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2012年09月10日
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カテゴリ:政治問題
 共産党が発行する月刊誌「前衛」7月号の「メディア時評」で、ジャーナリストの金光奎(かなみつけい)氏は、全国紙が改憲論を容認するという国民の意志を無視した態度であるのに対し、国民生活に密着した地方紙は総じて護憲論であると論評している;


◆目立って強まる改憲派の動き

 今年は憲法施行から65年(5月3日)、日米安保条約発効から60年(4月28日)、さらに沖縄復帰から40年(5月15日)-いずれも大きな節目の年である。おりから原発再稼働の画策、TPP(環太平洋連携協定)参加の動き、消費税増税問題など日本の政治・経済と国民生活に重要なかかわり、影響を持つあまたの事項が民主党政権のもと、国民の意思を無視して強行されようとしている。

 今号本欄では、このうち65年目を迎えた憲法施行記念日に焦点を当て、他の問題にも目を配りながら、新聞の論調、報道について検証したい。

 まず憲法をめぐる今日の情勢をみると、憲法改定の動きが、改憲派のあいだで目立った形で強まっているのが、大きな特徴である。

 自民、みんなの党、たちあがれ日本などの各党は今年4月それぞれの憲法改定案を発表した。とくに自民党の新たな改憲案は、「天皇を元首」とするよう強く押し出しているのが特徴である。みんなの党は、「一院制」「首相公選」などを盛り込んだ。一方、「維新の会」は、次期総選挙の公約の「維新八策」のたたき台のなかで「参院廃止」「首相公選」などを打ち出している。こうした流れに大きくからんできたのは、憲法審査会の動きである。自民、公明両党が2007年に国民の反対を押し切って国民投票法を強行した。しかし憲法改悪反対の国民の声とたたかいが広がるもと、国民投票法成立に伴い衆参両院に設けられた憲法審査会の規定が衆院で決定(09年)したあと、ようやく一昨年5月18日の参院本会議で日本共産党、社民党を除く各党の賛成で成立にこぎつけた。それを受けて同審査会の審議が進められている。

 こうしたなかで参院憲法審査会の小坂意次会長(自民)は、今年5月16日、自民党がまとめた憲法改正草案などを審議したいと発言、各党が意見を述べるよう表明した。

 一方、沖縄の普天間基地撤去をめぐっては、移転を求める10万人規模の県民大会が開かれても、野田政権はアメリカのいうがままに、県民の声にはまったく耳をかそうとしない。それどころか、米軍は垂直離着陸輸送機オスプレイの配備を進める方針で野田政権はこれを了承している。これには仲井真沖縄県知事も反対を公言している。

 このように憲法を踏みにじり、改憲策動が強まるなかでの65回目の憲法記念日とあって、全国各地の「憲法を守り、生かそう」とかかげる集会や講演会、パレードがこれまでになく大きな盛り上がりをみせた。憲法記念日の当日はもちろん、各地の様々な催しがその後も各地で相次いで行われ、それはほぼ5月いっぱい続いたのが実態である。

 そこで、65回目の憲法施行記念日に当たっての新聞論調を見ることにしたいが、まず全国紙の社説のテーマを紹介しておこう。

改憲を推進・容認する全国紙

 【読売】《憲法記念日 - 改正論議で国家観が問われる/高まる緊急事態法制の必要性》
 【日経】《憲法改正の論議を前に進めよう》
 【産経】《憲法施行65年-自力で国の立て直し図れ/今のままでは尖閥守れない》
 【毎日】《論憲の深化 - 統治構造から切り込め》
 【朝日】《憲法記念日に - われらの子孫のために》

 このテーマをみただけで内容も推測できるが、若干の注釈なり、解説をつけておきたい。

 【読売】は、冒頭部分で「与野党は憲法改正の論議を深め、あるべき国家像を追求すべきだ」と述べたあと、新しい自民党改憲草案を評価する立場から若干の注文もふれている。

(途中省略) 

