カテゴリ:洋ロック・ポップス
キンクスの本領発揮はここから始まった ザ・キンクス(The Kinks)と言えば、「ユー・リアリー・ゴット・ミー」のイメージが強いという人も多いだろう。けれども、このブログで何度かにわたって書いているように(例えば、過去記事『この世はすべてショー・ビジネス』や『スリープウォーカー』を参照)、ファズな爆音を出すのがキンクスだというのは、かなり一面的な評価に過ぎない。 バンドの中心人物のレイ・デイヴィスによれば、1968年発表の本作『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ(The Kinks Are The Village Green Preservation Society)』は、“キンクスとの決別”になったアルバムだと言う。その発売までの経緯は、紆余曲折だった。まず、最初に12曲入りヴァージョンというのを作った(その結果、初期に一部で出回った12曲入りのものはレア・アイテムと化していると同時に、現在はデラックス盤のCDにこれら12曲+1曲が収録されたものがある)が、レイは納得がいかず、20曲入りの2枚組を提案する。ところがレコード会社(パイ・レコード)側は前作・前々作の売り上げを理由に2枚組案を却下した。結果、15曲入りの本盤が誕生することになる。当初のリリース予定を土壇場でキャンセルし、発売延期の十分な告知もできないまま、時間が過ぎ、今度はろくなプロモーションもなしに、15曲入りの完成版はひっそりと発売された。ビートルズが自己のレーベルを立ち上げて『ホワイト・アルバム』を発表し、ローリング・ストーンズが『ベガーズ・バンケット』で称賛をうける年のことである。 ひっそりと発売されなくても、そもそも本作は時代の流れと明らかに異なっていた。当時、サマー・オブ・ラブを経て、サイケデリックにヒッピーの文化が米国を、そして音楽界を席巻していた。この流れを考えると、このコンセプト・アルバムのスタイルと音楽的方向性は、完全に時代に逆行するものだった。 でも本盤の凄いところは、10年、20年、いや40、50年経っても色あせず、新しい作品であり続けていることだと思う。それだけ当時のキンクスの(より具体的にはレイ・デイヴィスの)構想力が優れていたのだろう。コンセプトに基づいているので、全体として聴くのが正統なのだろうが、曲単位でも印象に残るものも多い。個人的なお勧めとしては、1.「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ」、4.「ジョニー・サンダー」、9.「ヴィレッジ・グリーン」あたりが特に楽曲的によい。 ともあれ、キンクスの本領はやはりコンセプト・アルバム群に占める割合が、かなり高いと思う。その意味で、前作・前々作の“ややコンセプト系”を脱却して完全にコンセプト・アルバムと化した本作『ヴィレッジ・グリーン~』は、彼らの本領発揮の出発点と言えるのだろう。 [収録曲] 1. The Village Green Preservation Society 2. Do You Remember Walter? 3. Picture Book 4. Johnny Thunder 5. Last of the Steam-Powered Trains 6. Big Sky 7. Sitting by the Riverside 8. Animal Farm 9. Village Green 10. Starstruck 11. Phenomenal Cat 12. All of My Friends Were There 13. Wicked Annabella 14. Monica 15. People Take Pictures of Each Other 1968年リリース。 ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ+13/ザ・キンクス[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年03月23日 07時58分05秒
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