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みなさん、こんにちは。 今回は、排ガス浄化装置と燃費の関係についてのお話ですが、このへんは「ガソリン車は大丈夫なのか?」という話とも関係してきますので、まずそのへんからお話ししましょう。 ガソリン車の排ガス浄化装置は「三元触媒」といって、CO、HC、NOxの3つを同時に浄化し、CO2とH2Oにすることができます。COとHCは、ガソリンの不完全燃焼によって生じ、NOxは空気が高温に晒されることで、本来は結合しない大気中の窒素(N)と酸素(O)が化合してできてしまいます。 これらを三元触媒でもれなくCO2とH2Oにするには、理論空燃比で燃やす必要があります。理論空燃比とは、ガソリンを燃やした時に、ガソリンが全部燃えてしまい、なおかつ酸素がひとつも余らない重量比で、ガソリン1に対して空気が約14.7の比率と言われています。 ガソリンは炭化水素燃料ですから、炭素と水素を主成分にしています。でも、なんとかブタンとかヘプタンとかペンタンとか、複数の化合物から出来ていますので、ひとつの化学式では表せません。めんどくさいので「HC」 としますが、これがH2OとCO2になるには、3個の酸素が必要で、こうなる比率が「理論空燃比」だと思ってください。 で、ガソリンエンジンの場合、理論空燃比で燃やしている限り、三元触媒があれば浄化率は95〜98%ぐらいになります。パワーを出すには、もうちょっと濃い12.5〜13ぐらいの空燃比が良いのですが、そうするとCOやHCが出てしまいます。急加速の際に、これぐらいの空燃費を短時間、使用しているクルマはかつてはけっこうあったようですが、安易に使用すると実用燃費が悪くなりますから、各メーカーとも、なるべくやらない方向に向かっているようです。それ以外に空燃比を濃くしているのは、エンジン始動時とエンジンが冷えている間のアイドリング時ですが、これもコールドスタートエミッション(冷間時排ガス)の計測が始まったJC08モード適用以降、減らす方向に向かっています。 では薄いほうは、というと、かつては「リーンバーン」という低燃費技術があったように、薄くした分だけ吸気損失が減り、燃費は稼げます。しかし、燃焼が不安定にならないようにするためには、せいぜい17ぐらいまでしか薄くできず、あまり取り分は大きくありません。しかも酸素が余るので、三元触媒ではNOxの浄化ができなくなります。最近は排ガスを再吸入させるEGR(Exhausut Gas Recirclation)で吸気損失を削減する技術が確立していますから、不正をしてまで燃費を取りにいく「うまみ」がほとんどないんですね。 というわけで、ガソリンエンジンの場合、「お目こぼし」の範囲で濃くする程度はやっていても、法に抵触するという意味での「不正」は行われていないと思います。直噴ガソリンの場合、PM2.5が出てるんじゃないかという疑いはありますが、少なくとも法規を逸脱した「不正」は、やっていないのではないかと思います。 それではディーゼルエンジンの排ガス対策はというと(PM対策のフィルターは除きます)、リーンNOxトラップ触媒、尿素SCRシステム、低圧縮比化の3つが存在しています。 ガソリンエンジンは基本的に理論空燃比燃焼ですが、ディーゼルエンジンは基本的にリーンバーンです。これは着火方式の違いによるものですが、説明するのはめんどくさいので(^^;;、そういうものだと思ってください。リーンバーンの場合、排ガス中に酸素がたっぷり入っていますから、三元触媒を使っても、浄化できるのはCOとHCだけで、NOxのNとOは離れてくれない(というか、一度離れても、近くにあるOがすぐくっついてしまう)んですね。 そこでNOxを触媒にトラップしてしまおうというのが、リーンNOx触媒です。しかし、トラップ量は無限ではありませんから、いずれいっぱいになって効き目がなくなってしまいます。そうなったら、意図的に軽油の噴射量を増やして、排ガス中に余剰のCOとHCを作り、NOxからOを引っ剥がしてCOやHCにくっつけ、トラップしたNOxを吐き出すということが行われます。 