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2011年12月23日
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テーマ:銀魂(1187)


※「銀魂」二次創作です。


【Why don’t you give love on X’mas day?】<七>


彼女と別れてから山崎は大急ぎで部屋に戻って私用の防寒着を着ると、数える程しか袖を通した事が無い、丈の長い冬用のコートを箪笥の中から引っ張りだし、ついでにマフラーと手袋を引っつかんで全速力で外へ走り出た。ところが例の彼女の姿は近くには見当たらず、唯一遠くに見えた豆粒大に見える程の影に向かってそれが彼女だという確信も得られぬまま山崎はひたすら走った。影との距離が近づくに連れてあの長い三つ編みが揺れているのが見えて山崎はそれが彼女であるという確信を得ると、後ろから呼びかけた。
「ちょっ、あの・・・!すいませんちょっと!」
山崎の声に気づいた彼女はゆっくりと後ろを振り向いた。その瞳に、何かを片手に抱えて息せききって走ってくる人間が映った。山崎は彼女が立ち止まってくれたことに感謝しながら前まで行くと何度か荒い息を吐いて唾を飲み込んでから、深呼吸した。
「・・・どうかなさったのですか?」
「い、いや、あの・・・歩くの早いですね」
山崎は咳を一度すると、持ってきたコートを手で払いながらそう言った。彼女はというと山崎の顔をじっと見つめてその返事を静かに待っていた。山崎は考える。何も考えずに飛び出してきてしまったけれど一体何と言ったらいいのだろうか。言い方を少しでも間違えれば自分が変質者に早変りだ。そうして少しの間言葉を考えていたのだが礼儀正しく手を前で組んで待っている彼女の姿は相変わらず寒そうで、考えるよりも動けと開き直った山崎は、持ってきたコートを彼女にかけた。
「とりあえず、それ着てください」
彼女はきょとんとはしていたものの、意を唱えるでなく何か尋ねてくるでなく一つ肯定を意味する返事をして素直にそのコートに袖を通した。前のボタンまできっちり全部留め終えたその姿は幾分見た目にも暖かそうになって手袋とマフラーはいらなかったかなと思いつつ、あの氷のような肌を思い出して言う。
「あの、良かったらコレもどうぞ。全部俺のですいませんけど」
彼女はまた少し間を置いた後山崎の手からそれらを受け取り、装着した。山崎がこれでとりあえず一安心とほっとしていると彼女の方は今度は手袋をはめたその手を前で礼儀正しく組み、山崎を見上げている。彼女は最初に尋ねた問いの答えをずっと待っているのだと山崎は理解した。
「えっと、あー、何だ、その・・・」
「タマです」
「え?」
「私の名前はタマといいます。名乗るのが遅くなってしまい申し訳ありません」
タマはそう言うと軽く頭を下げた。口籠っていたのをどうやら勘違いされてしまったようだ。つられて山崎も自己紹介を返した時、タマから何か機械のような音が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろうと思って特に気にしなかった。
「余計なお世話かもしれないとは思ったんですが、凄く寒そうだったんで・・・」
「私は寒さというものを感じません」
タマはやはり平淡な口調でそう言った。山崎の目にも確かにタマは寒がっているようには見えなかったが、人間の肌があんな温度をしていていい筈が無いのだ。幾ら彼女が平気と言い張った所で、身体的には絶対に平気で無いという自信があった。
「す、凄いんですね・・・でも絶対風邪引きますよ」
「私は風邪など引きません。ウイルスに感染する事はありますが」
「じゃぁやっぱりダメじゃないですか」
山崎はそう言った際、思わず笑ってしまった。今の発言といい、少し噛み合わせずらい会話といい、着ている服といい、どこか少しズレている娘ななんだなと思った。でもこんな日にわざわざ届け物をしてくれた事や、その礼儀正しい言葉遣いや仕草を見る限り、とても優しい娘なのだろうとも思った。
「余計なお世話ついでに、送りますよ」
「どうしてですか?」
爽やかな笑顔でそう申し出た山崎にタマは即座にそう切り返してきた。予想外の答えとその反応の早さに、もしかして顔に出していないだけで気持ち悪がられていたのだろうかと山崎は急に心配になった。でも幾ら気持ち悪がられたとしても、こんな夜道を一人で帰らす訳にはやはりいかない。何とか警察という事で、受け入れてはもらえないだろうかと控えめに言う。
「や、やっぱりちょっと一人で帰らせるっていうのは・・・心配なんで」
「心配?」
「は、はい。タマさんは女性ですし、若いですし・・・
そういう人を狙った犯罪は多いんですよ、特にあの辺りは」
山崎は出来るだけ警察官っぽく紳士に見えるように話したが、寧ろ意識し過ぎて変な感じになってしまっていた気がして早くもめげそうだった。タマはまた何かを考えているようだったが、山崎にはこの沈黙こそが恐怖だった。やがて口を開いたタマの言葉は、またもや山崎の予想を裏切るものだった。
「山崎様と一緒に帰れば私は安全という事になるのですか?」
「え!?や、その・・・絶対とは言い切れないけど・・・一人よりはずっとマシだと思いますよ?俺これでも一応侍ですし」
山崎はそう答えて腰に下げた刀に手をやったが、無かった。刀は屯所に置いてきてしまっていた。馬鹿か俺は。そして部屋着に上着を着てきただけの格好であったので脇差すら携帯していなかった。もうお終いだ。
「侍と一緒にいれば安全なのですね?」
「そ、そうとも限らないけ、ど・・・いや、安全ですハイ。俺が護ります命に代えても」
山崎は己の胸に手をあててそうきっぱりと言い放つと悲観的な考えを頭の中から追い出そうとした。そう、自分は侍である。刀は武士の魂と言うけれど、刀だけが武器という訳でも無いのだ。腐っても真選組。肉弾戦だって、そこらのゴロツキなどでは到底相手にならない程の実力があるのだ。修羅場だって何度もくぐってる。敵の巣窟に単身乗り込んだ事も一度きりでは無い。こんな女の子一人、護れないでどうする。
そう山崎が決意を固めるてと、タマは丁寧に礼を述べた後更に続けた。
「私が何かお役に立てることはありますか?」
「え?タマさんが・・・ですか?」
「はい。何もありませんか?」
「えっと・・・」
「私も何かお役に立ちたいです。私はその為に作られたので」
山崎は少々驚いて何度か瞬きを繰り返した。タマは別に冗談を言っている風では無かった。寧ろこれまでのどの表情よりも真剣に見えて、其処には確かに揺るがぬ信念のようなものが感じられた。山崎はふと、微笑んだ。その理由の一つに、どうやら嫌われていた訳ではなかったようだという事。二つ目に、やはりこの娘はとても良い娘なのだな、と感じた事。一風変わった雰囲気の娘ではあるけれど、人を優しい気持ちにさせてくれる娘だ。
「・・・俺、人よりちょっと心配性なんです」
山崎はタマに向かって、徐にそう話始めた。
「ネガティブな方向に色々考えちゃうんですよね」
そろそろ歩き始めないとオイルが冷えてきてしまうと心配になったが、其処は体内の機器を使って補い、山崎の言葉を一言一句漏らさず、タマはやはり礼儀正しく聞いていた。
「そんな訳なんで、俺が安心できるようにタマさんの家路をご一緒させて貰ってもてもいいですか?」
「・・・それは山崎様のお役に立っているのでしょうか?」
「はい。何よりの助けです」
タマは腑に堕ちない部分が幾つかあったが、かくも人間とは不条理な生き物である事を知っていたし、目の前の人間が嘘を言っているようにも見えず、自身感情という物を持ち合わせているタマにもその気持ちは何となく理解する事が出来た。
「データに書き加えておきます。山崎様は女性を自宅まで送らないと安眠できないと」
「何だか凄く誤解されているように思えるのは気のせいですか・・・」
山崎はやっぱり嫌われていたのではないかと再び悲観的になったがそのタマが初めて微笑んでいるのを見て、この娘なりの冗談だったのかなと思い直した。
あまり身長の変わらない二人は何となく噛み合わない会話を続けながら歩き、真選組屯所を抜けた先の人気の無い道に、二人分の足音が消えていった。


