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 小説ブログ 「GO!GO!花園」

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ようこそおいでくださいました。Madam Garden こと花園夫人です!

オムニバス短編小説で、駐在員団地のばたばたな日常を書いてます。

この物語はフィクションであり、実在する企業、団体、人物などとは関係ありません。C国は架空の日本の隣国…っていうか明らかに中国ですね。でも、Q市はあくまで架空の一都市です。登場人物も特定の個人をモデルとするものではなく、すべて作者の想像上の産物です。

作者の注意散漫なうっかり体質による読み苦しい間違いも多々あるかと思います。広い心で付き合ってください。

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2010年03月07日
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C国Q市に駐在する日本人駐在員の集まる駐在員団地で奥様たちが繰り広げるオムニバス物語。フツーな人がいないといわれるGOGO団地。人の多く住まうところ、愛あり、憎しみあり、噂あり。駐妻の秘密の花園。


GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラから
この章をはじめから読むにはココ


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みんなのアイドルめぐみ先生の巻  (7)タンタンタヌキの…たくらみ

  土屋良子が納得しきれない面持ちで去っていった園長室で、佐々木園長はインスタントコーヒーを入れ足を伸ばして座った。これでとりあえずどうにかなった。コーヒーを一口飲むとほっとして、おとぼけ顔でも、子どもに諭すときの優しい顔でもない、ただの疲れた中年男の顔になった。


  佐々木園長はその日コーヒーを飲み終わったあとも、次の日も、週が空けても、美馬めぐみの件については具体的なことを何もしなかった。園長がインスタントコーヒーを何杯もすすっている間に、園ママ達の間の噂もだんだん下火になり、騒動は自然鎮火に向かった。

  園長が何もしなかったのは、美馬めぐみがいなくなると、英語のデイビス先生とまともにコミュニケーションを取れる人がいなくなって困るからだとささやくものもいた。

  正直なところ、それもちょっとあったのだが、佐々木園長は今回の件を、主に学年の途中で担任が変わることと、それによって起こるごたごたを避けるためうやむやにしてしまいたかった。だから本当は、事件の翌週の火曜には美馬めぐみに関する「噂」が入っていたにもかかわらず、土屋良子には「初耳」を貫き、はじめから煙に巻くつもりで対応した。それは題して「蚊帳の外作戦」。佐々木が幼稚園が園長という仕事を長年続けてきた中で編み出した最強の作戦である。

  佐々木は園長として自分が男であってよかったと思うことも、女だったらもっと簡単だろうと思うことも、両方を経験している。男性の少ない幼稚園という環境で、人の上に立つ自分だけが男性という状況は、上司と部下というけじめをつける際にやりやすい。しかし反面、女性の教諭同士の揉め事や問題に「どうせ男にはわからない」という雰囲気でハナから仲裁にも入れさせてもらえないどころか、何が問題なのかさえ教えてもらえないときが往々にあった。 
  そして無理やり入っていくと、唯一の男性の自分がどっちの勢力についたかで事はたいていこじれたし、いつの間にかもめていたもの同士が同盟を組んで、問題解決に乗り出したはずの自分に向かってくることさえもあった。だから最近の園長は、もう無理に問題の中に入っていかない。立ち入らなくて良い問題にはあえて立ち入らない、何らかの処置が必要な場合はできるだけ蚊帳の外から遠隔操作を試みる。

  今回が良い例だ。土屋良子の張り巡らした蚊帳の中にいったん入ったら、土屋良子がさんざん練ってきたたモラルとか常識とかの議論に加わるはめになり、ちょっとやそっとのことじゃあ出させてもらえなかったに違いない。あの土屋さんと蚊帳の中で何晩も過ごすのはごめんだ。みんなが当たり前だと思って、実ははっきり明記されていないことほど厄介なものはない。そんな問題には入らなくてすむなら入らないほうがよい、というか、入らないことに全力を出し切るべきだ。お惚け園長の演技なら得意だ。

  でも、演技はしたけれど、モラルに反することはしていない。たとえば、美馬先生の話が始まったときに土屋に「そんなこと初耳」と言ったが、それはまったくのうそではない。あの時点では噂は聞いていたが、報告が挙がってきてなかったのは事実であった。園長たるもの根拠のあいまいな噂を情報源とすることはできない。本当のことをすべて語っていないだけど、真実に反することをいっているわけではない。いい加減な返事と嘘もは違う。

  それに、土屋良子に語った、自分の意見は全部自らの考えだ。美馬先生は子ども達にとってよい教諭である。たとえ背中だかお尻に何をしょっていようとも、彼女のこれまでの実績とこれからの仕事に影響しているとは思えない。ただそれを証明するのは至難の業だ。土屋の攻撃をまともにうけながら、正攻法で攻めていたのでは、お互い傷がつく。傷つくのは二人とは限らない。最悪の場合、幼稚園の運営自体に滞りが出てしまうかもしれない。向こうの攻撃圏の外に立ちながら、こちらからも攻めずに、こちらのもって行きたいほうに持っていく。これが女ばかりに囲まれて長年働いてきて身につけた技なのである。

  今は11月の末である。あとひと月すれば年末年始の休みに入って雰囲気が変わる。休みがくればみんな気分が変わって、噂ももっと下火になるし、年が明けてしまえば3学期は短いのでどうにでもなる。そして新年度に向けての転勤シーズンにはワカバの園児たちは卒園以外にもかなりの数が入れ替わる。作戦はほぼ成功。佐々木園長はうなずいた。

(つづく…)



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最終更新日  2010年03月18日 15時26分21秒
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