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アルタクセルクセスの王宮址遺跡

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2006年10月18日
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カテゴリ:西アジア・トルコ
 最近日記が回想モードになりつつあるが(笑)、このニュースについて。

(引用開始)
トルコ古都で邦人ツアーバス横転、1人死亡・2人重体
 【カイロ=柳沢亨之】アンカラの日本大使館などに入った連絡によると、トルコ中部コンヤの西約20キロの交差点で17日午後7時半(日本時間18日午前1時半)ごろ、日本人観光客24人と日本人添乗員1人を含む計27人を乗せたバス1台がスリップして横転した。(後略)
(読売新聞) - 10月18日14時37分更新
(引用終了)

 日本人観光客がトルコで交通事故にあったというニュースは以前にも聞いたことがあるが、トルコへの日本からの観光客が激増しているという現在ならば、こういう悲しいニュースに接することがあるのも無理ないかもしれない。トルコ旅行というと睡眠薬泥棒とか強盗、クルド人分離主義者のテロとかを心配する人もいるだろうが、僕に言わせればテロや泥棒に遭うより交通事故に遭う確率の方がよほど高いからである。
 作家の村上春樹は1988年にトルコを車で一周して「雨天炎天」という紀行を書いているが、その中でトルコ南東部の道路のデタラメぶりを記していたと思う。その後90年代にトルコでも高速道路網が整備され、道路事情そのものはだいぶ良くなっているのだが、トルコの経済成長に伴って自動車も爆発的に増えているし、トルコ人の運転マナーの滅茶苦茶ぶりは相変わらずなので、人口に対する交通事故発生率は世界でもトップクラスと言っていいのではないだろうか。
雨天炎天

 トルコという国は日本の倍の面積がある。その割には鉄道網が極めて貧弱で(トルコの山がちな地形のため、鉄道建設が困難)、移動・輸送手段はいきおい自動車が中心となる。
 その道路はというと、主要路線では高速道路網がほぼ整備されたのだが(料金のせいかイスタンブル周辺を除いていつもガラガラだが)、支線や田舎に行くとどうしても道が悪い。しかもコンヤのある中央高原は夏は40℃近いカラカラの酷暑、冬は雪が積もる酷寒の地である。一日の中でも寒暖の差が激しいのでアスファルトがぼろぼろになって路面が穴だらけになったりする。もちろん修理はしているのだが追いつけるものではない(さすがに高速道路ではきちんと直している)。またコンヤ平野などはなだらかな丘陵地帯と岩山が繰り返すだけの荒涼とした単調な景色と真直ぐな道が続き、運転していて注意が散漫になりやすい。
 そしてその道路を走っている車が様々である。今回事故を起こしたような高速バスはベンツや三菱の最新鋭のバスを導入していて、性能や整備に全く問題はない(乗り心地もサービスもいい)。しかし周りを走る自家用車やトラックは整備不良や老朽化した車が多く、坂道になるとトラックが黒煙を吐きながら気息奄々で這っている光景を目の当たりにする。しかも地方だと農道と兼用になっていたりするので、のろのろと走るトラクターや巨大な刈り入れ機、やたら停車するドルムシュ(近距離乗り合いバス)、馬車(最近は少ない)、そして羊・牛の大群や獰猛な牧羊犬、ロバなどが路上に現れる。様々な性能や速度の乗り物がそれぞれのペースで道を走ることになる。
 そして最悪なのはトルコ人の運転マナーである。スピード狂なのはドイツ人と同じだが、決定的に違うのは運転が滅茶苦茶な人が多いこと。パッシングして煽るわ道を譲らないわ、二重追い越しなどもあったりする。速度超過しているからぶつかったら大惨事になる。またトラックは過積載が多く、夏の収穫の時期になるとジャガイモや小麦粉袋をうずたかく積み上げた老朽化したトラックが走り回る。都市やその周囲では交通警察が取り締まりもしているんだろうが、かなり恣意的でそれほど熱心とも思えない。警官の主要な収入源とさえ思えるセルビアでの速度違反取締りの熱心さとは、目的は同じでも熱心さがちょっと違う。

 僕はもう10年くらいトルコと日本、あるいはトルコとドイツの間を行き来しており、訪問目的が目的だけに田舎に行くことも多い。今までに二回交通事故に遭遇したので、その顛末を書いておこうと思う。先に言っておくが、二度とも僕は無傷だった。

 最初はアンカラからイスタンブルに向う高速バスでのこと。アンカラのバス・ターミナルを出てやや混み気味の高速道路に乗って少し走っていると、合流で車線変更した時に前を走っていたタンクローリーと接触した。スピードが出ていなかったので少し凹んだだけで済んだのだが、運転手のほうはそれで済まない。車を路肩に停めて双方の運転手が口論を始めた。バスの乗客も加勢して口論は白熱する。しかしバスの方はお客をイスタンブルに送り届けないといけないので、口論を打ち切って発車しようとした。するとタンクローリーの運転手が激怒してバスに飛びかかったり靴を投げ付けたりした。
 狂乱する運転手を尻目にバスは発車したが、なんとタンクローリーの運転手は携帯電話で仲間を呼び、その車でバスを追跡し追い越し、窓を開けて何か悪態を叫び続けている。バスの乗客は何をされるかと恐々で半ばパニック状態になり、携帯電話で警察に電話しようとする。しかしバスの窓は電波を遮るらしくうまく繋がらない。「あいつらケモノみたいだ」と乗客は怯える。
 さらに運悪く料金所があって止まらないといけなかったので、口論第2ラウンドが開始される。トルコ人(やアラブ人)のこと、喧嘩は先に手を出したら負けなので手は出さないが、口角泡を飛ばし、手がジェスチュアで激しく上下し、乗客や運転手の仲間も参戦しての激論になる。折よく白バイがいたのでそこでなんとか収まった。しかしバスは予定より2時間遅れて、真夜中にイスタンブルに着いた。

