早くからペアチケットを手に入れていたマリー・アントワネット展を鑑賞したのは
夏休みに入ったばかりの頃、会場の名古屋市博物館は、まだそれほど混んでいなかったため、
友人とゆっくり楽しむことができました。
悲劇の王妃の物語は、小学生のときに出会った名作コミックで
もう何度も何度も、ひとつひとつの場面から台詞まで思い出せるのは
同行した友人も同じ。(おそらく会場にいた全ての女性も)。
ハプスブルグ展でも、フランス展でも、ヴェルサイユ展でもなく、
王妃の名前そのものを冠した展覧会に出かけるのは初めてのこと。
昔日、同じタイトルの展覧会に親の保護下にある小学生のとき
泣いて頼んでも行かせてもらえなかったほろ苦い思い出も蘇りつつ
美しい展示品の数々を拝見。
まず目に入ったのは、小さな頭部をもつ胸像。
学生のときに訪れたマダム・タッソーの蝋人形館の、
ルイ16世とアントワネットの頭部が並んでいるという衝撃的なコーナーが彷彿として。
王妃のそれのあまりの小ささに、小顔などと当時は耳にしたことがなかったにも関わらず
まさにその言葉そのものの印象が今だに残っているのですけれど、展覧会にあった胸像も
結い上げた高い髪に埋もれるようで。
マダム・タッソーが実際にフランス革命時の、断頭台の光景を目にしたと知るまでは
つい最近まで、想像で王夫妻の姿を作ったと思い込んでいたのですけれど、
今回、この胸像をみて改めて王妃の、ファッションリーダーたる重要な要素を感じたのでした。
次に目に入ったのが、チケットにもなっているルブラン作の肖像画。
王妃の肖像画に携わった画家は何人もいたようですが、ルブランの肖像画は
画家本人が可愛らしい路線の美人だったこともあるのでしょう、どう描けば
最大限に美しく見えるか、知り尽くしているといった印象を受けます。
1778年に最初に描いた全身像を元に制作されたという若い王妃の絵は、ぷっくりと紅い唇や
ふわっとした髪が白い肌にかかる様子、一番綺麗に見える視線の向きや頬のライン、
可愛らしいのに知的にさえ見えるという顎や額の角度に加えて内面の輝きまで現したよう。
「そう、私の姿は本当はこうなの、こう描いて欲しかったの!!!」という王妃の
圧倒的な支持がうかがえる素敵な作品で、革命後、国外に逃れたルブランに
描いて欲しいという女性が後を絶たなかったというのも肯けます。
興味深かったのは、クリスタルで再現された例の「首飾り」。
展示されたものを見ると、二つのパーツに分かれていて、アントワネットブルーと思われる
リボンで結んで首まわりを飾るようになっているようでした。
そのほか、錠前作りが趣味だっというルイ16世の手による
「マリー・アントワネットの時計のねじ」、
昨年、ヤマザキマザック美術館でも拝見した当時の衣装や軍艦を載せたヘアスタイル、
王妃のサインを入れて物議をかもしたという侍女任命状などが印象深く。
アートショップでは、図録を購入。嬉しいことに、あの素敵な肖像画が大きな帯になっていて
さらに同じ絵の栞にピンクかブルーのリボンがついたものを選ぶことができましたので、
当然のことながら、アントワネットブルーの方を頂いたのでした。
静かに鑑賞した後は、アントワネットに関する話題を存分におしゃべりしながらランチ。
日本中に遍く浸透している一大文化を今後も楽しめますように。
「アントワネットの文机の日記」