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カテゴリ:心理学 メンタル 悩み、読書
読レポ第1169号 カール・ロジャーズ ~カウセリングの原点~ 著:諸富祥彦 発行:㈱KADOKWA 第2章 「カウンセリングにおける変化の過程」の発見
※3点、付け加えておきたい。 ① 1953年に書かれたロジャーズのこの論文は、ロジャーズのあらゆる文献の中でも、セラピィの本質をズバッとついた最高の論文の一つである。 ロジャーズ51歳。臨床家としても、研究者としても、この頃がおそらく全盛期である。幸いにして、私たちは、同時期のロジャーズのカウンセリングの実際を映像で見ることができる。1953年から1955年頃に撮影された『ミス・マンとの面接』(畠瀬稔 関西人間関係研究センター)である。この映像資料で私たちは全盛期の、的確で精緻なロジャーズのカウンセリングの実際をみることができる。大学院生の訓練などにも最適であり、筆者自身も数十回はみている。 ② ③ この箇所に、ロジャーズのアプローチ、そして、パーソンセンタード、クライアントセンタード、と呼ばれるセラピィの核心となる原理が端的に示されているように思われる。 中田(2014)諸富(1992a)は、パーソンセンタード・セラピィ(PCT)の内部で、古典派、フォーカシング派、EFT派、さまざまな立場による「内部対立」が生じている問題を取り上げている。中田(2014)は、「傾聴とフォーカシング、EFTその他それそれを臨床実践上で結ぶ論理」「傾聴だけをおこなう立場とFocusingやEFTなどのPCT傘下の各立場や方法(中略)に通底する論理」を「PCAの定義」として他の学派に提示する必要性を説いている。 筆者は、この箇所こそ、その「論理」ないし「原理」を示していると考える。すなわち、カウンセリングのクライアントやワークショップの参加者一人一人が、「潜在的な自己体験する」「体験のアウェアネス」「体験を体験する(the experiencing of experience)」とここでロジャーズが言っている、体験を十分に体験すること、「クライアント中心のセラピストとの関係の安全性においては、自己に対するいかなる現実的な脅威も暗黙の脅威も存在しない。そうして関係の中で自分自身の体験のいろいろな側面を、実際に自分に感じられるままに、五感の器官や内臓感覚的な装置を通して感じられるままに」体験する、という機会を提供しうることが、このアプローチの核心ではないか、と考えている。使う技法云々の些末な問題ではない。 クライアントやワークショップの参加者は、暗黙のうちにであれすでに潜在的に体験し始めていたであろうその体験をより十分に体験し、体験し尽くし、それを体験として展開していく。するとそこから、意味や気づきが生成されていく、パーソンセンタードのセラピストやファシリテーターの役割は、この「内臓感覚的な暗黙の体験をより十分に体験し、そこからアウェアネスや意味が生成されていくプロセス」を十分に展開していくように自覚的にサポートしていくことにある、と筆者は考えるのである。「クライアントがみずからの、まだ潜在的な内臓感覚的な体験をより自覚的意識的に十分に体験し尽くし、展開し、そこからアウェアネスや意味が生成されていくプロセスを支援すること」こそが「パーソンセンタードのアプローチに共通の実践的基盤」であり、「原理」である、と筆者は考えている。 精神分析の壮大な思想体系、認知行動療法のサイエンス性に対抗しうるこの学派の本質は、「なまの、内臓感覚的な、生命体的への立ち返り」=「野生」である。 と著者は述べています。 ここの項でも、「クライアント中心のセラピスト(カウセラー)との関係の安全性においては、自己に対するいかなる現実的な脅威も暗黙の脅威も存在しない。そうして関係の中で自分自身の体験のいろいろな側面を、実際に自分に感じられるままに、五感の器官や内臓感覚的な装置を通して感じられるままに」体験して「クライアントがみずからの、まだ潜在的な内臓感覚的な体験をより自覚的意識的に十分に体験し尽くし、展開し、そこからアウェアネスや意味が生成されていくプロセスを支援すること」こそががセラピスト(カウセラー)の役目であり、さらに、ここでワークショップでのファシリテーターもともと、ロジャーズ言っていた。やはり、ファシリテーターも同じであることが、確認できました。なによりも、クライアントや参加者の安全性を保ちクライアントや参加者の自身の自らの思いを言葉化する援助が大事であることに、再確認できました。 クライアントや参加者のなまの、内臓感覚的な、生命体的への立ち返る援助がセラピスト(カウセラー)やファシリテーターの役割であることを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.12.29 22:14:12
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