『インドネシア繚乱』 加納啓良 文芸春秋 2001年
1998年首都ジャカルタをはじめとするインドネシア各地で暴動が起き、日本人の安否が気遣われたのを覚えているだろうか。その少し前のスハルト政権最後の総選挙から、スハルト退陣、ハビビ政権を経てグス・ドゥル政権誕生までの激動のインドネシアをつづった本だ。著者は1997年から1999年まで3年間のうちの半分を首都ジャカルタに滞在することになり、インドネシアの経済・政治・社会の変動を間近で見た。なぜスハルトは退陣に追い込まれたのか。なぜ総選挙で圧勝したメガワティではなくグス・ドゥルが第4代大統領になったのか。汚職と腐敗。通貨危機。総選挙。民衆の動き。長年のインドネシア研究にもとづいた冷静な分析が魅力的だ。私もこの時期、インドネシアに滞在ていた。この本に書かれた一つ一つの出来事をあるときは実際に体験し、あるときは新聞やテレビで見た。今振り返るととても大きな変換機にインドネシアにいたのだと思う。その頃はわからなかった政治の裏側や社会の動きを整理して教えてくれた本書に感謝している。1997年年から1999年ころインドネシアに滞在していた人。インドネシアの政治に興味のある人。または「PDI-P」「バリ銀行」「グス・ドゥル」などと言う単語に反応してしまった方におすすめ。 また、第4章「インドネシアの過去と現在」はインドネシアの歴史をコンパクトにまとめてある。歴史を知たい人はこの章だけ読むといい。インドネシア繚乱 \690