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![]() 風とケーナさまの壮大なる歴史ファンタジー 『コンドルの系譜 ~インカの魂の物語~』 侵略者の圧制を打ち破るべく立ち上がったインカ帝国皇帝末裔トゥパク・アマル。 その戦いも、山岳地帯から、海を舞台に、ついに最終章へ! 若き将アンドレスと、不思議な力を持つ少女コイユールとの恋の結末も気になります。 第九話 碧海の彼方 連載中! ![]() 真魚んさまの深遠なる涅槃ファンタジー 『真夜中の騎士』 第6幕 聖戦/LICALD 第1章 CECIL ときは200年後の未来。 ザーイン星の巨大な造船会社『Falcon』。 ひょんなきっかけからその社長秘書として働くことになったリラ。 ハンサムで独身、謎の多い社長の正体は?! [全1096件]
ララーダに愛をこめて <28> ノックの音に、細くドアを開けると、外の暗がりに、見知らぬパピトがうっそりと立っていた。 ぞっとするほど顔色の悪い、死神のように痩せたその男は、部屋から漏れる光にまぶしそうに目を細めながらクリスタを見上げ、くぐもった陰気な声で名乗った。 「こんばんは。 キーンです。 ガモルさんから、ここに来るようにと言われました」 クリスタは急いでドアを開け、その男を中に入れるとまた急いでドアを閉めた。 「入って。 すぐに話を聞かせてもらうわ」 通されたリビングルームの中を、男は探るような目つきでじろじろ見回し、クリスタの指し示した椅子に腰を下ろすと、急にぞんざいな口調になって言った。 「・・・あんた、1人だけ? もう1人、【雑種】 が一緒にいると聞いたけど」 不快な男だ。 クリスタはつんと顔をそむけ、男から離れた椅子に腰を下ろしながら言った。 「兄さんはすぐに来るわ。 すぐそこに煙草を買いに行っただけだから。 ともかく話を聞かせて。 あんたが、ガモルの言ってた魚屋の息子ね? 7年前、トゥレディオに店も土地もただ同然に騙し取られて、父親が自殺したのね?」 男の顔が、さらに陰鬱に翳った。 「・・・そうだ。 トゥレディオってやつは、ありゃ鬼だ。 俺はまだ10歳だったが、あの日のことは良く覚えてる。 晩めしの最中だった。 突然、トゥレディオの使いだというバルドーラが数匹で押し入ってきて、俺たちの家の中をめちゃくちゃに荒らし始めたんだ。 俺たちはびっくりして、すぐに外に逃げ出した。 そして、近くの廃材置き場に隠れて、やつらが俺たちの家を壊す一部始終を、震えながら見てたんだ。 次の日の朝、おやじの姿が見えないのに気づいて探しに行くと、おやじは、傾いた家の梁にぶら下がって死んでた。 首をつったんだよ。 無理もないよな。 苦労してやっと建てた家と店だ。 借金もまだ残ってる。 せっかく軌道に乗り始めたところだった店を取られて、どうやって借金が払えるっていうんだ。 トゥレディオは、店と土地の代金はもう支払済みだと言い張って、俺たちにはびた一文、払おうとしねえし、俺たちは泣く泣く街を逃げ出すしかなかったよ。 その後、俺たち兄弟はお袋の親戚や知り合いに引き取られてばらばらに育った。 あれっきり、会ってもいねえが、トゥレディオへの恨みは、俺と同じように深いと思うぜ」 クリスタは、満足してうなずいた。 「いいわね。 ガモルの言ったとおりだわ。 それじゃ、キーン、あたしたちに手を貸してくれるのね? その話をオーバーに街中に言いふらして、トゥレディオの評判をがた落ちにするのよ。 あんな事件の後だから、きっと効果はてきめんだわ」 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <27> 「・・・そんなの、理由にならないわ」 涙で声をつまらせて、ルドゥアは我知らずアルデバランに駆け寄り、その背中に取りすがった。 「だめよ! アルデバラン、探している人が見つかってあなたが幸せになるのでなければだめ! それまでは、ここを出て行くなんて言わないで。 あなたはいつもあたしを助けてくれたわ。 迷惑なんか少しもかかってないじゃないの。 あたしは、あなたにここにいて欲しいのよ。 できればいつまででも」 ぎゅっと抱きしめたルドゥアの腕に、少しの間があって、アルデバランが小さく動いた感触が伝わってきた。 うなずいてくれた! たしかに、それが感じられた。 