テーマ:Jazz(1970)
カテゴリ:ジャズ
ブルージーにまとまったセッション盤 プレスティッジというレーベルは、適当にメンバーを集めてセッションし、そのまま盤にするという適当なことをやったりしていたが、それで好作品に仕上がっていくというのは、メンバーのクオリティの高さと同時に、当時のハードバップの勢いがそれだけの体力を備えたものだったからということだろうか。 『オール・モーニング・ロング』というアルバム名(および1.の表題)は、モーニングという単語で“朝”を想像しがちだけれども、より正確には“(日付が変わった)深夜から次の日の昼までずっと(つまり深夜から午前中にかけて)”といった意味合いと言えそうだ。実際、本盤はレッド・ガーランドを中心とするセッションで、“もう1つのマラソン・セッション”と言われたりする。1957年11月15日と翌12月13日の2日間の録音から、まとめてアルバム4枚分(本盤『オール・モーニン・ロングAll Mornin’ Long』のほか、『ソウル・ジャンクション』、『ハイ・プレッシャー』、『ディグ・イット』)の演奏が残されることとなった。この経緯からもわかるように、夜明けから午前に続いたセッションの世界という訳で、参加メンバーは次の通り。ピアノのレッド・ガーランドのほか、ジョン・コルトレーン(サックス)にドナルド・バード(トランペット)。さらには、ドラムがアート・テイラーだが、ベースは、いつものメンバー(?)的なポール・チェンバースではなく、ジョージ・ジョイナー(音的には似たタイプと言えそうではあるが)。 全体的には長尺のセッションで、各曲の収録時間は長い。表題曲の1.「オール・モーニング・ロング」は20分という長丁場で、残る2曲が10分強と6分強。要するに、ソロ・パートに当てられた時間も長く、典型的なプレスティッジ的セッション演奏である。こう書くと何か“だれた”あるいは“緩い”演奏なのかと思ってしまいそうだけれれど、実際はそうではない。特に長丁場の1.「オール・モーニング・ロング」からして、実によくまとまった演奏に出来上がっている。ブルース好きには極上の演奏で、安定したレッド・ガーランドのピアノを中心としたリズム隊の演奏に、J・コルトレーンとD・バードのソロが(あくまで目一杯とは到底言えないが)いい感じで絡んでくる。要するに、サックスやトランペットだけを堪能するには不十分かもしれないのだけれど、あくまでレッド・ガーランドのトリオがベースにあって、その上でコルトレーンやバードがフィーチャーされてると捉えられることを前提にして聴くならば、これほどバランスよくまとまっているのは見事ということになるに違いない。 そして、この演奏を特徴づけているのは、何といっても“ブルース”である。上述の1.はブルージーなナンバーとして申し分のない出来。続く2.「誰も奪えぬこの想い」と3.「アワ・デライト」も、ブルースジーさという観点からは文句の付けどころがない。2.はややリラックスした雰囲気、3.は鬼気迫るコルトレーンのサックスがより強い印象を与えるものの、いずれもブルース(無論、ジャズで言うところのブルースという意味)としての完成度は高い。 マイルスの“マラソン・セッション”もある種似たところがあるのかもしれないけれど、“まとめ録りなんて…”と思うのは誤った先入観なのだろう。まとめて録音し、うまく編集され(切り取られ)た暁には、こういう風に傾向がはっきり出て、なおかつ聴きごたえのある盤ができあがるということを証明している一枚でもあるように思う。 [収録曲] 1. All Mornin’ Long 2. They Can’t Take That Away from Me 3. Our Delight [パーソネル、録音] Red Garland (p) Donald Byrd (tp) John Coltrane (ts) George Joyner (b) Art Taylor (ds) 1957年11月15日録音。 Red Garland レッドガーランド / All Mornin' Long 輸入盤 【CD】 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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