蜷川幸雄氏演出、小出恵介さん、月川悠貴さん出演の舞台。
一昨年の「間違いの喜劇」、昨年の「恋の骨折り損」に続く、
出演者が全て男性のオールメール公演。
シェイクスピア演劇が上演されていた当時の形は、
同じ時期に発展した歌舞伎とも通じるものがありますね。
【舞台の内容に触れますのでお読みになりたくない方はどうぞスキップなさって下さいね】
「から騒ぎ」
アラゴンの領主・ドン・ペドロ(吉田鋼太郎さん)は、異母弟・ドン・ジョンとの戦いの後、
パデュアの貴族・ベネディック(小出恵介さん)と
その親友・親友・クローディオ(長谷川博己さん)と共にメッシーナを訪れる。
戦いの勝利に酔う中、クローディオはメッシーナの知事の娘・
ヒアロー(月川悠貴さん)に恋する一方、女嫌いのベネディックは
知事の養女・ベアトリス(高橋一生さん)と口論し続けている。
ドン・ペドロは、そんな若者たちの仲を取りまとめようと画策、
二組の縁談が成立しようとしたとき、戦いに敗れたドン・ジョンが現れ…
友人と会場に着くやいなや、心躍る音楽に迎えられて。
劇中でも、章節ごとに登場する3人の楽人さんたちが
ロビーで演奏してくれていたのでした。
舞台は、大階段に数十体の彫像をあしらったもの。
いつもながらの客席が縦横に使われ、
役者さんたちを間近に観られる通路の登場は、
ともすれば格式高く押し上げられてしまいがちな
シェイクスピア劇を、卑近な見世物でもあった時代に
きちんと押し戻しているように思います。
役者さんたちも、レトリックな応酬の場面以外は
かなり言葉尻を崩して演技しているようで
時事を織り込む歌舞伎にも似た、自由さが感じられました。
今回のチケットを取ったのは、友人と共にファンである
月川悠貴さんが出演されているから。
オールメールには慣れてきたものの、彼の麗しさには
まだまだ目馴れることができません☆
男性が女性に転換する場合、舞台では硬い体躯を覆う衣装や
顔の線を隠す長い髪が多用されることがあるのですけれども
今回の月川さんのヒアローは、肩から腕を露出した細いラインのドレスに
耳下までの短い巻き髪。
男性性を封印する道具はほとんど使わずに、作り声でないビブラートのかかった声音と
挙措動作そのもので女性以上の女性性を醸し出してしまう月川ヒアロー。
個人の地金を一切見せず、役者として、幕が完全に下がり切る最後の最後まで、
きちんと役目を果たされていることにも感嘆を覚えます。
今回、記憶している中では初めて、カーテンコールで一人で登場されたのが
本当に嬉しく。
「卒塔婆小町」の公園と鹿鳴館で初見したときから、彼を見る驚きは
衰えることは今だないのです。
「月川悠貴さんの舞台」
「彩の国・シェイクスピアシリーズ 公式ブログ」