ジェリーフィッシュ 『こぼれたミルクに泣かないで(Spilt Milk)』
90年代を代表するマスターピース ジェリーフィッシュ(Jellyfish)は、1980年代から共に活動していたサンフランシスコ出身の2人(アンディ・スターマーとロジャー・マニング)が1989年に結成したバンドである。翌1990年にデビュー盤をリリースし、1993年にはセカンド作を発表するも、1994年に解散してしまい、時間的にはごく短期間の活動に終わってしまった。 2枚しか残されなかった彼らのアルバムのうち、本盤『こぼれたミルクに泣かないで(Spilt Milk)』は、セカンド作にしてラスト作にあたる。彼らの代表作であるだけでなく、1990年代を代表する名盤としてもよく名が挙がる作品である。 その名盤評としては、ビートルズを引き合いに出して、本盤のマスターピースぶりが評価されることも多いが、個人的にはどうもそれに違和感がある。ある部分ではビートルズ、ある部分ではビーチ・ボーイズ(ブライアン・ウィルソン)、ある部分ではE.L.O.、ある部分ではクイーン…といったように、もっともっと複雑な遺産の上に本盤は存在しているように感じるからだ。特定アーティストの名を出さずに言ってみるとすれば、60年代のポップセンスと実験性、70年代~80年代のジャンルとして拡大していった種々のロック&ポップス、90年代を迎えた頃の一巡しきったロック性…。長々と述べだすときりがなくなりそうなほど、彼らの作品には先人の築いた様々な音楽性がとりこまれ、共鳴しあい、そこに独自の解釈が施されているんだと思う。 そのようなわけで、完成度の高い作品そのものを聴くのもよし、各楽曲の各パートを吟味しながらいろんなアーティストとの連関を考えつつ聴くのもよし。初めて聴いた時から、100回目、200回目に聴いた時まで(自分では200回も聴いていないと思うが、200回聴いた暁にもきっとそうだろうと思う)、楽しみ続けることができる奥の深い作品だと思う。 短期間でのこのグループの解散の理由は、アンディとロジャーの音楽性の違いと言われるけれど、2人とものやっていることの質が高かったからこそ、ハイレベルな作品になったわけだし、互いの意見も早々に違ってきてしまったということだろうか。本盤に関して、アンディはプロデュースのやり過ぎとかアレンジのやり過ぎを気にするコメントを後にしているようだが、弾き語り志向が強かった彼をして“誇れるアルバム”とのことだから、そこからもアルバムの出来のよさがうかがえる。[収録曲]1. Hush2. Joining a Fan Club3. Sebrina, Paste, and Plato4. New Mistake5. Glutton of Sympathy6. The Ghost at Number One7. Bye Bye Bye8. All Is Forgiven9. Russian Hill10. He's My Best Friend11. Too Much, Too Little, Too Late12. Brighter Day1990年リリース。 こぼれたミルクに泣かないで [ ジェリーフィッシュ ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