ルドゥアに向き直ったアルデバランが荷物を床に置き、ためらいながら、その手をそっと伸ばして、優しくルドゥアを抱きしめる。 臆病な野生動物のように、おそるおそる、慎ましやかに ――― そして、ささやくような声で、しかし明確な答えが返ってきた。 「・・・わかった。 もう少し、ここにいさせてもらう」 大きな安堵が、ルドゥアの胸に広がった。 「アルデバラン、よかった・・・!」 あたたかいアルデバランの胸に顔を埋めると、また、新たな涙が溢れ出してきた。 今度は嬉し涙。 涙でかすんだ窓の外、青蜩の丘の黒々とした木立ちの向こうに、宝石をちりばめたような夜景が広がっていた。 色鮮やかなネオンサインに彩られた、夜の歓楽街。 美しくライトアップされた港の大桟橋。 ひときわまばゆい埠頭の光。 鏡面のように穏やかな、黒い海に浮かぶ、大型客船の華やかなイルミネーション。 湾の対岸には、夜もなお煙を吐く工場群の、コンビナートの光がずらりと並んで、燃えるように赤々と輝いているのも見える。 この街で、いつまでもアルデバランと暮らせたら・・・ しかし、ルドゥアの髪を優しく撫でる、アルデバランの視線は、その美しい夜景ではなく、窓のすぐ下、黒い木立ちを縫って走る坂道のほうに、猛禽のように鋭く注がれていた。 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <26> ルドゥアの視線から逃れるように、ふっ、と目をそらしたアルデバランの横顔は、月明かりに白く浮かび上がって、冷たく、そして悲しげだ。 そして、その唇から漏れたのは、ルドゥアが今一番聞きたくない言葉だった。 「・・・ルドゥア、おまえにはすっかり世話になってしまった。 俺はそろそろここを出て行かなければ」 目の前が真っ暗になった気がした。 いつかはこんなふうに言われると思っていた。 その日が来たら、笑ってさようならを言おうと思っていた。 ――― でも。 「・・・いやよ! こんなに突然!」 目的を果たして幸せそうに笑っている彼ならともかく。 「探している人が見つかったの? それとも、その人の居所がわかりそうな手がかりが得られたの?」 こんな悲しそうな顔のアルデバランを、このまま送り出すなんて! 「いやよ! お願い、荷物を置いて! ここを出て行くなら、なぜ、今、出て行かなきゃならないのか、そのわけを聞かせて!」 再びルドゥアに視線を向けたアルデバランの表情がもの思わしげに翳って、何か言おうと小さく息を吸い込んだ。 が、すぐに、思いなおしたように、アルデバランはルドゥアから顔を背け、言い直した。 「・・・おまえの落ち着き先が決まったら、俺はすぐにも街を出て行くつもりだった」 それはたぶん、今言おうとした答えとはちがう言葉と思われた。 何か迷うような、沈みこんだ表情で、アルデバランがためらいがちに言葉を継ぐ。 「だが、おまえの傍は、俺には居心地が良すぎた。 おまえがくれた、平穏で幸福な日々のぬくもりに、俺は救われた思いがした。 今まで死んでいた自分が、息を吹き返したような心地がした。 そしてほんのひととき、おまえの横で羽根を休めたくなってしまった」 ちょっと言葉を切って、ルドゥアに背を向けたアルデバランが窓辺に近づく。 「あと一日だけ、もう一日だけ、と、出発を延ばして、俺はつい、長居をしすぎたようだ。 これ以上俺がここにいると、おまえに迷惑がかかる」 窓辺に立った、アルデバランの表情は見えない。 開けっ放しの窓から吹き込む夜風が、その、闇の色の長い髪を、ふわっとなびかせた。 それは、胸が痛くなるほど、あまりにも寂しげな後姿だった。 アルデバランが愛しくて、涙がどっとあふれてきた。 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <25> 夕日の沈むのは早い。 薄い夕焼けの色も消えて、急激に暗くなり始めた坂道を登りながら、丘の上を見上げると、アルデバランの部屋の窓は、今日も真っ暗だった。 アルデバランはまだ帰っていないらしい。 真っ黒な不安と悲しみが、再び胸に押し寄せてきた。 今夜もアルデバランは帰って来ないのか。 ひょっとしたら、もうルドゥアのもとに帰ってくるつもりはないのでは・・・? あれこれ考えれば、果てしなく沈みこんでいきそうなく気持ちを、むりにも奮い立たせて、ルドゥアは家路を急いだ。 階段を駆け上がり、玄関を開けようとして、はっとした。 