あなたには大好きな本がありますか?
私が一番最初に出逢った記憶にある本は3歳の時の「白雪姫」。
「白雪姫」
「あなたに一日30回位読まされたわ。」と亡き祖母が言うくらい、
読んで読んでと頼んでいた3歳の私は、丸覚えをして周囲の人に語っていたようです。
縫い物をしていた王妃が針を指に刺してしまい、
窓際の雪に滴り落ちた血をみて王女誕生を願う冒頭のシーン。
雪のように白く、血のように赤い唇、真っ黒な髪の美しいヒロイン。
継母となった意地悪な魔女、世界で一番美しい人を教えてくれる鏡、
金塊を掘る小人たちの家、毒の櫛やリンゴ、ガラスの棺、
そして白馬に乗った王子。
心をとらえて離さないアイテムがどっさりですね。
幼な心にもっとも惹かれたのは、魔法の鏡。
「この鏡欲しい。」
そんな我がままも言ったような記憶があります。
母の三面鏡や手鏡を飽きもせず覗きこむようになったのもその頃。
「あなたが世界で一番美しい。」
この言葉を聞きたいがために、女性は鏡の前で装うのではないかと思います。
二番目のお妃になった魔女に、夫であり、白雪姫の父である王は、
「あなたは美しい」と充分に言ってあげていなかったのでしょうね。
次に記憶に残っているのは「若草物語」。
エリザベス・テーラー出演の同名の映画の大ファンだった母が
5歳の時に与えてくれた、美しい挿絵がどっさりの本。
これもはじめは読んでもらっていたのですが、
200ページ近くもあるため母が音をあげ、やむなく自分で読むことに。
クリスマス前夜から始まる牧師一家の物語。
南北戦争に牧師として参加している父の留守を守る母と四人姉妹、
病気の家族へのクリスマスディナーのプレゼント、
家庭内での演劇発表会、
引きこもりでピアノが得意なお金持ちの少年、
パーティに明け暮れる社交界と質素な生活、
塩漬けライム、空中楼閣、髪を切って旅費を作る話、
そして再びのクリスマスでの、牧師である姉妹の父の、戦場からの帰還。
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という南北戦争時の映画を見たとき、
この激烈な戦闘と幼いときに読んだ物語の世界が
同時進行していたのだと知って、非常に感慨深く思いました。
小学校に入って図書館に通うようになってから、この四姉妹の物語がたくさんの人に
訳されていることがわかり、それからは見つけたもの全てを読んでいます。
いままで10人くらいの方の訳を読んだでしょうか。
同じストーリーが、訳す人によって全く違う印象を与えることに気づき、
その面白さにも夢中になりました。
2年ほど前、ようやく原文を手に入れ、非常に分厚いパーパーバッグに戸惑いつつ、
幼い頃から慣れ親しんだ本との再会を愉しみました。
古き良き時代の、のんびりした家庭の物語だと思っていたのが、
1860年代のアメリカの家庭としては非常に革新的で、
(姉妹が外で働いていることや貧しい人に教育を受けさせることなど)、
モデルとなった作者・オルコットの家庭共々、
近年研究が進みはじめていることもわかりました。
大好きな本について書いてみると、私の人生に与えた影響は非常に大きいようです。
石鹸作りをしているのも、魔女の大鍋をかき回すシーンが基本にあるのかも。
演劇や教えることや書くことに惹かれるのもここに原点が見えるよう。
もちろん、美しくなることへの思いも魔法の鏡から始まっているのでしょう。
幼い頃、あなたが読んでいた大切な本にも、そんなヒントがあるかもしれませんね。