テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
『カインド・オブ・ブルー』を聴くか、それとも『1958マイルス』を聴くか あんまり注目されないし、マイルスの代表盤として特にその名が挙げられるわけでもない1枚が、本作『1958マイルス』だ。その名のとおり、1958年の録音(ただし5.のみそれ以前の音源)である。1958年のマイルス・デイヴィスと言えば、『サムシン・エルス』(収録曲の「枯葉」についてはこちら)が思い浮かぶかもしれない。しかしこれはマイルスの名義ではなく、キャノンボール・アダレイの名義。マイルス名義でこの年のアルバムと言えば、『マイルス・アヘッド』もあるが、本盤はこれともメンバーは異なる。同じメンバーで吹き込まれたのはおよそ1年近く後の『カインド・オブ・ブルー』の方である。 その『カインド・オブ・ブルー』はモダン・ジャズ屈指の名作として知られ、素晴らしいアルバムであるのと同時に、完成され過ぎていて近づき難い感じもする。これに対し、本作『1958マイルス』は、同じメンツでありながら、ずっとリラックスした感じで演奏を繰り広げている。リラックス度が高い分、細部の完成度では『カインド・オブ・ブルー』には敵わない。けれども、正座をして聴くのではなく、ソファでくつろいで聴くといったシチュエーションには、圧倒的に本作に軍配が上がる。無論、リラックスと言っても“だらけて”いるわけではない。マイルスのトランペットはリリカルに響き、ビル・エヴァンスとのやり取りも見事である。コルトレーンもいい。 最初に聴くならどっちの盤を選ぶかはかなり難しい問題のように思う。ちなみに筆者は超有名盤である『カインド・オブ・ブルー』を先に聴いてしまい、だいぶ経ってから本盤を初めて聴いたのだが、パーソネルを確認しながら真剣に聴くまでまったく同じメンバーとは思いもしなかった。そのくらいアルバムを支配するムードというかトーンが違う。高尚で渋くきまっている『カインド・オブ・ブルー』に対し、温かみがありリラックスした雰囲気の『1958マイルス』。結論としては、どちらからというよりも、“別々に”聴くべき2枚という気がする。順序はともかく、異なるシチュエーションで作られ、私たち聴き手の側も異なるシチュエーションで聴くのに適している、と言えようか。 ちなみに筆者のいちばんのお気に入りは1.「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」。実は単にこの曲が好きなだけというのも理由の半分ぐらいにはなるのだが、残り半分はやはりマイルスのリリカルに舞うトランペット演奏が聴きものになっているという理由である。同じように2.や3.のイントロ部分などもぞくぞくさせられる美しい“マイルスの舞い”である。ちなみに、5.だけは完全なる蛇足であると思う。手持ちのCDの解説には1958年3月4日の録音となっているが、その真相は1955年の録音に基づいてその一部を吹き替えたものらしい。したがってこの曲を演じているメンバーも55年当時の顔ぶれ。他の4曲の雰囲気の中で、5.だけが浮いてしまっているように思う。残る4曲のうち、上で触れた1.、2.、3.が特に統一性のある演奏なので、筆者自身はこれら3曲をまとめて聴く場合が多い。 [収録曲] 1. On Green Dolphin Street 2. Fran-Dance 3. Stella by Starlight 4. Love for Sale 5. Little Melonae [パーソネル] 1.~4.: Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Julian “Cannonball” Adderley (as, 3.を除く), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds) 5.: Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds) [録音] 1.~4.:1958年5月26日 5.:1958年3月4日(1955年10月26日) 【CD】1958マイルス+2/マイルス・デイヴィス [SRCS-9744] マイルス・デイビス【fsp2124-2m】 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年08月01日 21時05分10秒
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