長髪女子が髪型を変えるとき/天上の虹・里中満智子
全23巻の中で、髪型を変えたキャラは少ない…… と昨日書いたと思って、見返してみたざんす。1巻だけちと見当たらなかったのだけど、それでも後の巻で記憶で出てくるからいいとすっか。長髪をまっすぐ垂らしてることのある女性キャラは・讃良さま・越智娘(讃良さまと大田皇女の母親)・十市皇女・氷高皇女の四人。このうち越智娘は狂死、十市皇女は自害ということにおはなしの中ではなっております。↑の一番右。回想だけどまあこんなかんじ。語ってるのは天智/天武のおかーさんの女帝。越智娘は天智帝/中大兄皇子の奥さんの一人、有力豪族の蘇我氏なんで、後に皇后になる倭姫の次くらいに格は高かったでしょうな。だけどその蘇我石川麻呂が謀反の疑いで夫に殺されまして。その中で強引に行為に及ばれたのち正気を失って、出産で死亡。この方はずっと垂らし髪のままだったざんす。その髪の毛が、狂乱の様をよく表してましたわ。まあこのせいで讃良さまはずっと父親が死ぬまで憎むという構図を最初からとってたな。もう一人悲劇のひとは十市皇女。彼女の終盤はだいたいこんなフンイキでしたな。生き残ってしまった、というか。生まれがまず天武帝と額田王の間の長女。で、天智帝の息子・大友皇子の妻となったひと。おはなしの中では天武帝と尼子娘の間に生まれた高市皇子と恋仲だったと。まあそんなわけで壬申の乱で夫方と父方の中で引き裂かれることとなりまして。乱の収束後は天武帝の娘ということで優遇はされたけど、スキャンダルを恐れて高市皇子と正式に結ばれることはできず。自分が居ることで皆に不幸をもたらすのではないか、とどんどん考えだす中、斎院として送られる前に息子を残して自害。髪を靡かせて憂う場面が非常に多いです。で、髪を靡かせて→動揺、ということで、次世代の氷高皇女。讃良さまの息子の草壁皇太子の長女の氷高皇女。美女! で非常に理性的で頭よくて、国のことを考えてて、弟を叱咤激励して、まあ最終的に未婚を選ぶんだけど。二度目の縁談が来た新田部皇子/天武と藤原五百重娘の息子との恋に少しだけ浮かれたときの描写。ただし新田部皇子は藤原氏に彼女が利用されるのを察知して、あえて別れを選ぶという。頭のいい男女同士のお別れ。こういう時にも髪が靡きまして。未婚で弟のサポートに徹すると決めたときに、二度と乱れないように、と髪を上げたのでした。……まあ、「長屋王残照記」では「できる美女」のテンプレから↑こんな風ですが。これだと天上の虹における額田王↓と似てますなwまあこれは里中「キャリアウーマン」のテンプレなんで仕方ないす。天上の虹では氷高皇女は「強い姉」なんで、やや派手めの姿を小さい頃から描き続けて、最終的にこういう感じになったのではと。で、讃良さまですが。初期はこんな感じですね。主人公テンプレです。で、少女期~子供できてしばらく~までは前髪がおでこを隠しております。これが3巻まで。4巻。と言ってとりあへずこうなります。この巻では試行錯誤しまくるんですね。夫が自分を女としてみてくれない、と。飾りも多いです。で、最終的にこういう感じに。これがまあ暫定。で、壬申の乱があって、皇后の座についたらこれで安定。そんで最終23巻、本当に亡くなる寸前まで上でまとめて二段さげて後ろも長めに曲げてる感じ?主人公の複雑スタンスをよく表した髪形だと思いまする。ともかく「長いまま結わない」女性は、最凶の悲劇が。もしくはわりとゆったりとした髪型の場合もそれはいえてそうで。後半あれこれあった女性、紀皇女。唇が当時の「いまどき」風にあえて色無しの、史実にほとんど出てこないこの皇女ですが。自分から剣に突っ込んで行って、「忘れさせない」とばかりに。あへて珂瑠皇太子の「年上の忘れられない妻」という役割にぶっこんで。夢も何も無いというふわふわしたキャラだったんだけど、その前からのつきあいの弓削皇子との不倫がばれたとき、「一緒に死にたい」っていうのが強い望みになってしまってこういう悲劇に。で、この彼女を皇太子→文武帝がいつまでもいつまでも忘れられないことから、第二の妻だった藤原宮子がこんなんなります。ずっと愛されたくて「必要とされる女」「いい娘」「よき妻」をやってきたけど、産んだ子供が男の子で、「紀皇女の生まれ変わりじゃない」とみなされたときの珂瑠の態度に、とうとうぶっつん。努力してきたら叶えられるとがんばってきたけど、燃え尽きてしまったと。で、これは史実の、息子に何十年も会わないということに。このひとの場合は横髪ですね。あとうなじのほつれ。結っていてもこういうとこに乱れが。一方、結構厄介な展開を見せた自己中だった高市皇子の二番目の妻・但馬皇女は最終的には自分の無為を悔いて、正妻の御名部皇女と仲良くボランティア活動にいそしむ的な。髪の毛はまとまってますねwww感情のうねりを出すのにやはり少女マンガの系譜としては髪の毛が重要ですから、ずっと長い髪垂らしっぱなしとか、ゆるい感じのひとは気をつけねばならないということでしょうか。どっとはらい。古事記(1) (マンガ古典文学) [ 里中満智子 ]