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カテゴリ:香港映画
超弩級の暴力映画。
陳冠希演じるカンボジアからの密入国者。貨物船の船倉に入り、満足にご飯も食べられない。港に着くとタクシーが待っていて、場所が指定され金が支払われる。レストランで猛烈に点心を平らげ、写真の女性を殺害する。 通報を受けやってきた警察の一人、李燦森演じるワイ。父親も警察だが、麻薬取引に関わった容疑をかけられたまま、植物状態にある。李燦森が不審げに道に立っている陳冠希を見つけたとき、凄絶な闘いが幕をあける。。。 銃で打ち合うこともあるが、基本は刃物と殴り合い。まずは食堂のシーン。机の下に隠れた陳冠希は、情け容赦なく食堂の客を二人射殺し、身代わりで人質になった刑事の首に刃物を突き刺す。なんのためらいもない。 そしてタクシーを奪いゴミの山へ。当然運転手は殺す。夢の島のような、一面ゴミの世界。陳冠希演じる主人公の原風景。ここである女性と出会う。北の方から来た不法滞在の父娘。父に犯され、身の回りの世話を命じられている。その父を倒し、電話を借りる陳冠希。娘とは言葉の通じない者同士だが、なんとか意思を通じようと試みる。生きるために親を殺せと伝える陳冠希。鋏を父の手に突き立てる娘。ワイが追いかけてくると、壜などを袋につめて簡易型サップをつくり襲う。ワイが拳銃で応戦し五分五分になったところで娘が後ろから椅子でワイを殴りつける。かすかな繋がりが出来てくる主人公と娘。ワイを応援に行った刑事の車を奪い、港を目指す。当然刑事はボコボコに。 しかし彼女が足を怪我をしたため、病院(といっても歯医者!)に担ぎ込む主人公。薬を持ってくるといった看護婦が警報を鳴らして逃げると、表を確認しに出る。チョイ刑事が見つけ、市場跡での追いかけっこ。チョイを応援に行くワイたちだが、チョイが人質に。そして無残に殺される。部下を何人も殺され怒り心頭のサム警部は、怪我した娘を引っ張って、殴る蹴るの大暴行。それで主人公をおびき出す作戦。しかしあっさり返り討ちに遭い、サム警部は死亡、ワイも重傷を負う。 無事に追跡を逃れ出港した主人公と娘は、指名手配されていたために育った闘犬場のような場所からも追い出される。そこは孤児を集め、闘犬ではなく人同士で殺し合いをさせる地下の闘技場。ここで育った主人公だからこそ何のためらいもなく人を殺していたのだが、畑で働き娘が妊娠すると、人らしい感情が出てくる。 しかし帝王切開が必要となり、その資金を稼ぐために闘技場に行くと、待っていたのはワイ。最期の死闘が始まるのだった。 しっかし、いい映画というか、凄い映画だけど、絶対他人には薦めたくない。見たほうがいいよ、とは絶対言えない。リアルな暴力が次々と展開する。決して慣れることはない、暴力という凶器。銃で、刃物で、肉体で、力が入っている訳でもなく、ただそこにある暴力。そこにあるのはただ生き残る意志だけで、他には何にもない。 漢字を読むことも、広東語を聞くことも出来ない主人公。そんな主人公と心を通わす、本土から不法滞在している娘。娘はマンダリンを話すが、広東語は分からない。言葉はまったく通じないが、お互いの行動で徐々に近づいていく二人。主人公にとっては初めての感覚。これまでは、周りのすべてが自分が生き残るために邪魔だったから。 ワイも凄惨な背景を隠し持っている。警察の父親に憧れて、同じ職業についたワイ。しかし彼は父の不正を発見し、自分の手で父を撃ってしまう。そんな父を信じ続けるサム警部。心の中の葛藤。父は監察官にすべてを話し、手首を切って自殺する。凶弾に倒れたワイが意識を回復し、父と話をしたいと言った前日に。 サム警部をはじめ仲間を全員失い、父をも失ったワイは復讐の鬼となり、みずからカンボジアの闘技場の門を叩く。いつか必ずくるであろう奴を殺すために。 それはそれは複雑な感情の大波。憧れだった父への失望と怒り、自ら父を撃つという心を引き裂く行動。父が悪いと知りながら、父は善良で優秀な刑事だと信じるサム警部と行動を共にしなければならないワイ。 最後の遺跡での決闘は、これまた救いのない闘い。邪魔にならないように、自ら刺される女。重傷を負いながらもワイを倒し、女の腹を空けて赤子を取り出す主人公。しかしもう立っている力はない。取り残されたのはたった一人の赤ん坊、でもその存在は誰も知らずに灼熱の太陽のもと、どうなったのか。 ほとんど表情と演技、アクションだけで役を演じきった陳冠希がお見事。そして感情剥き出しの鬼気迫る役柄を演じた李燦森。これまた陳冠希に負けず劣らずのど迫力。 香港映画の新しい潮流を予感させる映画。(でもお薦めはしないっ) 公式サイトはこちら 8/16 新宿武蔵野館 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.03.23 15:52:39
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