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カテゴリ:地図・位置情報サービス
インターネットと常時接続する車「コネクティッド・カー」をめぐり、自動車業界とIT(情報技術)業界の主導権争いが激しくなってきた。
携帯端末向け基本ソフト(OS)を支配する米グーグルと同アップルが自社で車開発にも乗り出す一方、自動車業界もドイツ3社が共同でフィンランド・ノキアの地図事業買収を計画するなどこの分野の強化に動く。5年後に約24兆円に膨らむと予想される関連サービス市場の覇権をかけ、2大産業が激突する構図だ。 「自動車産業は破壊の時期を迎えている。その破壊を自らひと押しして新たなビジネスモデルで利益を得るか、別の誰かにそれを許すかの選択だ」。独BMWでモビリティーサービスの戦略責任者を務めるトニー・ダグラス氏は、最近の会議でIT業界への警戒感をにじませた。車メーカーはもはや車を造るだけでは十分でなく、サービス産業にも積極的に進出していかざるを得ないとの認識を示した。 コネクティッド・カーでは数年後にも、朝の通勤で最短のルートを見つけたり、コーヒーを注文して代金を支払い、受け取る店まで案内してもらうことなどが可能になるとみられる。その市場潜在力は大きく、米マッキンゼー・アンド・カンパニーによれば関連するデータサービスやネット接続機器などの売上高は2020年までに1800億ユーロ(約24兆1900億円)に達する見通しだ。 グーグルとアップルの米IT2強はこの分野に照準を合わせている。グーグルは昨年6月、アンドロイドを搭載したスマートフォンと車載機器を連携させるシステム「アンドロイド・オート」を発表。アップルも同様の連携システム「CarPlay(カープレイ)」を擁する。 自動車メーカーは一方で、両社のシステムを自社の製品に組み込み始めており、米国では5月、韓国の現代自動車からアンドロイド・オートを標準搭載した初の車種が発売された。他方、IT勢の脅威を前に普段はライバル同士の自動車メーカーが連携する動きも出ている。 BMWとアウディ、メルセデス・ベンツの独高級車3社は、ノキアのデジタル地図・位置情報サービス「HERE(ヒア)」の共同買収を提案。関係筋によると買収額は最大で40億ドル(約5000億円)に上る可能性がある。精緻な位置情報はコネクティッド・カーの各種サービスで決定的に重要で、HEREを取得できればグーグルの地図サービスに頼らなくて済む。 またトヨタ自動車と米フォード・モーターは6月、スマホ向けアプリ(応用ソフト)の車載システムへの統合で協力すると発表した。トヨタはフォードの子会社が手がけるスマホ連携技術「スマートデバイスリンク(SDL)」を自社の車に導入する検討に入った。SDLではアプリメーカーが複数のテレマティクス(自動車向け情報サービス)システムで動作するアプリを一度に開発できるほか、自動車メーカーはダッシュボードの設計を自社で管理できる。 調査会社IHSオートモーティブのアナリスト、マーク・ボヤジス氏は「自動車メーカーは多くの血と汗と涙、R&D(研究開発)資源を自社のシステム開発に注いできた以上、グーグルやアップルに『どうぞ中に入って代わりをしてください』とはいえない」と解説する。 とはいえ、自動車購入者の間ではグーグルやアップルのサービスとの連携を重視する人が増えているとの指摘もある。IHSの予想では、20年までにアンドロイド・オート搭載車の販売台数は約3700万台、カープレイは約3100万台に達する。 日立製作所の見通しによると、西欧では新車に占めるコネクティッド・カーの割合が16年の約3分の1から20年までに約9割に高まる。消費者の関心が「車の馬力ではなく車内で時間をどう使えるかに移る」(コンサルティング大手)と予想されるなか、両業界のせめぎ合いは今後さらに激しくなりそうだ。 (Sankei Bizより) ------------------------------ Googleの自動運転参入もあって、IT企業の自動車業界進出が注目を集めているが、コネクティッド・カーはもともとITが優位にある分野といえる。 そんな中でBMWとアウディ、メルセデス・ベンツ3社がHERE買収に動いていることは今後の趨勢を握る動きなりそう。 コネクテッド・カーでは百度(バイドゥ)とダイムラーが5月に連携を発表しているように、自動車業界とIT業界の協力が不可欠だろう。 既存デバイスとの連携はもちろん、記事で指摘されている「車内で時間をどう使えるか」という方向性を考えれば、各種アプリ等で実績もノウハウも豊富なIT勢が主導権を握るのが自然なことといえる。 一方でテレマティクスなど自動車業界で培ってきたITS関連技術もまたコネクテッド・カーの分野では必須要件となる。 ここでは自動車業界が優位性を発揮できるはずだが、ユーザーに受け入れられるためにはビジネスモデルも重要で、その点において自動車業界は再構築が必要になる点も留意しなければならないだろう。 こうした動きはカーナビや位置情報関連で関わっている地図・測量業界にも影響を与えることになるだろう。 地図データのあり方もまたコネクテッド・カーのサービスの方向性により変わってくることが予想されるからだ。 HERE買収の件も含めて、自動車業界が今後どのような動きをとるのかは慎重に見守る必要がある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.07.21 08:53:26
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