カテゴリ:ミステリー
本日ご紹介するミステリーは、綾辻行人さんの「
奇面館の殺人」です。 ●あらすじ 幻想小説家である日向京助に頼まれて、身代わりとして奇面館に赴いた鹿谷門実。中村青司の作品であるその館に非常な興味をそそられた鹿谷であったが、同年同月同日前後に生まれたという彼らの集まりには、仮面の着用が義務付けられていた。 ●簡単な感想 「館」シリーズの9作目です。全10作が予定されているので次回で終了となります。残念ですが、楽しみです。 さて、今回の作品です。中村青司の手にかかった奇妙な館が雪に閉ざされ、奇妙な会合の後で誰かが殺されるという、いかにもな話です。いかにもな本格ミステリーを読むのは久しぶりなので、それだけで楽しめました。 今回は探偵役である鹿谷さんが全面に登場します。ワトソン役不在で探偵が一人で頑張りますが、他の人たちがあまり乗り気ではないので多少空回りしている感もあります。実際、事件が起きたからと言ってみんなで推理合戦をするようなことにはならないのでしょうけど。 少々強引なところもあったかと思いますが、概ね楽しめました。 以下はネタバレを含む感想です。 読まれた方のみ反転してご覧ください。 エピローグでも触れられていましたが、同年同月ほぼ同日生まれの「影山透史」さんが偶然にも同じような体格で何人もいたというのはできすぎな感がありました。せめてもう少し一般的な氏名だったら納得がいったと思いますが。ただ、同姓同名だとは思っていなかったので、そこは驚けました。次々と訪れる客が「~~と呼んでください」と言った辺りで少しは気がついても良かったです。 先代=透一だと思っていましたし、透一=主人である影山透史の父親だと思っていましたし、しっかり騙されました。 中村さんが設計したというだけで隠し扉の類は想定できて然るべきですし、首を切った理由も、指を砕いた意味も、全員に仮面を付けた理由も納得できました。計画的なものではないので、行き当たりばったりなのも頷けますし。 あの未来の仮面を再び(正確には三度)被ろうと思うのは心情的に今一つ理解できませんが。会社経営に見切りをつけることはいつでもできそうなのに、「次はきっと」と思ってしまう人なんだろうなと思います。流されやすいというか、騙されやすいというか、本格ミステリーの犯人にしては小物ですが、小物だからこそ「いかにも」がなかったのだろうと思います。「いかにも」を外すのもそれはそれで新鮮でした。 それにしても、一人目に見つけた「影山透史」とあれだけ奇縁があったわけですから、もう一人の自分を彼だと思っても良さそうですが、「良いこと」が起きなかったので別の人を探そうとしたのでしょうか。 以上です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.05.29 21:20:10
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