私の食道がん闘病記(4)
昨年8月食道がん宣告を受けてから、ほぼ半年が経とうとしています。これまでの治療経過と、その時その時の想いを振り返ってみたいと思います。<治療の内容>治療は「延命治療」としての化学療法しかないということで絶望しかかりましたが、前向きになんとか少しでも生き延びようと思いました。治療内容は、胃がんで標準治療とされているTS-1とCDDP(シスプラチン)の抗がん剤を併用する療法です。食道がんといっても胃との接合部にあるので胃がんと同じ治療方法です。TS-1とは飲み薬による抗がん剤で1999年に日本で開発された比較的新しい薬です。従来フルオロウラシル(5FUと略される)という薬での治療が多かったのですが、副作用を少なくする為開発されました以下の三つの成分が配合されてます1.テガフール:体内でフルオロウラシルに変換されがん細胞を攻撃2.ギメラシル:フルオロウラシルの分解を押さえ効果を持続3.オテラシルカリウム:下痢などの消化器系副作用を軽減カプセルや顆粒がありますが、身長の高い私はカプセル(20mg×3カプセル)を朝夕食後の一日2回服用します。これを21日間毎日続けて服用し、14日間休薬します。合計35日間で1コースの治療スケジュールとなりますこの薬は、飲み始めた時は「たいしたこと無いな」と思っていたのですが、3コース目に入った頃から服用後腹が張って気持ち悪くなる事が多くなりました。また、湿疹が頭や口の周りにできて、髪の毛を切ったり髭をそったりすることがしにくくなるので、顔つきがあまりよくありません。幸い脱毛が少ない薬なんで、つるっぱげにはなっていないのが救いでしょうか。(脱毛で苦しんでいる方ごめんなさい)処方を受けると、このような服用に当っての注意書きが必ず添付されてきます。シスプラチンとは、点滴による抗がん剤で白金(プラチナ)を含んでいます。がん細胞の遺伝子(DNA)と結合しその合成を阻害、ガンの増殖抑制や死滅させたりします。TS-1を服用し始めてから8日目に2時間以上点滴して投薬します。この薬は効果が高い一方で非常に副作用が強い為、前日から入院して投薬します投薬後全く食欲がなくなり吐き気もするので、事前に吐き気止めを投与、その後3日間経口吐き気止めを飲みます。シスプラチンが体内にとどまり、特に腎臓にかかる影響を軽減する為、前日から大量の点滴を受けます。排泄を促す為、利尿剤を点滴します。正直言って、シスプラチン投与日は朝から晩まで点滴だらけ。トイレも30分おきに行きたくなり夜中などは不眠になります。。。1週間ほど入院して点滴で栄養補給します。食欲が戻ってきたら退院できますが、入院中はほとんど何も食べれないので、病院食は全部キャンセルしました。ご飯のにおいすら、嗅ぐと気持ち悪くなり食欲が全く出ません。女性に聞くとそれは「つわりと同じ」といわれました。女性は大変な経験をしているのですね。何も食べなくても輸液(点滴)でカロリーや水分補給をするので、人間は点滴だけで生きていけるものなんですね。その代わり1週間で5キロはすぐに減ります。退院時はお腹周りがすっきりして、いつもズボンの腰がだぶだぶになってしまいます。シスプラチンは「毒をもって毒を制す」という表現が適切ですね。副作用がきつすぎて、口内炎ができる人も多いですし、舌の奥が苦くて何も食べたくなくなります。それでもTS-1は服用しないといけないので、何か口にしなければとカットフルーツを病院の売店で買って来たり、ヨーグルトなどで何とかしのぎました。暖かいものはにおいがするので、冷たいものしか食べれません。今のような冬場はそれもつらくて、ストレスを感じます。また、点滴もだんだん刺している針が痛くなってきます。時々漏れたりして腕がパンパンに膨れてる事が有りました。そういう時は刺しなおすのですが、下手な看護師さんだと何度も失敗するので、腕が刺し跡だらけになってしまいます。。。それ以外にも体全体がだるいとか、腕や足がむくむなどさまざまな副作用が出ました。幸いにも骨髄抑制(造血作用の減退)が私には起きていなくてよかったです。白血球が減少すると風邪などを引いて、全身の抵抗力が下がり感染症にかかりやすく肝心のがん治療ができなくなってしまいますので、避けなければならないのです。こういったさまざまな副作用に比べても、ガン抑制効果が出ている間は治療を継続することになります。しかし、体力的に副作用に耐えられなくなったり、ガン抑制効果が見られずガンが増殖したりする場合は、別の治療に切替えることになります。抗がん剤に対してガン細胞も耐性を持つことがあり、次第に薬が効かなくなることもあります。また、先ほどの点滴ですが、先回入院時にやり続けていく間に血管が痛くなって続けられなくなりました。血管自体が弱くなってくるということもあり、治療自体が継続困難になる可能性もあります。<高額な医療費>TS-1は保険適用で1カプセル当り210円。21日×6カプセル/日×210円=26,460円を毎回薬局で支払います。これを毎月続けると12ヶ月×26,460円=317,520円/年。結構な額ですね。シスプラチン投与のため1週間入院すると、一回の入院で約10万円病院窓口に支払います。(自分はトイレのある個室にした為、差額ベッド代を更に9万円はらってます)年間12回入院で120万円の支出です。(自分は個室にしたから228万円になる見込み)もちろん、健保から高額医療給付の補填がありますし、個人的に入院保障保険に加入しているので全てが自己負担ではないですが、がん治療はガンとの戦いであると同時に「高額治療費」との戦いでもあるわけです。また、会社を長期休業するので年休はなくなり、給与支給も打ち切られます。代わりに健保に申請して傷病手当金の支給を受けますが給与全額ではなく、一部減額されます当然会社からの賞与もなくなり、年収ベースでは30%~40%減少するイメージ。月々の生活は何とかやりくりしている状況です。正直娘の私立中学受験をどうするかも考えましたが、貯金と自分の死亡保険金や奨学金などで対応できそうなので、そのまま試験を受けさせようと思っています。こういったことも頭に入れると、自分のいなくなった後の事を否が応でも考えざるを得ません。最近「エンディングノート」というものを買ってきました。自分しか知らない事通帳や印鑑、資産、借金(幸いにも住宅ローンは完済済み)、権利書、口座振替の内容(死亡すると全ての銀行口座は一旦閉鎖される)などなどを書き込みました。最後のページには家族へのメッセージも書きました。動画で残すほうがイイのかな???遺言書のような法的効力はないものの、覚え書きとしておけば残された家族が慌てなくて済みますからね。改めて、忘れていた事を思い出すよいきっかけにもなりました。私は楽天ブックスでコクヨの「もしもの時に役立つノート」1,411円(税込)を購入しました ↓