テーマ:スポーツあれこれ(11115)
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パブロ・カレーニョ・ブスタは真面目で穏やかな人柄を持ち、マッケンローやズベレフとは違う品格の人である。その彼が試合後主審と握手もせずに自分のテニスバッグを2メートルほど投げ飛ばしテニスコートを怒涛のごとく立ち去ったのは、それなりの理由があった。
準々決勝進出をかけた対錦織戦、第23シードのパブロは格上相手に押し気味で試合を進めた、2セットを先取、第3セットのタイブレークを惜しくも落とし、第4セットでもブレークを許し落とした。しかし第5セットのスーパー・タイブレークは8-5とリードしていた。 スーパー・タイブレークとは、今年のオーストラリアン・オープン(全豪オープン)で取り入れられた最終セット専用のタイブレークだ。昨年までは、USオープンを除いてグランド・スラム(四大大会)では最終セットのゲームカウントが6-6になった場合は、2ゲーム差になるまで永遠に続けることになっていた。だから、ゲームカウントが70-68というような、バスケットボールの試合かと思わせるような異常事態が、2010年のウィンブルドンで起きた。スーパー・タイブレークは先に10ポイント取った方が勝ちになる(通常のタイブレークは7ポイント)、ただし2ポイント差がつかなくてはいけない。 パブロ・カレーニョ・ブスタの8-5のリードは、100パーセントではないものの、十中八九勝利を手にしたと言える。しかし、テニスは最後のポイントを取るまで何が起きるかわからない。 次のラリーでパブロの放ったショットがコートの(錦織から見て)左側のネット上部に当たり、錦織のコートのライン際に落ちた。駆け寄った錦織はバックハンドでダウン・ザ・ラインにパッシングショットを撃つ、一方パブロはクロス・コートをカバーするため反対方向に走っていた。錦織がショット撃った1/10秒ほど前に、線審が「アウト」と叫んだ。 パブロはここでチャレンジ(ビデオ・レビューを要求すること)した。彼としてはそれしかないだろう、彼のショットは線審によってアウトとされたのだから、頼みの綱はhawk-eyeのレビューしかない。ビデオで見るとパブロのネットボールはラインにかかっていた、つまり判定は覆り、このポイントはやり直しになるはずだ。ところが審判は、パブロにとっては驚愕の判定を下した、錦織の次のショットがダウン・ザ・ラインに決まっており、反対方向に走っていたパブロには取ることは不可能であった、ゆえに錦織のポイントである、と。つまり、パブロのジレンマとでも呼ぼうか、チャレンジしなくても負け、チャレンジして覆っても負け、その上チャレンジしたことでチャレンジ権を一つ失う、という最悪の結果になったのだ。 壊滅的な心理ショックを受けたパブロ・カレーニョ・ブスタは、このポイントの後1ポイントも奪うことなく、最後は錦織のエースの行方を見届けることもせずコートを去った。(試合後のツイッターで、パブロはコートを去った時の自らの行動を謝罪した。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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