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 小説ブログ 「GO!GO!花園」

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ようこそおいでくださいました。Madam Garden こと花園夫人です!

オムニバス短編小説で、駐在員団地のばたばたな日常を書いてます。

この物語はフィクションであり、実在する企業、団体、人物などとは関係ありません。C国は架空の日本の隣国…っていうか明らかに中国ですね。でも、Q市はあくまで架空の一都市です。登場人物も特定の個人をモデルとするものではなく、すべて作者の想像上の産物です。

作者の注意散漫なうっかり体質による読み苦しい間違いも多々あるかと思います。広い心で付き合ってください。

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2010年03月02日
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GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラから
この章をはじめから読むにはココ



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みんなのアイドルめぐみ先生の巻 (6) 姑VSタヌキ


 答える園長のこの調子は、腰が抜けそうになるくらい調子が外れていた。

「美馬先生ですか?」

「はい、くまさんぐみの。彼女が刺青もちなんです。」

「熊さんのいれずみですか?それは、またかわってますね。」

「はい、いや、いいえ。猫だかなんか手形の刺青だそうです。」

土屋良子は調子を乱されながらも、もう一度昨日の顛末を話した。
園長は相変わらずのんきな口調で、

「ほうほう、そんなことがあったんですか?」

「園長先生はどうお思いですか?幼稚園の教諭がですよ?しかるべき処分をお願いしたいんですけど。」

「わあ、いやあ、そんな、しかるべきだなんて。しかし、他からそういう報告が取れていませんし、その上、そんなものがあるという確認もないですしね。つまり、いくら土屋さんのご意見でも、即処分というわけには行かないのですよ。」

感嘆詞と接続詞ばっかり。とがった矛を魂込めて研いできて、思いっきり突いてみたら的が暖簾だったのでびっくりした土屋良子は気勢をそがれた形になった。口をパクパクさせて次の攻撃法を探すが、園長はそれを無視して、あくまでのんびりした口調で、

「あるかないかわからないものに対して対処はねえ…」

と、歌うようにつぶやく。土屋良子は自分のこめかみが動いているのを感じながら、

「あるかないかって、さっきからお話しているとおりです!園長先生は私が嘘ついているとでもおっしゃるんですか」

と早口で切り替えした。声を荒らげてはきちんとした抗議にならないので、かなりの力を腹に入れて自分を押さえ込む。

「いえいえ、滅相もないです。ただ、なんだかお聞きしたところによると、一瞬の出来事のようで。」

  のらりくらりと議論を交わす園長に痺れを切らした土屋良子は、身を乗り出して声を高くした。

「そもそも園長先生は、責任者としてこの件に関してどうお考えなんですかっ。」

良子にぐっとにらみつけらた佐々木園長は、ゆっくり瞬きをした後静かに話し始めた。良子とは対照的に声のトーンを落とし、園児たちに話しかけるときのようなゆっくりした調子で。

「私の意見ですか。私の意見はこうです。そもそも、美馬先生を採用したのは彼女の能力と人柄、学歴などを考慮してのうえのことで、刺青?タトゥーですか?そういったものがあるかないかは、判断の基準になってないです。それに…そもそも、ホントにあるんですか、その、猫の引っかき傷だかなんだかの刺青?」

話が微妙にずれながら、元に戻っている。いつの間にか園長の口調も飄々としたおとぼけモードになっている。

「猫の手形!見たって人がいるんですよ」。

「でも、土屋さんご自身は見てないんでしょう。他に報告も入ってきてないし。」

「だったら、本人を呼んで確認したらいいじゃありませんか。」

「えー、本人ここに呼んで、お尻出せって言うんですか。そんなこと、男のわたしだっていわれてほいほいできませんからねえ。セクハラですよ。」

佐々木園長はなぜか中腰になって、土屋良子に尻を出せといわれて困っているような顔をした。

「園長先生のお尻の話はしてません!」

  ここははっきりさせておかなければ。そんなもんだされても困る。土屋良子の我慢の限界は近かった。こめかみはどっくんどっくん言っている。

「はいはい、そうですね。誰も見たくないですよこんなもん。」

園長は軽く振り返って、自分の尻に残念そうな一瞥を投げかけるとソファーにまた腰を下ろした。そして、また真面目な顔と声に戻って、

「ともかく、本人をよんで確認を取ったとしてですよ。それで、仮にそういうものがあったとして、それが果たして、彼女の教諭としての資質にどのような影響を及ぼすかといううことについては、即断できませんからねえ…。何かがあるかないか確認のもてないことを仮定して、あった場合どおするかを考えるのは、今までとくに問題がないことを考えて、やる意味があるのかということを考えますとですよ、むしろないと考えるほうが自然なのではないでしょうか?」

狸注意.jpg

  大量のもくもくの煙りがたかれ、それにまかれようとしている自分の状況にうすうす気づいた土屋良子は、自分に上がってきている「支持者」の報告、連絡帳の言葉遣いがなれなれしいとか、発表会の役の振り分けがどうのとか言うのをもちだそうかといた。しかし実際言葉にしようとすると、それらは他愛もない根拠のあいまいな不平不満のように思えてきた。本人達から聞いたときには実感のこもったもっともな意見に聞こえたのに、どうしたんだろう。でも、ここで根拠のあいまいなことを言っては今回の件の信憑性にも関わってしまう。

  そうこうしているうちに、佐々木園長は急にてきぱきとまとめだした。

「ともかく、本日の土屋さんの来園の件については、考慮しておきます。私どものほうも、今日はじめてそのようなことを聞いたので今すぐどうこうはできません。従いまして、少々様子見といいますか、その他の意見や状況を判断してですね、対処のほうを考えていきたいと思います。」

そして立ち上がると、

「いやあ、それにしてもお忙しいところご足労いただきましてありがとうございました。こうやって積極的にリーダーシップを持って園にかかわってくれる方がいると、大変助かります。」

土屋良子はなんだかよくわからないが園長に感謝された形になって、園長室を送り出された。

(つづく…)


今回の挿絵の写真はブログ「ちょっとだけ途中下車」より許可を頂き、お借りしています。



それでは次回もお楽しみに!
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最終更新日  2010年03月02日 22時17分59秒
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