テーマ:クラシックロック(754)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
ザ・バンドのデビューアルバムにして、一・二を争う最高峰アルバム ザ・バンドの最良のアルバム1枚選べ、と言われたならば、あなたは何を選ぶだろうか。私はきっとセカンド・アルバム『ザ・バンド』を選ぶと思う。けれども、ザ・バンドの中で最も好きな曲を選べ、とか、最も衝撃を受けた曲を選べ、と言われると、そのいずれもに引っかかってくるのが、この『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』である。したがって、1枚だけ他人にすすめるという意味では『ザ・バンド』に傾くのだけれど、無人島に持って行くためにザ・バンドを1枚選ぶのだったら、おそらくこの『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』にするだろう。 言うまでもなく、『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク(Music From Big Pink)』は1968年にリリースされた、ザ・バンドのデビュー・アルバムである。ボブ・ディランが描いたジャケットで飾られ、タイトルの"ビッグ・ピンク"とは、本作の基盤となるディランとのセッションが行なわれた、ウッドストックにあるピンク色の家で、裏ジャケにその写真が収められている(何の変哲もない家だけれど)。 さて、デビュー盤といっても、ザ・バンドの活動は10年ほど前にさかのぼる。ロニー・ホーキンス(ロカビリー歌手)のバックを務めたホークスがその前身で、やがてホークスはボブ・ディランの音創りに参加するようになる。その際のセッションの行なわれたのが、上記の"ビッグ・ピンク"なる家の地下室であり、1975年に正式リリース(B・ディラン&ザ・バンド『地下室(ザ・ベイスメント・テープス)』)される以前から、幻の名作として海賊盤という形で人気を博したという音源である。この時のビッグ・ピンクでの地下室の音を、彼らはこのファースト・アルバムで再現しようとした。アルバムの随所に充満する"息の詰まりそうな重さ"(もちろんいい意味での形容)は、ここに由来する。 本作がリリースされた1968年という時代を考えるに、ザ・バンドは時代の流れに逆らったグループだった。いや、より正確に言えば、逆らうことによって、時代が向かおうとしていたのとは違う流れを創出していったというべきだろうか。当時のロックシーンは大きな変革期を迎えていた。技術的進歩もさることながら、60年代後半から70年前後というのは、いま私たちが思い描くロック・ミュージックの原型が形作られた時期である。ビートルズ、ストーンズ、ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)、レッド・ツェッペリン…。ロックが「進化」していく真っただ中で、敢えて"古臭さ"を堂々と取り入れ、独自の世界を追求した。しかも、その「独自の世界」は、彼らだけの閉じられた世界ではなく、聴衆の目をアメリカン・ルーツ・ミュージックへと向けさせた。40年が経過した今、彼らの音楽は、60年代末から現在に至るまでのロック・シーンにしっかりと根を下ろしている。 ちなみに、筆者にとって、冒頭で触れた"最も好きな曲"とは、本盤所収の11.「アイ・シャル・ビー・リリースト」、そして、"最も衝撃を受けた曲"とは、1.「怒りの涙」である。さらに付け加えるならば、"もっとも安らぐ曲"は、5.「ザ・ウェイト」であり、それゆえ、個人的好みだけでザ・バンドの1枚を選ぶなら、この『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』に落ち着くという次第である。 [収録曲] 1. Tears Of Rage 2. To Kingdom Come 3. In A Station 4. Caledonia Mission 5. The Weight 6. We Can Talk 7. Long Black Veil 8. Chest Fever 9. Lonesome Suzie 10. This Wheel's On Fire 11. I Shall Be Released ~以下、2000年リマスター盤のボーナス・トラック~ 12. Yazoo Street Scandal -outtake- 13. Tears Of Rage -alternate take- 14. Katie's Been Gone -outtake- 15. If I Lose -outtake- 16. Long Distance Operator -outtake- 17. Lonesome Suzie -alternate take- 18. Orange Juice Blues -outtake demo- 19. Key To The Highway -outtake- 20. Ferdinand The Imposter -outtake demo- 1968年リリース。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010年01月04日 17時38分08秒
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