鍵が開いてる! アルデバランが、帰ってる! たちまち、嬉しさがこみ上げてきて、玄関の戸を、勢いよく開けた。 「アルデバラン!!」 返事はない。 家の中は真っ暗だ。 が、足もとにはちゃんと、見慣れたアルデバランの靴があった。 安堵と喜びに胸が高鳴った。 「アルデバラン! 帰ってるのね?! ゆうべはどうしたの? 心配したのよ」 灯りを点けるのも忘れて、アルデバランの部屋の戸に手をかけた。 「もう寝てるの? 開けるわよ」 勢いよく戸を開けた、部屋の中は真っ暗だったが、窓から差し込む月明かりの中に立つ、アルデバランのシルエットがくっきりと浮かび上がっていた。 こちらを振り向いた、その表情は見えない。 が、その手には、たった一つしかない、アルデバランの荷物があった。 それを見ると、ざあっ、と顔から血の気がひいていくような気がした。 ルドゥアは思わず、戸口に立ちはだかって叫んだ。 「・・・アルデバラン! 出て行ってしまうの? 違うわよね?!」 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <24> 『青蜩の丘宮殿』 と呼ばれるこの超高級マンション最上階の、この部屋の窓からは、高いフェンスを隔ててそのすぐ外側に広い馬車道を見渡すことができる。 窓から身を乗り出して下を覗き込むと、月明かりに白く浮かび上がったその馬車道を、バルドーラと思われる大きな人影がひとつ、急いで走り去っていくところだった。 へんね、とガルネは首をかしげた。 このマンションは、同じ 『青蜩の丘』 の上の住宅地からは孤立してぽつりと一軒だけ建っている。 マンションの裏手に位置する古い教会の敷地を挟んで、その向こうがにぎやかな住宅地。 教会のこちら側にあるのは、このマンションだけだ。 教会の周囲は深い森に覆われていて道らしい道もない。 教会の向こうの住宅地が開発される以前には、丘の下の街の人たちが、教会にいくのに使ったという馬車道も、今はこのマンションの専用道路のようになっていて、このマンションに来る人以外には使わない。 通行人の姿なんかめったに見かけないその馬車道で、ガルネには、今の人影が、マンションフェンスのすぐ外に立って、じっとこちらを見上げていたように思えたのだ。 そして、ガルネがカーテンを閉めようと、窓から姿を見せた、そのとたん、あわてて逃げ去って行ったように。 急に気味が悪くなって、ガルネは大急ぎで窓を閉めて錠を下ろし、厚い遮光カーテンを引くと、その隙間から、もう一度、下の馬車道をうかがい見た。 すでに人影はなく、馬車道の上に覆いかぶさる黒い木立ちが、夜風にさわさわと揺れているだけだった。 ![]() 小さく苦笑して、ガルネは、部屋の光が外に漏れないようにカーテンの襞を注意深く直した。 いやだわ、私ったら、下の道の人影にまでびくびくするなんて。 あの馬車道を、街のほうに向かって駆け下りて行ったんだから、あれはこのマンションの住人か、それとも来客か、そのどちらかに決まってるじゃないの。 そうでないとしたって、このマンションの守りは鉄壁よ。 どんな身軽な泥棒だろうと、頭のおかしな放火魔だろうと、高圧電流の流れるあのフェンスを乗り越えるなんて、不可能だわ。 それを思い出してようやく安心した時、バスルームの戸がばたんと勢いよく開いて、その向こうから、はでなシャワーの音とともに、マルスのはしゃいだ声が響いてきた。 「なにしてるの? 早くおいでよ、僕のお姫さま!」 その声を耳にするや、ガルネは馬車道の人影のことなんかきれいに忘れて、クロゼットの中のバスローブを2枚、タオルと一緒に引っつかんで、バスルームに突進した。 「はーい! 今すぐ参りますわ、私のお殿さま!」 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <23> エネルギッシュでアグレッシブ、生粋のバルドーラ族でありながらやりての商売人 ――― そんな噂の、押しの強い奥方に辟易したマルスが求めているのは、従順で、か弱くて、マルスの庇護なしには生きていけないような女。 羽根をむしられた小鳥のような女だ。 ガルネにはちゃんとわかっている。 マルスがこんなに情熱的で危険な愛をガルネに捧げてくれるのは、ガルネがいまだに、マルスのものになりそうでならない、微妙な位置に立ち続けているからだ。 