(9)ハイネケンと涙の旅立ち
GOGO花園って何?って方は、第一回のコチラからこの章をはじめから読むにはココ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○● みんなのアイドルめぐみ先生の巻 (9)ハイネケンと涙の旅立ち そう思った瞬間、園長はにっこりわらっていった。「あなたは採用ですよ。あなたのバックグランドはうちのシステムにぴったりだけどそれだけじゃない、あなたは正直な人。面接ではホント、みんなうまいこと言って比べようがないけど、あなたは違う。教師だって好きな子どもも苦手な子どももいる。トラブルメーカーの親だっている。みんなとうまくやっていくのは本当に難しい。だから、自分の苦手なことをわかっている人はかえってやりやすいですよ。苦手だからってやらなくていいとは言ってはあげられないけど。回りも、私もフォローできますから。」 めぐみは救われた。特大の墓穴掘って落っこちたら、たまたま下にスプリングが落ちてて華麗に跳ね返ってきた感じ?ほっとしためぐみの口元は緩んで、口角が下がったまま気が抜けたような微笑を浮かべていた。 リンカーン幼稚園の新学期は欧米式の9月なので、3月までワカバの仕事ができる。年度末まできちんと働いて、日本に少し帰ってS市いりすれば、新しい学校の新年度準備にも参加できる。 めぐみが辞意を伝えると、佐々木園長は残念そうな顔をした。いろいろあったけれど、佐々木はめぐみの幼稚園教諭としての資質を高くかっていたのだ。資格があるもの、経験があるものは多くいても、ぱっと子どもをひきつける明るさと親しみやすさをかな備えためぐみのような人間はそうはいない。園長自身が昭和のアイドルめぐみのファンであったのだ。 Q市の三月は出入りが多い。転勤シーズンで人が入れ替わるのだが、みんな新生活の準備が大変なので早めに次の地に去っていく。めぐみは例の個室カラオケで同僚にお別れの飲み会を開いてもらって日本に旅たった。いつにも増して盛り上がったカラオケは、最後は全員で絶叫し、心配した店員が様子を見にやってきた。めぐみも、大久保先生も岬先生もみな絶叫の後は、涙涙であったのだが、店員が無作法にもまえぶれなく個室のドアを開けたときには、とっさにきっとにらみつけた。大久保先生が、ドスの聞いた声でこう言った。「こっちは問題ないから。メーイウェンティー!ハイネけんもっと持って来て!」 三月の最終日、めぐみは機上の人となった。これから数ヶ月、日本の実家に数ヶ月置いてもらって英語の児童教育書などを読んで勉強するつもりだ。7月末にはまたC国に向かう。今度はS市。同じC国内とはいえ、Q市からは飛行機で3時間の地、もっとずっと人の多い、経済的にも発達した土地だ。また新しい外国に行くようなものかもしれない。しばらくは回りは知らない人だらけ。何かあるごとにドアを閉めて立てこもった個室カラオケにもありつけない。「ハイネケンもう一ポーン」が聞きたくなったら3時間飛行機に乗ればいいのはわかってるけど、日本とアメリカ方式の休みは違うからそれもそう簡単いはいかないだろう。今度こそうまくいく。今までだって失敗したわけじゃない。新しいチャンスを見つけて、ちょっとずつ変わりながら自分を生かして働いていくんだ。めぐみはそう思って飛行機のシートに身をうずめた。(おしまい)このお話はこれで完結です。読んでくださってありがとう。次のお話も近日中にアップ予定ですのでお楽しみに!