「正面からベートーヴェンに挑む」〜「調布国際音楽祭」2020
「調布国際音楽祭」の記者会見に行ってきました。 鈴木優人さんがエクゼクティブ・プロデューサー、お父様の鈴木雅明先生が監修を務める音楽祭です。 この音楽祭、鈴木家が調布の住人だからということで生まれた音楽祭のようですが、地元密着型を志し、地元のアーティストや、地元にある桐朋学園の協力も得ると同時に、国際的なアーティストも招き、アイデアも豊富で、今年で8年目を数えます。 ベートーヴェンイヤーなのでベートーヴェンを特集するのですが、とても面白そうな内容でした。 メインは交響曲の全曲演奏。それも、いろんな形態でいろんなオケと、あるいは室内楽やピアノ連弾でやるんですね。そのバリエーションにもそそられます。 例えば第9は雅明先生の指揮でN響(調布に来るのは28年ぶりだそう)、合唱はN響と初顔合わせのB CJ。優人さんはBCJを指揮して5、6、8番。第7番はこのフェスティバルのために集まる若手演奏家のオーケストラ、フェスティバルオーケストラで雅明先生の指揮。同じコンサートで、バッハの名手として知られるピアニスト、マルティン・シュタットフェルトが協奏曲の第1番を弾き振りするのも聴きものです。残る1,2、3、4番はどうするかというと、様々な編曲版で、室内楽やピアノ独奏でやるんですね。これは、全曲聴いてみたいと思ってしまいます。 優人さん、記者会見で、ベートーヴェンは「強いメッセージのある作曲家なので、取り組むかどうかは大きな選択だが、正面から取り組むことにした」「これを調布におけるベートーヴェン元年にしたい」「出来るだけたくさんのベートーヴェンを、いろんな形で聴いていただきたい」。その言葉通りのプログラムになりました。 鈴木優人さんという方は本当にマルチタレント(演奏、作曲、プロデュース)の持ち主であるのに加え、人柄がソフトで自然体でとても感じのいい方。会場で会ったあるマネジメントの方が、「彼といっしょに仕事をしたいという方が本当に多い」と言っていましたが、よくわかります。周囲がついていきたいと自然に思う。そしてどんどんアイデアが出てきて、それを実現できる力がある。 お父さんの雅明先生も素晴らしいお人柄で、周囲を巻き込む情熱と人望があり、BCJが30年発展して続いてきたのは雅明先生あってのことだと思いますが(本当に大変なこともたくさんあったと思いますし、色々大変だったとチラとおっしゃられたのを耳にしたこともありますが、次の瞬間にはまたいつもの笑顔に戻るのが素晴らしい)、優人さんは優人さんで、お父さんにないものをお持ちです。 BCJのようなピリオド楽器の団体は、アーティスト個人で立ち上げたものが大半ですが、父子で受け継ぎ、成功している例は寡聞にして知りません。これが単なる世襲なら批判されるでしょうが、お2人とも飛び抜けた才能と実力(それも繰り返しですがタイプの違う才能)の持ち主だから、可能になったことなのだと思います。 調布音楽祭の内容、サイトにはまだアップされていないようですが、会期は6月14ー21日です。