テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:ジャズ
表題に羊頭狗肉の部分こそあれど、名演であること間違いなし ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)は1931年ジャマイカ出身でアメリカで活躍したジャズ・ピアニスト。マイルス・デイヴィスなど多くの有名ジャズメンと共演する一方、ソロ作も録音していったが、39歳で早世した。“もっともスイングしているジャズ・ピアニスト”と評さることもあり、派手さはないが実に安定した質の高い演奏を残している。 他方、ウェス・モンゴメリー(Wes Montgomery)はインディアナ出身のジャズ・ギタリスト。親指ピッキングでのソロとオクターブ奏法が特徴で、現代ジャズ・ギターの基盤を作った。『フルハウス』(1962年)や『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(1967年)といった代表盤で知られるが、1968年に心臓発作で亡くなっている。 本盤『ハーフノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー(Smokin’ At The Half Note)』はこれら二人の共演盤で、ウィントン・ケリーのトリオ(ベースはポール・チェンバース、ドラムはジミー・コブ)が、ウェス・モンゴメリーを迎えて4人編成で吹き込んだもの。アルバムの表題には“ハーフノート”という、場所を示す語句(したがってこのジャズクラブでのライブ盤を想像させる)があるのだけれども、これについてはやや羊頭狗肉っぽい。というのも、ハーフノートでのライブ演奏は1.と2.だけで、残る3曲はニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで録音されている。つまり、LP盤で言うと、A面はライブ、B面はスタジオであり、アルバム表題の半分は正しいが、もう半分は誤解を招くといったところか。 そんなわけで、1.~2.と3.~5.は少し別の内容として受け止めた方がよい。前半のライブ演奏の躍動感は確かに素晴らしく、ここが本盤の聴きどころとして世間ではよく評価されているようだ。マイルス作の1.「ノー・ブルース」はその躍動感と観客との一体感が満開。バラード曲の2.「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」では、観客を引き込んで次第に盛り上げつつある演奏を披露している。 その一方で、忘れ去られてはならないのが後半の演奏。筆者はこちらの方も(いやむしろ“こちらの方が”と言ってもいいぐらい)大好きである。3.~5.の3曲は、一転して緊張感あふれる精緻な作りになっている。3.「ユニット・セヴン」のウェスのソロは見事だし、4.「フォー・オン・シックス」のタイトな盛り上がりは何とも言えない筆者好みの雰囲気。スタンダード曲の5.「ホワッツ・ニュー」は意図的に抑えた空気の中で演奏を繰り広げ、ケリーのタッチも素晴らしい。落ち着いて聴きこむという点では、この後半の方が断然よいのではないかとすら思えてくる。 最後に余談ながら、素朴な疑問を一つ。それにしても、なぜ日本盤ではアルバム名義の名前が逆になっているのだろう。元の英語表記はウィントン・ケリー(正確にはそのトリオ)が先に来て、ウェス・モンゴメリ―の名は後ろに加えられている。ところが、邦盤では『ハーフノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー』という題名。ウェスの名を前に出した方が売れるとでも思ったのであろうか。でも、本盤の真髄はウィントン・ケリー・トリオにウェスがどうかぶさるかの緊張感にあるわけで、あくまでウェス個人が主役になっているわけではない。ひたすらウェスを楽しみたい向きには、ウェス個人の名義の盤を勧める。でも、ウェスの演奏がこういう環境のもとでどれほど緊迫感を持って見事なものになるかは、特に後半の名演から窺い知れ、聴き逃せない名演である。 ちなみに、同じジャケット・デザインで色違いの続編(赤色のジャケの『Vol. 2』)もある。本盤は青色ジャケ方なのでお間違えなく。 [収録曲] 1. No Blues 2. If You Could See Me Now 3. Unit 7 4. Four on Six 5. What's New [パーソネル・録音] Wes Montgomery (g) Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Jimmy Cobb (ds) 1965年6月(1., 2.)、1965年9月22日(3.~5.) 下記3つのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、ひとつでも“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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