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2016.06.21
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人魚の眠る家・東野圭吾


☆人魚の眠る家・東野圭吾
・幻冬舎
・2015年11月20日 第1刷発行

♧あらすじ

小学校からの帰りにその家の前を通る時、「お屋敷」というのはこういう家のことをいうんだろうなと、宗吾はよく思った。門の扉には綺麗な模様が透し彫りにされている。
風が強いある日、被っていた帽子が風に飛ばされ塀を越えていってしまった。その日に限って、いつも固く閉じている門の扉が、どうぞとでもいうように少し開いていた。屋敷の壁際に落ちた帽子をひろい、直ぐそばにあった窓から中を覗くと、赤いセーターを着た女の子が車椅子に座って眠っていた。年頃は宗吾と同じくらい、白い頬にピンクの唇、長い睫・・・。その日以来、女の子のことが頭から離れなくなった。

別居中の、播磨和昌、薫子夫妻は、長女瑞穂の有名私立小学校受験がひと段落した段階で離婚届を出すことになっていた。
その電話は、お受験のための両親の面接の予行演習中にかかってきた。 瑞穂がプールで溺れたという。脳神経外科の医師は、病院に到着するまで心臓が停止、血液の供給が絶たれたため、脳がかなりの損傷を受けており機能している気配は確認できず、意識が戻らないかもしれない。現在の状況は、回復を願っての治療ではなく、延命措置だという。

更に医師は、臓器移植コーディネーターとしての話をさせて頂く、と前置きして、脳死が確定した場合、臓器提供の意思があるかと尋ねた。
日本の法律では、承諾した場合は脳死判定が行われ、確認されればその人は死んだと判定され、臓器移植が行われる。断った場合は、いずれ訪れる死期をただ待つ、ということになる。
これは、世界でも特殊な法律で、他の多くの国では脳死を人の死だと認めており、脳死が確認された段階で、たとえ心臓が動いていたとしても、すべての治療は打ち切られる。延命措置が施されるのは、臓器提供を表明した場合のみである。ところが我が国の場合はそこまで国民の理解が得られていないため、臓器提供を承諾しない場合は、心臓死をもって死とするとされている。お嬢さんの場合、どのような形で送り出すか、心臓死か脳死か、それを選ぶ権利があるという。

悩みに悩んだ末、二人は瑞穂が人のことを思いやる優しい子だったことを思い、一旦承諾の意思を固めた。だが弟の生人の「オネエチャン」という呼びかけに、和昌は自分の手の中で瑞穂の手がぴくりと動いたように感じ、それが薫子にも感じられたのだ・・・。
「瑞穂は生きている」という薫子の強い思いで、臓器移植は見送られた。

播磨和昌が経営するハリマテクスは、脳と機械とを信号によって繋ぐことで、人間の生活を大きく改善しようという研究を進めていた。同様の研究に取り組んでいる企業や大学の中では、ハリマテクスは一歩先を進んでいた。

事故から間もなく2ヶ月、病院側の驚きをよそに、瑞穂の心臓は動き続けている。
12月に入って間もなく、AIBS(横隔膜ペースメーカー)の埋め込み手術が行われ、事故以来、瑞穂の口に挿入されたままだった呼吸器のチューブが外された。
やがて、瑞穂の在宅介護が始まり、薫子と祖母の千鶴子が、二人がかりでケアに当たった。
在宅介護が始まって1ヶ月、瑞穂と一緒に暮らせる喜びは、ともすれば不安でくじけそうになる、薫子の心を強く支えてくれた。けれど、毛布の中の瑞穂の腕はマシュマロのように柔らかく、筋肉はどんどん落ちていった。

そんなある日、和昌がハリマテクスの星野という社員を連れてやって来た。彼の研究テーマは、脳の信号を筋肉に送ることで、その人自身の手足を動かせるようにするということだった。
星野による説明に続き、和昌はこの研究の2つのテーマを付け加えた。1つは被験者本人に足を動かす気はないのに、足が勝手に動いていること。もう1つは身体に一切傷を負わせていないことだという。磁気刺激装置は単なるコイルで、それを脊髄に沿って複数個のコイルを並べ、それぞれに信号を送るようにすれば、全身の様々な筋肉を動かすことも可能だというのだ。
やがて、薬剤を投与しなくても、徐々に瑞穂の筋力はつき、身体は成長を続け、体温調節ができるようになっていった。

薫子は、娘の寝顔を見つめながら呟いた。
ある日奇跡が起きて瑞穂が目を覚ました時、自分の力でしっかりと起き上がり、立ち、歩けるようになっていたら、きっと本人が一番嬉しいに違いない。その日が来るまで、ママは頑張るからね。
薫子自身は、誰になんと言われようと、瑞穂の身体の機能の変化に喜びを感じていた。けれど、それと同時に、日本では子供の臓器提供者がないため、アメリカでの心臓の移植手術を待ちながら亡くなった女の子のことも知っていた。

瑞穂の弟の生人は学校で、瑞穂のことを気持ちが悪いと言われ深く傷ついていた。
事故があったあの日以来、プールへ一緒に行った祖母の千鶴子、叔母の美晴、従姉妹の若葉。それぞれがそれぞれの深い悩みを抱え続けていた。

和昌は今の状態を続けることに悩みはじめていた。機械的に娘の手足を動かすことになんの意味があるのか、そして物事には潮時があるのではないかと・・・。

あの日、まだ小学校入学前だった瑞穂が、間もなく4年生になるという3月31日の夜、いつものように瑞穂の部屋で眠っていた薫子は、誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。
すぐそばに瑞穂が立っているのを感じた。
瑞穂が話しかけてくる声は聞こえなかったが、心に伝わってきた。

ママ、ありがとう。
今までありがとう。
しあわせだったよ。
とっても幸せだった。
ありがとう。本当にありがとう。

お別れの時だ、と薫子は悟った。「もう行くの?」という問いに、うん、と瑞穂は答えた。さようなら。ママ元気でね。さようなら、と薫子も呟いた。その直後、ふっと瑞穂の気配が消え、何もなくなった。
瑞穂の身体に近づくと、すべてのバイタルサインの値が悪化を示し始めており、その後も好転する様子はなかった。

薫子と和昌に迷いはなく、臓器移植の手続きが進められた。
3年数ヶ月生き続けた瑞穂の内臓は、脳死判定が確定した翌日、幾つかの臓器が摘出された。病院の医師たちの間で「奇跡の子供」と呼ばれていた瑞穂は旅立った。
瑞穂の身体から心臓も摘出され、どこかの子供に移植された。

医師の問いに、和昌は心臓が止まった時が瑞穂が死んだ時だと思うと答えた。
すると医師は言った。
「だったら、あなたにとってお嬢さんはまだ生きていることになる。この世界のどこかで彼女の心臓は動いているわけですから」

・エピローグ
3年数ヶ月前、生まれつき心臓に異常があり、心臓移植しか助かる道はないと診断された宗吾だが、とてつもない費用がかかるうえ、宗吾の体力では長旅は危険だった。死を覚悟する毎日だったある日、奇跡が起きた。ドナーが現れたのだ。
手術から3ヶ月後、退院した宗吾はどうしても行ってみたいところが有った。自宅の近くで車を降りた宗吾が向かったのは、あの「お屋敷」だった。美しい少女が車椅子で眠っていたあの家だ。なぜか、手術を受けて以来、何度もあの屋敷が夢に出てくるのだった。そして、宗吾を呼んでいるような気がした。
だがー。
行ってみると屋敷はなくなっていた。建物も塀も門も消え、空き地になっていた。





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Last updated  2016.06.21 21:17:26
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