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《櫻井ジャーナル》

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2012.11.29
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 世界の人口はすでに70億人を超え、2050年には75億人から105億人に増えると予想されているらしい。社会で貧困が広がり、犯罪が増える理由を人口の増加に求めたのはトーマス・マルサスという「経済学者」。1798年に「人口論」なる本を出してこの主張を展開している。人口は「性欲」によって幾何級数的に増えるが、食糧の生産は算術級数的にしか増えないという発想らしい。

 この議論が破綻していることは言うまでもない。人口が幾何級数的に増えるということはなく、すでに日本やヨーロッパでは人口の減少が問題になっている。世界全体で見ると食糧が不足しているということもない。問題は食糧の偏在と伝統的な農業の破壊にある。東電の福島第一原発の事故で大量の放射性物質が海洋へ垂れ流したことも将来的には大きな影響を与えることになるだろう。

 農業破壊の主な原因は欧米流の「近代農業」が押しつけられたことにある。伝統的な農業の仕組みが破壊され、自給自足が困難になった国は多い。最近ではモンサントのようなアグリ・ビジネスが欧米の農民をも激しく攻撃している。アグリビジネスと農民との戦いで最大のテーマはGM(遺伝子組替え)作物だ。

 放射性物質と同じように、GM作物が人類の存続を危うくする可能性があることを示す研究結果もある。本ブログではすでに書いたことだが、遺伝子組み換えトウモロコシを与えたネズミに腫瘍ができ、臓器にもダメージが見られたとフランスのカーン大学の研究者が今年の9月に発表している。

 フランスの「公式見解」は「データが不十分」ということだが、安全性が確認されたわけではない。実際、少し前までフランス政府はGM作物に否定的な姿勢を示していた。こうしたフランス側の姿勢をアメリカのクレイグ・ステイプルトン大使(当時)は懸念、長期にわたる「報復」が必要だと2007年12月に政府へ提案していることをウィキリークスが公表した文書が示している。

 人口の増加で食糧が不足し、貧困が進んだという事実はない。世界各地で農業を破壊、その一方で地下水を汲み上げて農作物を育てるという不自然なことを行ってきたのがアメリカ政府。その政府や黒幕の巨大資本が作り上げた経済システムによって食糧を含む富が偏在、飢餓や貧困が深刻化するのである。

 人口の増加と飢餓との関係を考えるとしても、全ての人間を同一に扱うことは間違っている。現実問題として、アメリカ人をはじめ、莫大な量の食糧を浪費している人がいる一方、生存限界ギリギリで生きている人もいるからだ。つまり、食糧問題を人の「数」で議論することは根本的に間違っている。「アメリカ的な生活をする人」を減らすことから始めなくてはならない。別に、人口を減らさなくても、生活様式を変えれば良い。

 現在、不公正な政治経済システムが貧困を拡大させている。が、富の独占を目指す富裕層はそうしたことを認めたくない。そこで登場するのがまたもやマルサス。マルサスの理論に基づいて1834年にイギリスで制定された救貧法では、貧困を個人の責任だとし、救済は労働者の処遇以下にすることが決められている。小泉純一郎を始め、少なからぬ日本の政治家も同じようなことを主張してきた。要するに、「新自由主義」の考え方。

 人口が増加してきた過去1万年から5000年前から人間のDNAに病気の原因になる変種が急増しているとアメリカのNIH(国立保健研究所)などのグループは主張しているようだが、どのDNAが病気の原因になるかを理解する能力が現在の人間にはない。所詮「ヒトの浅知恵」だ。

 ただ、こうした考え方を支える思想が存在していることも事実。1922年に創設されたAES(アメリカ優生学協会)は、そうした思想を体現した存在。1930年頃になると、J・P・モルガン・ジュニアをはじめとする世界の富豪の多くはAESのメンバーだったと言われている。AESのスポンサーのひとり、ウィクリフ・ドレイパーは1935年にナチ主催の集まりに参加したような人物で、人種差別主義者だった。勿論、富裕層は自分たちが優れているという妄想を抱いているだけ。

 同じ考え方をする人は日本にもいる。例えば、「いずれは就学時に遺伝子検査を行い、それぞれの子供の遺伝情報に見合った教育をしていく形になっていきますよ。」と教育改革国民会議で議長を務めた江崎玲於奈は語っている。(斎藤貴男著『機会不平等』)

 優生学的な思想は第2次世界大戦後も生き続け、1965年にはウィリアム・ドレイパーが人口危機委員会(後に国際人口行動へ改名)を創設している。この人物はジョージ・H・W・ブッシュ一家と親しく、ジャパン・ロビー人脈のひとりとしても知られている。人口を減らすことを目標にしているのだろうが、エネルギーや食糧の浪費をやめるという発想は感じられない。





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最終更新日  2012.11.30 02:44:25



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