大記録達成者に全うな評価を
フランス代表のストライカーと言えば。バルサ所属のアンリ。ユベントスのストライカーと言えば。デルピエロ。多くの人がそう答えるのかもしれない。だが彼を忘れるわけにはいかない。ダビド・トレゼゲである。フランス代表でもあり、ユベントスに所属するトレゼゲが先週行われたローマ戦においてゴールを決め、セリエA通算100ゴールを達成した。過去7人の選手がこの記録を達成しており、トレゼゲが8人目の達成者になる。FWにとっては守備的な戦術が支配するセリエは非常に困難なリーグである。また数シーズンだけで所属クラブが変わる現状では、コンスタントに、そして継続して記録を残し続けることは大変難しいものになっている。2000年にモナコから移籍してきたトレゼゲだが、セリエという舞台で大きな怪我もそれほどなく結果を残し続けてきたことだけでも、優秀なFWと言えることができる。ちなみに過去にこの記録を達成した選手を現在の記録順に並べると、以下のようになる。トッティ(ローマ) 374試合155得点モンテッラ(サンプドリア) 266試合138得点キエーザ(シエナ) 379試合138得点デルピエロ(ユベントス) 335試合135得点ビエリ(フィオレンティーナ) 233試合135得点クレスポ(インテル) 246試合133得点インザーギ(ミラン) 289試合127得点トレゼゲ(ユベントス) 155試合100得点いずれもイタリアを、そして世界を代表する名FWばかりである。だがトレゼゲには、これらの選手達の記録を超える可能性さえ持ち合わせているのだ。例えば試合数と得点の関係。トレゼゲは約1,5試合に1点の割合でゴールを決めている。単純計算だが200ゴールを決めるには300試合必要という計算である。過去の7人はいずれも未だ現役選手だが、トレゼゲと同じ可能性を残しているのはわずか4人に過ぎない。だが4人とも計算上は1試合1点以上のペースで量産しないと、トレゼゲと同じ結果は残せない。もちろん年齢や今後に大きな怪我をする可能性もあるのだが。次にその年齢だが、トレゼゲは今年30歳である。低年齢化が進みトレンドにもなりつつある現在ではベテランと呼ばれてもおかしくない年齢だが、この8人のなかでは一番年下である。今後ペースが上がることこそないだろうが、コンスタントに結果は残せることが出来るだろう。デルピエロやトッティなどとはわずか1,2歳の差しかないが、純粋な点取り屋でもあるトレゼゲならもっと偉大な記録を作る可能性もあるわけだ。もちろん否定的な要素もないわけではない。昨シーズンも15ゴールを挙げたものの、そのときユベントスはセリエBにいた。例のカルチョ・スキャンダルの影響である。よってこの15ゴールは今回の100ゴールには含まれていない。そして試合数も含まれていない。丸1年分の成績が、今回の記録だけに関して言えば無駄な成績なのである。また先に書いたように、最近は1クラブでキャリアを全うする選手は多くない。今シーズンで8年目を迎えるトレゼゲだが、今シーズン開幕前にはチームを離れる類のコメントも出していた。一応は残留で合意したものの、今後もこのような騒動が起こらないとは言いきれず、海外クラブに移籍するようなことになればこの記録もストップしてしまうことになる。決して1人の力では成しえない記録である。周囲のサポートがあるからこその記録でもある。だがそれでも過去の達成者を振り返れば、やはり個人の能力も並外れたものでなければ達成不可能な記録である。目に見える派手さはないかもしれない。周りの選手が目立ちすぎていることもあるだろう。それゆえなのだろうか、あまりにも過小評価されているように感じてしまう。もう少し全うな評価をしてもいいのではないだろうか。記録が物語っているように。ほな、また。