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《櫻井ジャーナル》

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2016.03.15
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 ロシアのウラジミル・プーチン大統領は3月14日、シリアでの作戦は所期の目的を達成したとした上で、セルゲイ・ショイグ国防相に対してシリアに展開しているロシア軍の主要部隊を15日から撤退させるように命じたという。

 アメリカ/NATO、サウジアラビア/ペルシャ湾岸産油国、イスラエルなどシリアを侵略してバシャール・アル・アサド体制を倒し、傀儡政権を樹立させようとしている勢力はアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使い、2011年3月からシリアで戦争を開始、徐々に支配地域を広げていた。

 西側の政府やメディアは「独裁者」のアサドが「民主化運動」を鎮圧するために「流血の弾圧」を行っていると宣伝していたが、そうした事実がないとする情報は早い段階から流れていた。シリア駐在のフランス大使だったエリック・シュバリエによると、実際は限られた抗議活動があっただけで、すぐに平穏な状況になっていたという。

 その調査結果をシュバリエはパリへ報告したのだが、アラン・ジュペ外相は報告を無視しただけでなく、シリアのフランス大使館に電話して「流血の弾圧」があったと報告するように命じたという。当然、メディアもそうした現実を知っていたはず。その上で支配層のために偽情報を流したということだ。

 その後も西側はシリア政府による「民主化運動の弾圧」を盛んに宣伝、その情報源としてダニー・デイエムなる人物やロンドンを拠点とする「SOHR(シリア人権監視所)」を使っている。

 デイエムはシリア系イギリス人で、シリア政府による「流血の弾圧」を主張し、外国勢力の介入を求めていたのだが、2012年3月に化けの皮が剥がれる。「シリア軍の攻撃」を演出する様子を移した部分を含む映像がインターネット上へ流出してしまったのだ。

 現在でも西側メディアに登場するSOHRは2006年に創設され、背後にはCIA、アメリカの反民主主義的な情報活動を内部告発したエドワード・スノーデンが所属していたブーズ・アレン・ハミルトン、プロパガンダ機関のラジオ・リバティが存在していると指摘されている。

 デイエムにしろ、SOHRにしろ、シリア政府を悪魔化してリビアと同じようにNATOで空爆するため、その口実を作ることが役割だったのだろう。そのプロパガンダが失敗したわけだが、西側メディアはその後も偽情報を流し続ける。

 2012年10月にはアメリカ国防総省からも150名程度のチームが秘密裏にヨルダンへ派遣されていることを認める発言が流れてきた。後にドイツのシュピーゲル誌は2012年の後半からヨルダンでFSA(自由シリア軍)を訓練していると伝え、イギリスのガーディアン紙はアメリカだけでなくイギリスやフランスも訓練に参加しているとしている。

 西側ではFSAを反政府軍の「穏健派」の象徴として扱っているが、アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)はそうした武装集団は存在しないとしている。2012年8月にDIAが作成した報告書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)であり、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしているのだ。つまり、政府軍と戦っているのはアル・カイダ系の武装勢力だと言っている。

 つまり「穏健派」の実態は「過激派」であり、アメリカ政府が方針を変えなければ、その勢力はシリア東部にサラフ主義の支配地を作りあげるとDIAは予測していた。実際、その通りになった。2012年8月当時にDIAの局長だったマイケル・フリン中将は退役後、アル・ジャジーラのに対してダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決定した政策によると語っている。

 シリアでの戦闘を「内戦」と表現することも間違いだ。例えば、ジョージタウン大学のハイララー・ダウド教授によると、反政府軍のうちシリア人が占める割合は5%。残りの95パーセントは外国人傭兵だとしている。シリアの北部、トルコとの国境に近いコバニでの戦闘で死亡した74名の反政府軍兵士の場合、15名はウクライナ、8名はチェチェンの出身者だったとシリア政府側は主張している。死亡した戦闘員が携帯していた身分証明書で確認したという。ただ、全体としてみればサウジアラビア出身者が多いようだ。

 2013年8月には政府軍が化学兵器で住民を殺したという話を西側は流す。その直後に現地を調査したキリスト教の聖職者マザー・アグネス・マリアムはいくつかの疑問を明らかにしている。例えば、攻撃が午前1時15分から3時頃(現地時間)にあったとされているにもかかわらず犠牲者がパジャマを着ていないのはなぜか、家で寝ていたなら誰かを特定することは容易なはずだが、明確になっていないのはなぜか、家族で寝ていたなら子どもだけが並べられているのは不自然ではないのか、親、特に母親はどこにいるのか、子どもたちの並べ方が不自然ではないか、同じ「遺体」が使い回されているのはなぜか、遺体をどこに埋葬したのかといったことだ。(PDF

 攻撃の直後、ロシアのビタリー・チュルキン国連大使はアメリカ側の主張を否定する情報を国連で示して報告書も提出、その中で反シリア政府軍が支配しているドーマから2発のミサイルが発射され、ゴータに着弾していることを示す文書や衛星写真が示されたとジャーナリストがフェースブックに書き込んでいる。

 そのほか、化学兵器とサウジアラビアを結びつける記事も書かれ、12月になると、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもこの問題に関する記事を発表、反政府軍はサリンの製造能力を持ち、実際に使った可能性があるとしている。また、国連の元兵器査察官のリチャード・ロイドとマサチューセッツ工科大学のセオドール・ポストル教授も化学兵器をシリア政府軍が発射したとするアメリカ政府の主張を否定する報告書を公表している。ミサイルの性能を考えると、科学的に成り立たないという。

 2013年8月の化学兵器使用について、トルコの国会議員エレン・エルデムらは捜査記録などに基づき、トルコ政府の責任を追及している。化学兵器の材料になる物質はトルコからシリアへ運び込まれ、そこでダーイッシュが調合して使ったというのだ。この事実を公表した後、エルデム議員らは起訴の脅しをかけられている。

 この化学兵器話を口実にしてNATOがシリアを攻撃するのは決定的であるかのような話が流れ、9月3日には地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射された。このミサイル発射はロシアの早期警戒システムがすぐに探知、その事実が公表されるが、ミサイルは途中で海へ落下してしまった。イスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、ジャミングなど何らかの手段で落とされたのではないかと推測する人もいる。

 その後も西側支配層はアサド政権を倒そうと必死。自分たちの利権を拡大するために傀儡政権を樹立、シリアを分割して弱体化、それぞれを侵略勢力が食い物にする、あるいはリビアのように破綻国家にしてしまうといったシナリオが流れている。ロシア軍が撤退した場合、そうした目論見が息を吹き返すと懸念する人もいるが、ロシア軍はタルトゥースの海軍基地やフメイミムの空軍基地は閉鎖せず、撤退期限も示されていない。

 昨年9月30日に始まったロシア軍の空爆も「軍事演習レベル」のもので、小規模。また防空システムのS-400は配備されたままのはずで、T-90戦車も残されるだろう。また、地中海やカスピ海の艦船からミサイルで攻撃することも可能。アサド政権が「後ろ盾を失った」わけではない。西側支配層の中でシリアをあくまでも破壊した勢力はロシアが屈服したと宣伝、手下を使うのではなく、リビアのように軍事侵攻したいと思っているかもしれないが、今回の撤退決定は政治的なデモンストレーションと見るべきであり、そうしたことを行えば「第3次世界大戦」に発展する可能性がある状況に変化はない。





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最終更新日  2016.03.16 13:23:36



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