 【産経】は、同紙が3月27日付一面トップで「本紙が新憲法起草へ」との大見出しを立て「国民の憲法」起草委員会を発足させたことを報じたが、それを受けた憲法記念日の社説である。同社説では「はっきりしたことがある。それは自国の安全保障を他人任せにしている憲法体系の矛盾であり、欠陥だ」と強調、同起草委員会では「来年5月までに要綱を策定する」としている。

 【毎日】は「論憲」を打ち出しているが、「論憲の後にくるものは(略)いずれ『改憲』や『創意』が来ることは否定しない」としている。つまりは改憲を容認する立場でしかない。

 【朝日】は社説よりも一面にかかげた論説主幹による「座標軸」の論文が重要である。しかしここでは、日米同盟深化や大企業支配の強化などにより憲法の精神が踏みにじられていることは度外視して「一票の格差」を改めることのみが最大の問題であり、すべてが解決するような主張がまかり通っている。そこには改憲運動の広がりに対する反対は一言もなく、改憲容認の立場は明らかである。

◆憲法記念日の地方紙の社説

 こうした全国紙に対し、地方紙の多くは、明確に改憲反対、憲法を生かせとの主張を強く打ち出しているのが注目される。

 【北海道】《憲法記念日-震災便乗の議論 危供する》「震災に乗じて改憲を推し進めようという動きが活発になっている。(略)『まるで亡霊のように出てきた』と東大名誉教授の奥平康弘さんは(略)警鐘を鳴らす」「そもそも改憲派にとって震災はあくまで口実であり、本音は9条の改廃にあるのではないか。自民党案は(略)2項(戦力不保持・交戦権の否認)は削除し『自衛権の発動を妨げるものではない』 との規定を加えている」「近代国家の憲法は国民が権力を縛るためのものだ。その意味でも憲法が保障する権利を守り抜くことは私たちに課せられた責務である」

 【福島民報】《震災と憲法-「居住の自由」回復急げ》「(憲法にそって)権利が十分に守られているかは疑問だ。特に東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、本県はじめ被災地住民の人権を脅かす事態が目立つ。国や自治体は侵害を放置せず、立憲の趣旨に添った施策を講じるべきだ」

 【河北新報】《憲法と非常事態/行政の機能喪失も念頭に》「議論は国の指揮系統の強化に集約されることが多く(略)自民党の憲法改正案でも、非常事態条項は首相の権限強化や私権制限など、有事への対応を重視していた。しかし私たちは、復旧と復興に向けた地域コミュニティの底力を目のあたりにしてきた。震災のプラスの教訓だ。国や自治体の災害対策を補完し、初期の救難救助を担う非常時の議論に生かす視点もほしい」「地方自治は憲法の柱の一つだ。非常時の地方の備えを東北でこそ論じる意義がある」

 【東京】《憲法記念日に考える/人間らしく生きるには》「生存を維持する手段 -。まさしく憲法の生存権の規定そのものだ。(略)肉体的な健康ばかりでなく、文化的に生きる。主権者たる国民はそれを求め、国家は保障する義務がある」「生存権は、暮らしの前提となる環境を破壊されない権利も含む」

 【信濃毎日】《憲法記念日-支え合う仕組み確かに》「憲法25条は(略)憲法記念日に当たり、あらためて目を向けたい条文だ。全国的に、心もとない現状がある。(略)生活保護は受給者が209万人を超えた。(略)自殺者は依然、年3万人に上る」「社会保障制度を将来にわたって安心できるものにするのは、国の務めだ。(略)憲法の規定に命を吹き込むのは国民一人一人の役目でもある」

 【京都】《憲法記念日に/「信頼される政治」回復が先決》「最近、にわかに憲法改正が国会で語られ始めた。改憲手続きを定める国民投票法が(略)施行され(略)憲法審査会が昨年末の国会で審議入りしたからだ。(略)政党レベルでも動きがある」、「(民主党は)党としての改憲案づくりには至っていない。公明党は(略) 『加憲』を唱える。共産党と社民党の護憲の考え方は一貫して不動だ」「政治不信、政党不信の時代に憲法改正を持ち出し、憲法を変えていいのか、大いに疑問がある」

