久々に投稿。最近は映画を観るのが休日の重ね観をすることが多くなった。
今日は今年2月にDVDになった『マージン・コール』(原題:Margin Call)を観た。日本では上映されることがなかっただけに、正直気にもとめていなかった作品だ。
レンタルで借りたが、結論としてこの作品かなり凄い。金融パニック的な映画は多々あるが、その中でも先の「ウオルストリート」同様、それ以上にリアルであり、スクリーンから目が離せない緊張感の連続の映画であった。それに題材どおりこれは実話で、2011年のアメリカ合衆国のドラマ映画仕立ての自主映画として制作されたものである。
大手投資銀行(リーマン・ブラザーズをモデルとしている)の24時間を舞台とし、2007年に発生した世界金融危機に焦点を当て、金融危機のあいだに従業員たちが取る行動が描かれている。2011年1月にサンダンス映画祭で初上映され、10月21日にアメリカ合衆国で劇場公開された。
ウォール街のとある投資銀行で、ある日、突然の大量解雇が発表される。リスク管理部門でも多くのスタッフがオフィスからの退去を命じられる中に、リスク管理部門の責任者エリック・デールの姿もあった。彼は「用心しろ」という意味深な言葉とUSBメモリーを部下であるピーター・サリヴァンに手渡す。その晩、残されたデータを分析したピーターは、会社が全資産を超える損失に繋がりかねないリスクを内包した大量の金融商品(不動産担保証券、いわゆるサブプライム商品)を抱えているという結論に達した。
即座に新たに上司となったウィル・エマーソンを呼び出し状況を説明するピーター。既に状況は逼迫しており、明日にもリスクが顕在化する危険があった。ウィルと上司のサム・ロジャースは緊急役員会の招集を進言する。
実際にこの映画に示されるようなことが確実に行われたのではないだろうかと、アメリカ発のリーマンショックは世界を激震させた。今尚その余震はアメリカならずとも日本やアジアを含み、ヨーロッパ全土に縦横し危機的な状況を生んでいる。岐宿もギリシャやスペインの金融市場にみる今日の姿はリーマンの後遺症から発生しているといっても言い過ぎではないだろう。
この映画は金融市場のことも去ることながら、非常に客観的に教えてもらうことが多い作品である。特に大量解雇の成せる術、良いも悪いもこの恐ろしいほどのクールさは、日本企業では到底考えにくい。解雇という事象は現に有るが、もう少し考える時間はありそうな気がする。現実に日常茶飯事にアメリカでは起きている解雇のスタイルだ。だが、これは辛辣。言葉も行動も強烈である。24時間、一日の事だが、命運を判断するのは数時間だった。結果、翌日から起きた世界恐慌は1929年以来のものとなった。一日で8兆ドルの資産の投売り・・・大河の始まりも、一滴の水からという喩が世界を激震させた源である事を脳裏に焼きつかされる。
実話題材における脚本の素晴らしさ(J・Cチャンダー監督・脚本)、観終わったあとにつくづくこの映画になくてはならなかった名優ケビンスペーシーやジェレミー・アイアンズを始めとする俳優陣が緊張感に満ちた素晴らしい作品を創ることに成功したのだと感服した。最後に映し出されるシーンは、観る人すべてに語りかけるものがあると思われる。2011年、ニューヨーカーでの評価はウオール街を描いた作品の中で最高傑作であると評している。小生もそう思う。これだけ一瞥もせずに緊張しっぱなしで観続けた映画は、少なくともここ数年は無かった。お世辞抜きで観て損の無い重心な作品だと思うので、興味のある方は是非ともと薦めたい。