すなわち、触媒に溜まったNOxを空するために、軽油を余分に噴射する必要が生じるわけで、これが燃費を悪化させてしまうんですね。しかもNOxトラップ触媒には貴金属を使いますから、コストを抑えるためには、なるべく小さくしたい。小さくするとトラップ能力が落ちますから、そもそも生成されるNOxを減らさなければならない。そのために行われるのが、燃料の噴射時期の遅角です。 効率良くパワーを取り出すためには、軽油を燃やし始める理想的なタイミングがあります。自転車のペダルを踏むのに、力を入れやすいタイミングがあることを想像すれば、イメージできるのではないでしょうか。 ところが理想的なタイミングで燃やすと、圧力と温度が高くなり、温度が高いほど生成しやすいNOxの量が増えます。だからタイミングを遅くして、あまり圧力と温度が上がらないようにするわけですが、すると、ペダルが下がってから自転車を強く漕ぐのと同じで、効率が悪くなる=燃費が悪化してしまうんですね。 ということで、排ガス測定モードだけクリヤして、安いコストで実用燃費を高めようと思えば、二重プログラムで排ガス浄化装置を失効させればいい、と、悪魔がささやいたのだと思います。 では尿素SCRは、というと、尿素水を排ガス中に噴射して、加水分解で生成したアンモニア(NH3)を使ってNOxを浄化しますから、軽油を余剰噴射する必要はないし、リーンNOx触媒よりも浄化効率が高いので、噴射時期の遅角も大きくせずにすみ、燃費の悪化を抑えることができます。その代わり、20Lレベルの尿素水タンクや、尿素噴射装置を積む必要があるので、コストも搭載場所も必要になるのですが、なにしろ燃費が悪化しないので、中型乗用車から大型トラックなどは、尿素SCRが主流になっているんですね。 このシステムの場合、不正をしても、燃費はほとんど良くなりません。尿素の消費量が、多少、抑えられる程度でしょう。だからこのシステムを搭載しているクルマは、不正をしている可能性はほとんどないと考えて良いと思います。VWはパサートには尿素SCRを使用しているにも関わらず、不正プログラムを使用していたようですが、これはSCRの出来が悪くて効率が低く、EGRや点火遅角を多めに使わないと規制値をクリヤできなかったか、十分の容量を持った尿素タンクの置き場所が確保できずに、補充サイクルを伸ばそうとしたかのどちらか(両方かも)だったのではないかと想像します。 もう一つの手段である「低圧縮比化」ですが、これはマツダが採用している方式です。圧縮比を下げると燃焼開始温度が下がり、燃焼温度そのものも低下するから、NOxの生成が抑えられるわけですね。圧縮比というのは機械的に決まってしまい、プログラムで動かせるものではありませんから、その点では「不正は行いようがない」と言えるのではないかと思います。 ただし、圧縮比を下げただけではNOx規制値をパスすることはできず、EGRや点火遅角も併用しています。EGRを入れる量や燃料噴射時期については、コンピューターで自在にコントロールできますから、システムとしては「不正をする余地はある」と言えますが、マツダがやっているかどうかは、個人では確認できないので言及しません(NOx後処理方式ではないので、不正はしていなくても、負荷が高まれば尿素SCR式より多めのNOxが出ちゃってる可能性はあります)。 というわけで、各メーカーの「不正なプログラムは使用していない」というのは、おおむね信じて良いのではないかと思います(規制値より多くの汚染物質が出ているかどうかはまた別の話です) 。 プログラムの不正を行わせないようにするために、今後は実走行でも排ガスを計測することが検討されているようですが、あわせて、現在は企業秘密として開示されていない制御プログラムそのものを、関係省庁に提出することを義務付けるようにすれば、より不正の抑止力になるのではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 21, 2015 03:21:28 PM
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