糖尿病の治療を中断したらだめなのか?
今回は初めから斜体です。(個人的な意見を記載しただけで、引用したものを否定するものではありません)糖尿病受診中断マニュアルが公開されています。これは厚生労働科学研究「患者データベースに基づく糖尿病の新規合併症マーカーの探索と均てん化に関する研究-合併症予防と受診中断抑止の視点から」の糖尿病受診中断対策包括ガイドの抜粋です。ガイド マニュアル中断率は年8%で様々な手段で介入を行うと、その率は減少できています。その手段に関しては栄養指導、療法指導受診時間の融通性残薬がある場合は経済的負担が高い可能性があるので、低薬価あるいは後発医薬品の使用を考慮する。薬剤を中止できそうな場合でも、その後の受診中止を考慮して慎重に考慮する受診勧奨を行う、電話、郵便物、メール年2~3回尿アルブミン値の検査年1回眼科検診足の診察禁煙指導で、何か受診を勝手にやめると何か悪いことが起こるのか?に対する回答はガイドの12ページにこう書かれています。 「 受診中断を防ぐことによる医学的な利益については、データが十分ではなく定量的な評価が困難であるが、受診中断者はその後合併症が生じてから受診を再会することが多いことを考えると、年間 26万人、10年間で 260 万人の受診中断を防ぐことにより、かなりの数の合併症を予防する ことが可能であることが予測される。」 医学的な利益に関しては定量的には評価されておらず、合併症が生じてから受診を再開することを根拠にしていますが、これは印象評価で医師がそういうヒトと再会していてい、印象が強いからそう思っている、そのまま受診しないヒトがどれぐらいいるかが分からないので、本来は根拠になりません。 いくつかの論文引用され、下記のように記載されています。受診中断者の血糖コントロールは、継続通院者と比較すると不良である。Schectman JM, Schorling JB, Voss JD 2008 Appointment adherence and disparities in outcomes among patients with diabetes. J Gen Intern Med 23:1685-1687Hammersley MS, Holland MR, Walford S, Thorn PA 1985 What happens to defaulters from a diabetic clinic? Br Med J (Clin Res Ed) 291:1330-1332 Jacobson AM, Adler AG, Derby L, Anderson BJ, Wolfsdorf JI 1991 Clinic attendance and glycemic control. Study of contrasting groups of patients with IDDM. Diabetes Care 14:599-601アルコールの多飲の習慣や喫煙習慣のある 2型糖尿病患者が受診中断を行い易いことが明らかになっておりGraber AL, Davidson P, Brown AW, McRae JR, Woolridge K 1992 Dropout and relapse during diabetes care. Diabetes Care 15:1477-1483増田千春, 大野清美, 尾山芳子, 大野洋子, 炭山久美子, 沢寿賀子, 門井美保子, 飯沼笑子, 松下盛子, 塩崎正美, 福本佐衛子 1983 糖尿病患者通院中断の要因について―その一考察―. 看護技術 29:95-99 古賀明美, 松岡緑, 山地洋子 2003 受診中断中にある糖尿病患者の療養生活および治療の認識―継続者との比較―. 日本糖尿病教育・看護学会誌 7:15-23受診中断のハイリスク群は合併症発症のハイリスク群であることが推定される岡田泰助, 奥平真紀, 内潟安子, 倉繁隆信, 岩本安彦 2000 学校検尿と治療中断が 18 歳未満発見 2型糖尿病の合併症に与える影響. 糖尿病 43:131-137奥平真紀, 内潟安子, 岡田泰助,岩本安彦 2003 検診と治療中断が型糖尿病合併症に及ぼす影響. 糖尿病 46:781-785 杉本英克, 中石滋雄, 磯谷治彦, 大石まり子, 大橋博, 奥口文宣, 加藤光敏, 栗林伸一, - 14 - 福田正博, 宮川高一, 山名泰生, 土井邦紘, 伊藤眞 2013 通院中 2 型糖尿病患者における中断歴に関する多施設調査. 糖尿病 56:744-752 若い 2型糖尿病患者を対象とした研究ではあるが、受診中断者がその後の合併症を発症しやすいというデータも存在する岡田泰助, 奥平真紀, 内潟安子, 倉繁隆信, 岩本安彦 2000 学校検尿と治療中断が 18 歳未満発見 2型糖尿病の合併症に与える影響. 糖尿病 43:131-137 中断した場合に合併症の発生率が高いのは結局18歳未満の2型糖尿病だけが定量的に検討されています。 糖尿病治療を否定するわけではありませんが、なぜずっと薬を飲み続けなければならないのかの積極的なデータがないのでちょっと気になります。 最近、病的肥満の糖尿病患者さんの場合は、胃を小さくする方が、薬剤治療継続よりも合併症の発生率が低く、HbA1cの目標値達成率も高かった、慢性疾患のRCTに関して服薬遵守に関してはデータが不十分である、一人の合併症発症予防をえるためには50人以上の患者が必要(50は100だったかもしれません)って文献を読んだからかもしれません。 ガイドラインには「薬剤を中止できそうな場合も、その後の受診中断の可能性を考慮して慎重に判断する。」と書いてあります。慎重に対処するというのは具体的にはどういうことでしょうか。年に2~3回は受診すべきことをちゃんと守らせるということだと思いますが、受診中断リスクの高いヒトは中止しないとも読めるのでもう少し具体的な記載がほしいと思いました。 かかりつけ医が実際に機能することによってかなり解決するような気がします。 何かあったらそのお医者さんに行くとすれば年数回は受診する可能性は高いと思います。コレに年1回の健康診断が入れば経過観察は可能かと思います。