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音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2010年06月02日
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音楽家として完成の域に達したスティーヴィー


 前作『トーキング・ブック』(こちらも名盤!)を発表した翌年(1973年)にリリースされたのが、本盤『インナーヴィジョンズ(Innervisions)』である。『トーキング・~』の項でも触れたスティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)の絶頂期である“クラシック・ピリオド”の中でも、特に頂点と称賛されるのが本アルバムである。幼くしてデビューしたスティーヴィーは、やがて自作自演のアーティストという方向性に目覚め、自ら曲を作り、アレンジし、歌い、様々な楽器を操ってアルバム制作を進めるようになっていた。本作においてももちろん、ジャケ裏側には、堂々と“Written, Produced & Arranged by Stevie Wonder”(作曲・プロデュース・編曲:スティーヴィー・ワンダー)と記されている。

 アルバム・タイトルの『インナーヴィジョンズ』という表現の中の“ヴィジョン”というのは、“視野”とか“視覚”といった意味である。したがって、目に見えるものとしての“光景”や見る方法としての“ものの見方”なども意味する。つまり、本盤のタイトルは、“内なる眼”といった意味合いであり、生後間もなく視覚を失ったスティーヴィー自身の“内なる眼”を意味しているものと思われる。ジャケットの絵も、目が見えないと思しき人物(スティーヴィー本人)が窓から外を見上げて何かを見通している構図となっている。アルバム自体は、全米チャート4位(R&Bチャートでは1位)を記録し、リリース翌年の74年のグラミー賞では、年間最優秀アルバムと最優秀録音の二部門を獲得した。

 1曲目の「トゥ・ハイ」からして、本当に“ハイ”である。音楽全体が“跳ねて”いる。確かに、抑えるべきところは抑えている(例えば、2.や7.)のだけれど、基本、全体が“跳ねている”のだ。一般論として、ドラムやリズム・セクションの跳ね具合がノリやファンキーさを醸し出すという評価の仕方はあるけれども、この作品の場合は、音楽全体がそうだと言えるように思う。無論、ヴォーカルもそれに該当し、スティーヴィーの歌自体の跳ね具合こそが、全体の強い躍動感を生み出す要因になっている。加えて、そのヴォーカルには新たことや実験的なことをやっているという雰囲気がなく、自信が満ち溢れ堂々としている印象が強い。こうした“跳ね”という観点から、特に素晴らしい出来の曲は、1.「トゥ・ハイ」のほか、3.「汚れた街」、4.「ゴールデン・レディ」、5.「ハイアー・グラウンド」(この曲はシングルとして全米4位にランクインした)、9.「いつわり」といったところである。逆に、リズムもヴォーカルも抑え気味になっている曲では、メロディの美しさとヴォーカルの伸びというもう一つの特徴も見られる。

 さらに着目したいのは、かなりの楽器をスティーヴィー・ワンダー自身が演奏している点である。スティーヴィーと言えば、ムーグのシンセサイザーを駆使するイメージが強いという人も多いかもしれないが、実はドラムさえも見事にこなすマルチプレーヤーで、本作でもそうしたマルチぶりが発揮されている。とりわけ、収録曲の中で、3.「汚れた街」、5.「ハイアー・グラウンド」、6.「神の子供たち」は、完全にスティーヴィーの多重録音による独演である。同じ70年代前半には、トッド・ラングレン(例えば1972年の『サムシング/エニシング?(ハロー・イッツ・ミー)』)なども同様のマルチプレーヤーのスタイルを確立している。筆者の好みと感覚で言えば、トッド・ラングレンがどちらかと言えばマニアックな方を向いて一人で演奏・ヴォーカルの多重録音を試みたのに対し、スティーヴィー・ワンダーはより聴衆にオープンな方向性でそれを行なったように思える。

 上で述べた“跳ね具合”というのは、人によって好みが分かれるかもしれない。しかし、一度は聴いておいて損のない名盤であることは間違いない。黒人音楽という枠にとらわれず、ロック、ポップス、ジャズ等様々な音楽を取り込み、なおかつ消化しきっている演奏は、“ブラック・ミュージック”、“ソウル”、“ファンク”などのレッテルのついた音楽に違和感を感じるリスナー層にも、十分受け入れられる素地がある。この時期のスティーヴィーや、スティーヴィーの音楽そのものを避けて通っていた人にも、ぜひ一聴してほしい一枚である。



[収録曲]

1. Too High
2. Visions
3. Living For The City
4. Golden Lady
5. Higher Ground
6. Jesus Children Of America
7. All In Love Is Fair
8. Don't You Worry 'Bout A Thing
9. He's Misstra Know-It-All

1973年リリース。




 
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