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音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2013年08月12日
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テーマ:洋楽(3286)

ロック史に名を残す2枚組 


 1966年に発表されたボブ・ディランの第7作目がこの『ブロンド・オン・ブロンド(Blonde On Blonde)』である。“ロックへの転向”により、フォーク界からは“裏切り者”呼ばわれされ、ツアーを続けながらも、その合間をぬって録音され、その結果できあがった本盤はアナログでは2枚組(現在CDでは1枚)という、ディラン初の(そしてロック界初の)試みであった。

 本アルバムの前作である『追憶のハイウェイ61』やそこに収録された「ライク・ア・ローリング・ストーン」が、ある種の“衝撃”をもたらすものであったということに異論はないだろう。その“衝撃”が偶発的もしくは単発的なものではなく、一つのスタイルの確立へ向かうものであったことが、次作となるこの『ブロンド・オン・ブロンド』からは明瞭に窺い知ることができる。

 けれども、このことを思うにつけ、フォーク・ロックの確立とはディランにとって何であったのか、と考えたくなってしまう。筆者の考えるところでは、実はディラン自身には、何らかのスタイルを作り上げる気などなかったのではないだろうか。そうではなくて、フォークから出発したディランが自己表現として適切と考えるものを探し模索しながらやってみて、その果てに出来上がったのが、結果的にこれだったのではないか。つまり、フォーク・ロックと呼ばれうるものが出来上がったにしても、それはディラン自身の意図からすれば、付随的に過ぎなかったのではないかと思えてくる。こう考える理由は、ディランの詞に重きを置く姿勢にある。各々の詞を表現し、音楽として聴かせる方法をいろいろ考えて実践してみたところ、結果としてこの音に行きついたというわけである。

 個人的好みから注目曲を挙げておきたい。冒頭の1.「雨の日の女」のリラックスぶりは、『追憶のハイウェイ61』からの進化を感じさせるナンバーで、いい意味で肩の力が抜けている。続く2.「プレッジング・マイ・タイム」、3.「ジョアンナのヴィジョン」、4.「スーナー・オア・レイター」(ここまでがアナログA面)…とアルバムが進んで行くにつれ、どの曲も高い完成度を持っていることに驚かされる。ディランにこの言い方は失礼なのかもしれないが、精度が落ちることがないのである。

 このような調子で、5.「アイ・ウォント・ユー」も、6.「メンフィス・ブルース・アゲイン」も、8.「女の如く」も、9.「我が道を行く」も…と挙げだしたらきりがないのだけれど、続けて聴くとさすがに疲れがたまりそうなほどの完成度の曲が居並ぶ。そんなわけで、LP2枚組分の全曲が1枚に収められた現在のCDを通して聴くと、最後の方には聴き手の側としては疲れ果ててしまっていることになるのだろうけれど、LPの第4面(2枚目の裏面)全部を費やして収録されていた11分超えの大作14.「ローランドの悲しい目の乙女」は、絶対に聴き逃せないナンバー。2枚組であることのみならず、この試みも当時としては初だったとか。やはりこの曲でもメインは詞にあって、その詞が紡ぎ出す情景が浮かび上がる手法としてこのサウンドに行きついているという印象が強い。



[収録曲]

(アナログ盤A面)
1. Rainy Day Women #12 & 35
2. Pledging My Time
3. Visions of Johanna
4. One of Us Must Know (Sooner or Later)
(B面)
5. I Want You
6. Stuck Inside of Mobile with the Memphis Blues Again
7. Leopard-Skin Pill-Box Hat
8. Just Like a Woman
(C面)
9. Most Likely You Go Your Way and I'll Go Mine
10. Temporary Like Achilles
11. Absolutely Sweet Marie
12. 4th Time Around
13. Obviously 5 Believers
(D面)
14. Sad Eyed Lady of the Lowlands

1966年リリース。





 
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Last updated  2013年08月12日 05時07分36秒
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