米澤穂信「愚者のエンドロール」
本日ご紹介するミステリーは、米澤穂信さんの「愚者のエンドロール」です。「氷菓」の続きになります。●あらすじ文化祭のクラス展示として製作していたビデオ映画の脚本家が体調を崩して、途中まで製作されたビデオの続きがわからなくなってしまった。「女帝」である入須冬実に頼まれ、古典部の四人はオブザーバーとして何人かの話を聞くことになる。●簡単な感想一箇所、残念なところがありました。仕方のないところではあるだろうと思いますが。舞台は高校で主人公たちも高校生ですが、酔っ払う描写がありました。ウイスキーボンボンを食べただけではありますが、少々便利に使われすぎていたような気がします。酔ったせいで普段と違う言動をするところは、もっと別のやり方でも良かったと思いますし、酔うほど食べるのも普段のその人物の言動から考えると不自然なように思うので、違う展開にしてもらいたかったです。今回は女性陣があまり目立っていなかった印象でした。強引なところが苦手なので、それはそれで良かったですが。少し不自然だと思うところもありましたが、意見を聞いて、理論的に欠陥を見つけて、また別の意見を聞いてという話の流れは面白かったです。終盤も良かったですし。以下はネタバレを含む感想です。読まれた方のみ反転してご覧ください。奉太郎の見つけたトリックはそのままで前例がありました。もちろん、全てのミステリーを読んでいないとミステリーが書けないわけではないので仕方がないですが。一応、真相(?)は違っていますがこの作品のメイントリックは奉太郎のものだと思うので、他作品にそのままのものがあるのは残念でした。女帝の行動は、奉太郎たちにとってはたまったものではないと思いますが、全体的に見れば一番良い策だったのではないかと思います。むしろ、一日に一人にしか会わせないところが不自然でした。一つ一つ丁寧に検証するためにはその方がわかりやすかったのだろうとは思いますが、時間がないわけですから、時間をずらしてでも一日で話を聞いてしまった方が無理がなかったと思います。それにしても、真相と冒頭のチャットがかみ合わないような気もします。冒頭を見ると本郷さんが途中棄権したかのようですけど、実際は最後まで書いていたのでしょうし。それを言いくるめて、他のシナリオを採用するためのお芝居だったわけですから、本郷さんがあれほど謝罪する必要性が良くわかりません。「人を殺してくれないと困る」「できません」だったんでしょうか。そもそも脚本に決まった時点で「人は殺しません」と宣言しておかなかったのが原因だとも言えますが。彼女が謝罪すべきなのは入須さんより奉太郎だと思います。以上です。