カテゴリ:アート
浦上玉堂という人、興味深い生涯を過ごした人でした。画家で あり、琴の名手の音楽家(作曲・編曲も手がける)、詩人、書家 とマルチな才能を発揮した人です。岡山池田藩の武士でありな がら、将来を捨て50歳で脱藩、ふたりの子どもを連れて全国 を遍歴しました。なぜ?どうして?と疑問が膨らみます。 さて、この画家の描いた水墨画の数々、どの絵もリズム感溢れ る筆致が印象的でした。 薄墨から濃墨への変化。濃厚かと思うと逆にあっさりとした表 現。細い線を積み重ねてじっくりと描いたり、大まかな太い線 でさっさと描く。米法で山を積み上げるように細かく描いたか と思えば、次の作品は水をたくさん含ませた墨をもわっと滲ま せた山を描いています。 とにかく、いろいろな手法で描いた山水画を楽しめます。また、 多くの作品には杖を引いて橋を渡る人物が小さく描かれていま す。これが玉堂自身の姿なのでしょうか。山々の大きさ、自然 の偉大さに比べて、何と人間はちっぽけなんでしょうか。 玉堂の描く山々は、四角だったり、斜めに突き出していたり、 扁平だったり、尖っていたり、とにかく不思議な形をしていま す。そして、山中に踊り場のあるような白い空間が描かれてい る作品が目につきます。白い○のスペースがある山々です。 キャプションに易経でいう陰と陽でこの○は陽の男性を表わし、 一つの絵の中に陰と陽すなわち永遠を表現しているというよう な解説がありました。その時は、うまく理解できなかったので すが、さきほど、とらさんのブログを読んで、なるほどとそうだ ったのか!と気づきました。 確かに鼓琴余事帖の中の「風高雁斜図」などは、山が雲のよう に、あるいはキノコのように膨らんでくる不思議な絵だなと思 ったのですが、なるほど言われてみると「そのよう」にも見え てきます。 最後に展示されていた「山紅於染図」。朱墨を使って紅葉の風景 を表しているのですが、水墨画で描く紅葉とはこうなのか!と うなってしました。黒い墨も朱墨も決してくどくなく、紙の白 地が多いのですが、それでいて山一面の紅葉を想像してしまい ます。 後期は川端康成が所蔵していた国宝の「東雲篩雪図」も出展さ れるということ。これは後期も出かけるしかないでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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