直江津の人魚
直江津駅の駅前通りを北へ向かって歩いて行くと道の先に海が見えてきた。遠くに何かの像が見える。気になったので覗いてみた。赤い絵の具で絵が描かれた蝋燭を持った人魚だった。顔を見ると何か思い詰めているのか悲しい表情をしている。人魚が座っている岩の裏を見ると上記のことが書かれてあった。人魚像はブロンズ像で上越市出身の童話作家小川未明の作品「赤い蝋燭と人魚」にちなんで作られたものであることがわかった。物語は「人魚は南の方の海にばかり棲んでいるのではなく北の海にも棲んでいる。ある時、女の人魚は岩の上にあがって休み、雲の間からの月光、物凄い波がうねっている景色を見ながら自分達の世界は、なんて淋しい世界なんだろう。それに対して人間の住んでいる世界は美しく、人間は人情があって優しいそう。人魚はそんなこと思い人間世界に憧れを抱いていた。やがて女の人魚は妊娠した。これから産れる子供には悲しい思いをさせたくない。自分達は、人間とあまり姿は変っていないので人間の中に入って暮らせないことはない。優しい人間の世界で幸せになって欲しい。子供と別れて、独り寂しく海の中に暮らすのは、悲しいが子供の将来を考え、女の人魚は、女の子を陸の上に産み落とし、老夫婦に託した。老夫婦は産み見落とされた子供を大事に育てた。老夫婦は海岸の小さな町の小高い山のお宮の近くで蝋燭を売っていた。付近の漁師がお宮へお詣する為に蝋燭を買ってくれていた。蝋燭を老夫婦がせっせと作っている姿を見て人魚の娘は蝋燭に絵を描いて売ることを思いつく。朝から晩まで、子供や大人が絵が描かれた蝋燭を買いに来た。人魚の娘は手の痛くなるのも我慢して赤い絵具で蝋燭に絵を描いた。その後、評判を聞きつけた香具師がやってきて人魚の娘を売るように迫った。老夫婦は最初は断っていたが大金に目がくらみ人魚の娘を売ってしまう。人魚の娘は香具師に猛獣の檻に入れられ連れていかれてしまう。猛獣の檻に入れられた人魚を乗せた船が南の方の国へ行く途中で沖合にあったその夜、天気が急変し大暴風雨となり、数えきれないほどの船が難破した。以前はお宮に絵の描いた蝋燭のともっていれば、海の上での災難に遭わなかったが、娘が連れ去られた後はお宮に赤い蝋燭が点ともった晩は天気が良くても大嵐となった。不吉ということになり、老夫婦は蠟燭屋をやめ、時間もたたない間に町は亡びて、失なくなってしまった。」という内容であった。人魚の娘はどんよりとした暗い空を見つめていろいろと考えていたのかもしれない。人間の住んでいる美しい街、優しい人間の世界で幸せに暮らしてほしいという親心であったが、結局人魚の娘は幸せになれなかった。物語を読んで悲しくなってしまった。人間は人情があって優しい一面があるが、利己主義で醜い心を持っている。学校に通っていても、会社に勤めていても変わらずそれを感じる。人間社会は、生活するため、富を得るため人と人とのいがみ合い。争いの世界である。生き残りをかけた世界である。あと自分は何年もつのだろう。このブロンズ像を見て、物語を読んでいろんなことを感じさせれられた。