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加藤浩子の La bella vita(美しき人生)

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July 18, 2015
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 オペラツアーを作るポイントは、私の場合、2つのパターンがあります。

 公演を追いかける

 観光的な要素もからめつつ、公演もカバーする

 という二つです。

 一つ目のパターンは、むかーしからあるパターンだと思います。ザルツブルク音楽祭とかバイロイト音楽祭とかウィーン国立歌劇場など、有名どころの目玉公演を観に行くツアーですね。数カ所まわれば、観光的な要素も入ってきます。たとえばプラハの春が入れば、プラハという観光地としても魅力的な街を訪れることもできる。

 けれど、どちらかといえば、魅力とやりがい?を感じるのは、2つ目のパターンかもしれません。その場合、ヨーロッパ1カ国になることが多い。そしてオペラの場合、やっぱりイタリアという国は、このようなツアーを作るのに魅力的な国です。

 劇場も含め、オペラ(に限らず音楽全般がそうですが)には、多分に「地」のもの、という性格があります。ウィーンやロイヤル(ロンドンの)のような大劇場は別にして(といっても大劇場でもカラーはありますが)、それぞれの劇場にそこにしかないローカルカラーがある。客層も違えば、演目に対する趣味も違う。もちろん建物も違います。それを見るのがまず楽しいのです。

 加えて、今回のイタリアツアーでつくづく、イタリアという国の魅力を痛感しました。「食」も「景色」もほんとうに多様。イタリアには世界遺産が48箇所あるそうですが、地中海やアドリア海に突き出した半島だという地理も、(南北でかなり違うとはいえ)温暖な気候も、観光資源として恵まれているといえます。

 そして、多様なローカルカラー。

 ご存知のように、イタリアは長い間、多くの国に分裂していました。そのせいもあってでしょう、イタリア人はいまだにあまりイタリア人という意識がなく、郷土意識が強い。自分は(出身地の)「ナポリ人」「ヴェネツィア人」「シチリア人」 などだと思っているよう。そのローカルカラーがあるゆえに、多様性が保たれています。「ウチは違う」という誇りが高い。だから「食」も多様。街もそれぞれ個性があるし、自然の条件に恵まれた景色という点でも、イタリアは恵まれた国だなあ、と改めて痛感しました。

 今回はミラノに始まり、ガルダ湖畔、(イタリアの北東端)トリエステ、ヴェローナそしてナポリと、北を周遊してから南へ移動したのですが、このなかでトリエステとナポリは港町。でも、同じ港町でもまったく印象は違います。アドリア海の奥に位置したトリエステの海は静かで、長い間ハプスブルク家が支配していた街並みはウィーンのようにバロック的。行き交うひとびとも気のせいか穏やかで、料理も、味わいも盛り付けも上品です。    

 それがナポリへ来ると、一気に日差しが強くなるものの、港町なのになぜか気候はからりとして、日陰の過ごしやすさは北イタリアより数段上。ナポリ湾の景色は雄大で、街のひとたちは往来でにぎやかに立ち話。その様子がいかにも自然なのです。ミラノから飛行機でたった1時間なのに、南国だなあ、と感じます。 

 「ナポリって、イタリアの大阪?」

 とのたまったのは、ツアーメンバーの某有名ライター嬢でした。さすがの表現です。

 「ここのひとたちって、あんまりややこしいこと考えないんだろうね」

 これは、某元キャリアウーマンの発言。うーん、そうかもね。

 そんなナポリでは、料理もナチュラルでワイルド。量も半端ではない迫力ですし、味付けもトマトがたっぷり使われていて、これぞ(日本人が想像していた)イタリア料理!と膝を打ちたくなる美味しさでした。

 北と南の「海」の違いも印象的でした。トリエステから足を伸ばしたクロアチアとスロベニアの海沿いの小さな街は、よく写真で見るクロアチアのドブロブニクに似て、海に突き出した岬に、赤い屋根が印象的な中世の街並みが広がる小都市。小高いところから街を見下ろすと、海の碧と、屋根の赤の対比が美しく、吸い込まれてしまいそうです。とはいえやはり内海ですから、海は静かで穏やか。海沿いの土地もわりと平坦です。

 一方、ナポリから足を延ばしたアマルフィ海岸は、これはもう、絶景の連続。切り立った崖、エメラルドグリーンの海、ところどころに露出する白い岸壁、そこに垂れかかる木の緑や花の紅、入江に停泊するヨット…息を呑む風景の連続でした。

 そして、いつも言っていることですが、イタリアは、劇場の建物自体が楽しいのです。

 基本的な構造は似ています。馬てい形。赤のびろうどが貼られた座席。天井に向かって積み重なる桟敷席。彩り豊かな天井画。シャンデリアの輝くホワイエ。 

 けれど、やはりこれも、街によって微妙に違うのです。

 たとえば絶対主義のスペイン系ブルボン王朝の支配者によって建てられたナポリのサンカルロ劇場は、とにかく広くて豪勢。天井画も巨大で美しいし、ロイヤルボックスも大きくて豪華です。それに比べると、ハプスブルク家治下だったとはいえ、一地方都市のトリエステの劇場はこぶりで、シック。そして「海の都」ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場は、よくある赤の代わりに、街にふさわしく海の色である水色がふんだんに使われ、座席はくすんだピンク色。そのような差異を体験するのも、街並みや食の違いを体験するように楽しい。

 まだまだ訪れていないところもたくさんあるイタリアの劇場。南イタリアのバーリや、サルディーニャ島はカリアリの劇場なども行ってみたい。機会があればまた下見をかねて、新しい劇場体験をしようと想像をめぐらせているところです。そしてイタリアは、その「脳内プレツアー」からして、楽しい国でもあるのです。

  

  

  

  

 

  

 






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最終更新日  July 18, 2015 08:43:30 PM


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