を誇る村歌舞伎が自慢である。シカ料理店“ディア・イーター”を営む風祭善(原田芳雄)は、その大鹿歌舞伎の花形役者。しかし実生活では、18年前か女房の貴子(大楠道代)に逃げられて以来、寂しい一人暮らしの日々。そんな中、村ではリニア新幹線の誘致を巡って意見が対立モメている。 公演が5日後に迫っても、善以外はなかなか稽古に身が入らない。 するとそこへ、貴子が駆け落ち相手の治(岸部一徳)と一緒に戻ってきた。しかも治は、認知症を患った貴子を持て余し、善に返すと言い出すのだったが……。 そんな折、暴風雨が村を襲う。 女形の一平(佐藤浩市)は土砂崩れに巻き込まれ舞台には立てなくなってしまう。 さて、演目『六千両後日文章 重臣館の段』の行方は……。 この映画、NHKドラマ『おシャシャのシャン』(2007)に出演を契機に、大鹿歌舞伎の存在を知り、 地元の役者衆と観客とが一体となって楽しむ娯楽の原点に魅せられた原田芳雄が阪本順治監督にテーマを示し、阪本順治と荒井晴彦が書き上げたオリジナル脚本。 阪本順治監督は1989年の監督デビュー作『どついたるねん』以来6作品で原田とタッグを組んできた。 そして、本作は阪本順治監督が原田芳雄主演で撮った“大人の人情喜劇”である。 共演の大楠道代と原田芳雄には『ツィゴイネルワイゼン』(1980)という傑作もある。 阪本組の常連、岸部一徳、佐藤浩市に加え石橋蓮司、でんでん、小倉一郎、松たか子、瑛太ら。三國連太郎も出演し、さりげなく佐藤浩市と親子の共演を果たし、見事なキャスティングで魅了する。 この映画の上映時間は1時間33分。ムカシのプログラムピクチャーのような味わいも、いい。 撮影は、昨年の11月。2週間で撮りあげた。 原田芳雄は、5月上旬から体調を崩し、それでも『大鹿村騒動記』の現地完成試写会に赴いた。 診察の結果腸閉塞であることが判り、闘病を続けていたが、肺炎を併発していた。 7月11日に東京・新宿で行われた『大鹿村騒動記』プレミア試写会挨拶では、車椅子で会場に姿を現した。 この時の写真を見てショックだった。 あの原田芳雄とは思えない別人のような貌で痩せていた。 そして、原田芳雄さんの訃報に呆然。 7月19日、台風の接近に伴う『大鹿村騒動記』の中の嵐のような暴風雨の日。 名優、原田芳雄死去。71歳。 『竜馬暗殺』(1974)、『祭りの準備』(1975)の頃から観続けてきました。 独自の雰囲気のカッコいい俳優だった。 カッコいいのだが、人間の、男の存在の可笑味を隠し味のように漂わす稀有な表現力をもった俳優であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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