その時、突然自分の隣から前触れ無く声がして、阿伏兎は内心飛び上がる程驚いた。
「悪ィなァ、遊んで貰っちまって」
それというのも、そう言ったのが他でも無い高杉の声だったからだ。もしかしてというかやはりというか、見られていたのだろうかと阿伏兎は背筋が凍り恐る恐る己の右肩下を見下ろしてみると、高杉の目線は自分に向いてはおらず少し離れた所で遊んでいる・・・ように映ったのだろう高杉の目には。また子と神威の方に向いていた。
どうやら、自分の事では無かったらしいと、まるで九死に一生を得たような気分で阿伏兎はほっと息をつき、自分も何故か高杉と武市に挟まれている状態でそちらを見てみると、神威が例のあの道具を使ってまた子に話しかけている所だった。
「『ブース』」
「フン!幾らそのメガホン使ったって、口調が全然なってないんスよォ!晋助様はそんなバカみたいな喋り方しねぇっス!」
机の上に胡坐をかいて座っている神威とその白々しい笑顔を小馬鹿にするように、また子は仁王立ちで腕を組み、見下しながら言った。神威はと言えば、また子の言葉に少々苛立ちを覚えたのかは傍からは分からないが一瞬両目が鋭く開いてその道具を構え直すと、今度は落ち着いた口調で言いなおした。
「成程ね。じゃぁ、『気色悪ィ』」
その瞬間また子の表情が凍りついたようなものに変化して、立ち姿も強気ないつもの彼女からは程遠く、震えながら己の手を耳に持って行こうとしながら最後の抵抗と言わんばかりに言い返す。
「そ、その手には乗らな・・・」
「『その顔、反吐が出るぜ』」
その瞬間また子は耐えられなくなったのか、悲鳴を上げながら己の顔を手で覆い、その場にしゃがみ込んでしまった。それを面白がるように神威は机の上からまた子の頭上を覗き込み、その姿に更なる罵声を浴びせ続ける。
「いやあああああああ!!もうやめてえええええ!!!」
半泣きになった状態のまた子に絡む己が上司の姿は、遊んでいるというよりはただの苛めっ子のように見えて、阿伏兎はやはり何ともいえない申し訳の無い気持ちになった。
「こちらこそうちの礼儀知らずな馬鹿が遊んで貰ってるみたいで・・・何かすいません」
「若いねェ・・・」
「20代が何言ってるんですか」
当の彼女の上司達はと言うと心配してる風でもなく神威に怒るでも無く、高杉に至っては目の前で自分の声が遊び道具になっているにも関わらず本人は一貫してその事には無頓着のように見えて、阿伏兎にはそれが少々意外なように思えた。高杉とよく一緒にいるサングラスの男がアレで一緒に遊んでいたりしたら怒る印象があったのだが。
と其処まで考えた所で阿伏兎はふと気づいた事があり、辺りを見回す。そういえば今日はあの男を見ていない。この会場のどこにもいない。これまで高杉の事も見かけなかったので、てっきり一緒にいるものだと勝手に思っていたのだが今此処に高杉がいるのを見ると、どうやらその予想は外れていたらしい。









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最終更新日  2011年12月23日 07時13分46秒
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