もしガルネが、自分の生活のすべてをマルスにゆだね、名実ともにマルスの女になってしまったら、その瞬間からマルスは、ガルネを重荷に感じるようになるだろう。 いらなくなった紙くずみたいに、いつ丸めてぽいと投げ捨てられるかわからない、男の気まぐれに一生をかけるような、そんな馬鹿な真似は、ガルネはしない。 自分の人生は、自分の手で動かすのだ。 時間はかかっても、実力容姿ともに自分を磨きながら、自分の力で自分の店をたてるつもり。 『マルスの愛人』という顔は、ガルネの全体の、ほんの一面にすぎないのだ。 たちまち目尻を下げたマルスの手を取って、ガルネは明るい笑い声を上げた。 とにかく、マルスはもう一晩、ガルネのそばで過ごしてくれることになった。 この嬉しい貴重な時間を、目いっぱい楽しまなくては! 「マルス、手がこんなに冷たくなっているわ。 お風呂に入って温めましょ!」 「よし、じゃ、いっしょに入ろう、ガルネ!」 「ふふっ、そうね。 それじゃタオルを取って来るから、先に入っていて」 タオルを取りにリビングに戻って、ガルネはちょっと眉をひそめた。 窓もカーテンも開いたままだ。 ――― 暗くなってからカーテンを開けっ放しにしておくのは、昔から嫌いだ。 なんだか無防備な感じがするし、窓の外に不気味な闇が広がっているのを見ると、わけもなくぞっとする。 風に揺れるカーテンの向こうはすでに夜の闇に包まれて、その彼方には朝霧の街の夜景が広がっている。 『青蜩の丘 ――― 漆黒の海と、満天の星空を背景に、朝霧の街のネオンが宝石をちりばめたように輝く、リリファラ随一の夜景』 観光用パンフレットのうたい文句どおりの眺望だ。 足早に窓に近づき、カーテンを閉めようと伸ばしかけたガルネの手が、ふと止まった。 窓の下で、何か動いたような気がしたのだ。 人気ブログランキングへ
ララーダに愛をこめて <22> ほっと胸をなでおろし、ショッピングバッグを開けようとしたガルネの腕を、マルスが捕まえて、また、激しく抱き寄せた。 「ねえ、ガルネ、【トゥレディオ】 は当分開けられないんだろう? だったらいっそ、これを機に、あんな店は辞めたらいいじゃないか。 あんな仕事、きみにはふさわしくないよ。 前から言ってるだろ、仕事なんかしなくたって、僕はきみに十分贅沢な暮らしをさせてあげられる。 もし、遊んでいるのは退屈でいやだというなら、僕の仕事を手伝ってくれ。 きみのような才色兼備の女性が秘書をつとめてくれたら、僕もうんと助かる。 堂々と2人きりで、いろいろなところへ旅行もできるよ」 マルスは、その穏やかそうな外見に似合わず、意外に情熱的で嫉妬深い。 たとえ仕事といえど、ガルネが他の男に笑顔を向けるのが面白くなくてたまらないのだ。 【トゥレディオの酒場】 で、大勢の女の子たちを傍らにはべらせていても、マルスの視線はガルネにばかり注がれている。 ガルネが別の客の相手をしているときの、マルスの目は、嫉妬で今にも火を吹きそうだ。 そしてガルネは、そういうマルスが好きだ。 こんなにも自分はマルスに求められている、その思いが、いつもガルネを有頂天にさせてくれるから、だからガルネはマルスを放したくないのだ。 贅沢三昧させてくれることも、マルスの魅力のひとつには違いないが、決してお金にばかり目がくらんだわけではない。 ガルネはくすくす笑って再びマルスの腕から逃げ出した。 「ありがたいお話だけど、それはできないわ。 私は、あなたの家庭を壊すようなことはしたくないし、それに、今の仕事が好きなのよ。 私、エメラ姉さんをとても尊敬してるの。 あの人みたいに、自分の力で一軒の店を切り回せるような実力のある女になるのが、私の夢なのよ」 マルスがつまらなそうにため息をついた。 「一軒の店を一人で切り回せるような実力? そんなものなくたって、きみは今のままで十分魅力的なのに。 君が望むなら店の一軒くらい建ててやるのは簡単だけど、そうしたらきみは、僕なんか要らなくなっちゃうんだろ?」 「まあ! マルス、ひどいわ! 私、あなたにお店を建ててもらうのが目的でおつきあいしてるんじゃないわよ。 たとえあなたが文無しだとしたって、私は一生、身も心もあなただけのものだわ」 この言葉は半分だけ本心。 ガルネは、マルスは好きだけれど、マルスの所有物になるつもりはない。 人気ブログランキングへ |一覧|おすすめアイテム
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