 上の話はまだ笑い話で済むが、次はシワス県の田舎道でのこと。
 久々の休日というので車で一時間半のところにある街(シワス)に、隊員全員でジープで出かけた。僕は後ろの荷台に座っていた。一台のドルムシュ(乗り合いバスのワゴン車)が凄まじいスピードで僕らのジープ(運転していたうちのドイツ人の先生もスピード狂なので、少なくとも100kmは出ていた)を追い越していく。道は小麦畑を貫通する対面通行の舗装道路(路面はあまりよくないが一応鋪装してある)。しかしこのくらいのスピードはトルコでは珍しいことではない。
 次の瞬間、衝撃音と共に追い越したばかりのワゴン車が大きく回転した。僕らの車は危うく巻き込まれそうだったが車間距離があったので大丈夫だった。後部座席に座っている僕には何がなんだか分からない。車が停まると、先生や一緒に居たドイツ人の学生たちは真っ先にドルムシュに向って走っていく。僕は事故の犠牲者を見たくないので一瞬躊躇したが、周りがそうするので仕方なく付いて走っていく。ドイツ人には兵役経験者も多いので(兵役忌避しても病院勤務に回されることが多い)、こういうとき動きが妙に機敏である。周りを見るとトラクターが停まっており、側道から出てきたトラクターにこのワゴン車が猛スピードで激突したものと見えた。トラクターの運転手は座席から放り出されて路上に転がっていたようだ。
 ワゴン車のドアが開いて血まみれの子供が飛び出して来て、「ババ(お父さん)!ババ!」と泣き叫んで車の窓を叩いている。僕は開いたドアから別の子供を引っぱりだして抱き上げ、道ばたに寝かせた。子供は外傷は見当たらず意識があり痛そうな表情だが、泣き声を出さない。泣けないくらい痛いのだろうか。さらにドアを覗き込むと、運転席と助手席の間になぜかお婆さんが逆さまになって挟まっている。衝突の衝撃で後部座席から一番前まで飛ばされたのだろう。後部座席の人がシートベルトなどするわけもない。
 恐る恐る運転席のほうにまわって見ると、運転手は目を見開いたまま呼吸している様子がない。助手席の男は頭から大量の血を流している。一緒に居たドイツ人のM(兵役経験者)が運転手を引っぱりだし、心臓マッサージや人工呼吸を試みている。周りには近くの村から衝突音を聞いて集まってきたトルコ人や走りかかったトルコ人たちが口々に騒いで怒号している。口ばかり動いてあまり手が動いていないように見える。ワゴン車には9人が乗っていた。
 こんな田舎だから救急車や警察が来る訳もない。軽傷者は村の診療所に運ばれたが、鼻や口から血を大量に流している人は僕らの乗っていたジープで街の救急病院に運ぶことになった。そうすると僕らの座る席が無くなったので、僕と学生数人が事故現場でジープの帰りを待つことになった。トルコが初めてのドイツ人学生は「こういう時ドイツでは、救急ヘリコプターが来るんだが、トルコにはそういうのはないのか?」と僕に聞く。「ない」と答える。日本にだってあまりないだろう。
 事故から10分?くらいで村のジャンダルマ(憲兵隊)のジープがが到着して、将校らしい軍人が近寄り、僕らを事故に巻き込まれたと勘違いして「ゲチミシュ・オルスン(ひどい目に遭ったね)」と声をかける。「事故に遭ったのは僕らじゃない」と言って、事故状況を説明した。田舎での警察権は警察ではなく内務省配下の軍隊である憲兵隊にある。
 僕らの乗っていたジープで運ばれた人は一命を取り留めたようだが、この事故で死者が一人か二人(両方の車の運転手か)出たと後で聞かされた。スピード狂のうちの先生はさすがにその後しばらくはスピードを抑え気味だった。

 僕は小さい時一度車にはねられそうになったことはあるが(鼻血で済んだが、あとで父親に凄まじく叱られてそっちのほうが怖かった)、こうも凄まじい事故を目の当たりにしたのは初めての経験だった。その後は幸いにも車のトラブル(ギア故障やパンク)に悩まされても事故に遭ったことはない。
 ツアーでトルコを旅行する時はバスに乗ることになるし、確かバスにはシートベルトも付いていないように思うが(普通車はシートベルト着用義務があります、念のため)、普通は自分で運転することはないだろうから旅行者は気のつけようがない。自分で運転する方はくれぐれも注意して欲しい。BRICSに次ぐ経済成長センターとして注目されているトルコでは、交通環境の改善が急務である。まあ来年1月のEU加盟が正式決定したブルガリアの方が、道路整備状況はトルコよりもはるかに悪いのだが。





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最終更新日  2006年10月19日 01時42分05秒
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