甕臭と岩倉魔法
甕臭とはなんぞや?この疑問にぶちあたったのは「月の中 亀」との出会い。お正月に開けた亀さん、実はいささか気になる香りを持っていた。それはコルク栓を抜いた瞬間....ツンとくる異臭.....生き物としての自分がエラー信号を出す。具体的に表現するなら、カビのような臭い。じめっとした倉庫から引っ張り出したような臭い。口にするとイガイガした雑味がやたら強い。えっ、ありえない!と思った。コルク栓を嗅いで、段ボールも嗅いで、甕の外側も嗅いで....さらに、鼻先を突っ込むように内側もクンクンした。容器の口に付いた香りかもしれないと....だけど、やはり、焼酎そのものから臭いを発しているようで....もう、頭の中は大混乱! この臭いは何? 焼酎ってカビるの?ただね、口開けの味が変化することは経験から知っていたし、劇的な変化が起こるかもしれないと数日は様子を窺っていた。しかし、じめりとした臭いはしつこくのさばり続ける。 これはちゃんとした話を聞かなければ....そう思って、とある酒屋さんに電話した。そして、自分が感じたテイストを説明するとそれは甕臭と呼ばれるオフ・フレーバーだろう....との回答を得て、またも悩んでしまった.... このカビみたいな臭いが甕臭?....甕臭がどんなものか、まったく理解できなくて....本当はこの亀さん丸々、どこかに持ち込んで、甕臭を知る人に嗅いでもらうのが一番手っ取り早かったろう。でも、身近にそういう人が思い当たらない。ひたすらに検索かけて、甕臭とはなんぞや?甕臭、つまり、容器臭。土くれを器に仕立てる場合、その土自体が持つ金属イオンやら珪素やらが後の香りに大きく影響するらしい。甕貯蔵といえばやはり、真っ先に泡盛が浮かぶわけで、じゃあ、甕臭が強いといわれる泡盛の銘柄を飲んでみればいいのか?そしたら、自分の感じる異臭が甕臭かどうか、判断つくのか? では、早速、泡盛を....と、またも検索してみるが、これもよくわからない。つまり、製品化され、流通しているものはよしんば甕臭とおぼしき香りが存在したとしても、それは既に熟成を成し遂げており、独立して、これが甕臭ぞ!と言い切れるかどうか......と、これはまた、別の酒屋さんのお話なんだけど.....ね。つまり、3年以上は甕で寝ている岩倉亀さんに甕臭の存在はありえない....ということにもなってしまう。 これじゃ、また振り出し....嘆息しながら、話を終わらせようとした時、その酒屋さんがひとつのヒントをくれたんだ。 蒸留した焼酎を貯蔵熟成させる間に このカビに似た香りを放つ時があると!カビ臭がする、なんて酒造りを知る人に口が裂けても言ってはならない....そう、思い込んでいて、なるべくこの単語を使わないでいたけど、最後の最後にぽろっと口にしてしまって、得られた答え。 不安定な中間物質の存在だったのか!もちろん、全ての焼酎が同じ成分比でできてるわけではないので、一律にこの独特の香りを放つとは限らないが....フーゼル油でひとくくりにされる焼酎の芳香物質。本当は実に多様な成分の際どいバランスで成り立っている。その中には酸化によって劣化するものもあれば、水分子と融合してさらに味をなじませるものもある。急激な温度変化や紫外線によって、鎖を断ち切られ、別物になってしまうものもある......らしい。(らしい、というのはウチがド素人だからぁ~)果たして、自分が納得した見解が本当に正解なのかどうかは知る由もないのだけれど、ただ、岩倉亀さんが、3週間の後、華麗なメタモルフォーゼを遂げたのは事実。口開けに感じた異臭はすっかり消え失せたし、とげとげしく舌に残っていたイガイガもその名残さえなく、もう、まろまろする「月の中」そのまま....になったのだ。 岩倉魔法とも呼びたいほどの神秘さすが、月に魅せられしもの。この岩倉魔法は「くらら」にも施されており、最初に感じたお芋のもぐらたたきが終演した後にはバニラ香漂う乙女の流麗なステージが用意されていたことを付加しておく。 にほんブログ村今までのウチだったら、多分、この結論を得るまでの仔細を記さなかったかなぁ....だってね、多くの人に高い評価を得ている焼酎なんだもの。一介ののんべえが揶揄しているように解釈されても困るから....でも、余計なことごちゃごちゃ考えてるより、正直に己が愚かさをちゃんと記録しておこうと思って....もうすぐ、このブログも3歳に誕生日を迎えるけど、やっぱり、原点回帰したいじゃん!だって、ここは「のんべえの記録」だもんね~~~~