 【高知】《「憲法と国会」-地位にふさわしい働きを》「憲法の前文は国民主権を宣言した上で、国の政治が国民から託されたものであることを明記している」「民主主義は本来、手間暇がかかるものだ。(略)少数意見にも耳を傾けながら議論を重ねる過程を省略すれば、道を誤りかねない。(略)『日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し』で始まる前文を踏まえ、国会のありようを腰を据えて考えていく必要がある」

 【沖縄タイムス】《「憲法記念日に」 -沖縄で主権在民を問う》「強大な権力をもつ政府が国民の権利や自由を侵害しないよう、政府に対し、法的な義務や制約を課すこと。それが憲法の基本原理である」「(憲法施行)65年。そのうち25年間、(略)沖縄には憲法が適用されていなかった。(略)復帰後の沖縄において憲法は、県民の期待に応える働きをしてきただろうか。(略)沖縄では憲法の『主権在民』が全うされているとは言い難い」「日米の高級官僚レベルの交渉で基地問題が決定され、民意が反映されないという意味では沖縄の現実は『主権在官』だ」「既得権に凝り固まった官僚政治の中からは、基地問題の解決策は生まれない」

◆住民と結びつきの強い地方紙だから

 以上、北海道から沖縄まで地方紙のごく一部ではあるが、憲法施行65年をめぐる地方紙の社説をみてきた。読んでおわかりの通り、改憲派とがっしりと肩を組んだり、片手をにぎつたりしている全国紙の論調とはまったく違う、改憲策動に真っ向から対決し「憲法を生かす」立場を明確にした論調である。しかもそれぞれが本社のある地元の住民の要求やその地域が抱えている問題とからめながら、その解決や発展の方向をあくまで「憲法を守り、生かしていく方向」を具体的に指し示しているのである。

 各地方紙は、本社所在地の県内では、少なくとも住民の50%以上、多いところでは全住宅の80%くらいに配達されている。それぞれの地方紙は、県内や近県の情報、ニュースを細かく掲載している。つまり地方紙と住民の結びつきはきわめて強い。東日本大震災の被災地と地元紙はもちろん、各地方紙は地元の中小企業の苦境、産業、農業の状況、大学の就職状況、青年たちが働き口を失っている実態などをこまめにつかんで報道している。

 最近、日本ジャーナリスト会議の集会で会ったある地方紙の社会部長をしているTさんは次のようにいう。

 「私自身、農村や中小企業の取材に歩きますが、どこも深刻な問題を抱えていることを痛感します。アメリカや財界のいうままに憲法改悪をもちあげるような紙面をつくって恥じないのは、もっぱら官庁の記者クラブの会見をもとに記事を書いているからですよ。国民のなかに入って国民のナマの声を開いてほしい」

 いま「首長9条の会」が東北地方のすべての県に広がっている。5月19日に開かれた交流会には、青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島の6県から関係者が集まった。それを支えているのは地方紙の地道な報道があるともいえる。

 日本中の地方紙の奮闘を祈るばかりである。


月刊「前衛」2012年7月号 173ページ「メディア時評-憲法問題に見る地方紙の奮闘」から引用

 そもそも新聞というものは、一般の人々の購読があってなりたつもので、政治を論じるに当たっては読者の意向を反映した意見表明であるのが普通であるが、全国規模の大新聞ともなると、読者の購読料以上に大企業からの広告収入が、経営を左右する重大事となるので、一般読者の意向よりも大企業の都合のほうを優先することになる。その上、財界の中でも軍需産業が幅を利かせるようになれば、「読売」は言うに及ばず「朝日」もやはり、戦前にやったように再軍備や戦争を煽る論調にならない保証はない。その点、地方紙の場合は、人々の生活に密着した存在であるから、財界の顔色を気にせず庶民の本音を報道することができる。上に引用した記事が、そのことを実証していると言える。





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最終更新日  2012年09月10日 18時37分37秒
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