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![]() 飛騨の国から加賀の国へぬける道筋に小白川という部落があるんじゃ。 この部落のはずれに化けグモがおってな、道の両端に意図をかけては人のかかるのをじっと待っておったんじゃ。 この道を通らんと加賀へ行くにはどえらい遠回りでな、けわしい飛騨の山じゃ、旅人はいつも泣かされておったんじゃと。 これまでも多くの力自慢が人々の不幸を救おうとやってきたが、あれれ化けグモの餌食となってだれひとりとして帰るものはおらなんだと。 ある時ひとりの旅の坊様がこの部落を通りがかると、数々の悲話をきかされてなぁ、 「人々の命を救えるとはありがたい修行じゃ。ひとつ私にまかせてくれんか。」 と、ひとりで何も持たずに山へ入って行きんさったと。村人は坊様の無事を祈って後姿に手を合わせるばかりじゃった。 うっそうと木の生い茂る山道を蛭にたかられながら進んでいくと、何やらぬらありと生臭い妖気が漂っておる。 いよいよか、と見渡すと大杉に金網のような巣がかけられておってな、幹には熊ほどの大グモがかまえておったんじゃ。 坊様が蜘蛛に気がつくやいなや、化けグモは鬼の姿に変身し牙をむき出しにし、爪を光らせ襲ってきた。 坊様は少しも慌てず、 「私は仏に仕える身、鬼なんぞ少しも怖くないわ。しかし山道でチクッと刺すアブはおそがいもんじゃ。」 と言うと、鬼の姿は一瞬にして消えどこからか、 「ブ~ン」とアブが飛んできた。 すると今度は、 「そうじゃ、アブより恐ろしいものがあった。蚊よ。寝ておる間に刺すからもっとおそがい。」 というと 「プ~ン」 と蚊になって坊様を刺そうとまとわりついてきたんじゃ。 「なむさん」 パチーンと両手で挟むとギリリとひねった。 「ウォォォォォォ」 背筋が凍るような叫びが谷にこだますると一条の光が差しこんでな、それ以来この道は誰でも安心して通れるようになったんじゃと。 おしまい
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Last updated
2012.07.11 14:32:46
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