今頃になって感想を書くなんて、いやはや...
様々な媒体で多くが語られ、2010年度のアカデミー賞を受賞した名作「英国王のスピーチ」を久々に一昨日見直した。それというのも、このところの映画に良いと思える映画が少ないと感じていたからだ。アクション、SF、ドラマと映画は多々上映されているが、これだけ満足に結びつく映画が無いというのも珍しいくらいに思う。
そんな中、この「英国王のスピーチ」は最近の作品の中では群を抜いている。登場人物の設定といい、脚本は実話故のものであり、創り方の品位の高さなど、ここ数十年くらいの映画界に欠如しているものを観た思いでもある。賞を獲得したからとかではなく、本当に素晴らしい映画に巡り会えたという感じだ。こういう作品を観ると、あらためて賞を獲得して当然だったと納得する。結果は先には表れない。その典型である。
あらすじを少し。幼少時の恐怖を抱えたまま大人になった“バーティ”ことジョージ6世は現在の女王エリザベス2世の父である。自己嫌悪の塊でありながら短気な面も持ち合わせた複雑で繊細なこの人物をコリン・ファースが好演。常に夫を支える頼もしいエリザベス役にヘレナ・ボナム=カーターが気品と極上のユーモアをもたらし、さらに対等で親密な関係こそが治療の第一歩と信念を持つローグに名優ジェフリー・ラッシュ。この最高の布陣でメガホンをとったのは「第一容疑者」などで手腕を発揮してきたトム・フーパー。
事実映画が公開された時、現在のエリザベス女王はたいへん感動されたとの事。ナチス・ドイツとの開戦前夜、まず自分自身の劣等感と闘った国王に拍手喝采せずにはいられなくなる映画である。バックに流れるベートーベンの第7交響曲の第二楽章も抜群に相まっている。