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カテゴリ:洋画
「テクノスリラー」という小説ジャンルを確立したトム・クランシーのベストセラー小説の映画化。 処女作「レッド・オクトーバーを追え!」に続く映画化で、「ジャック・ライアン シリーズ」第2弾でもある。 「レッド・オクトーバーを追え!」ではアレク・ボールドウィンが主人公ジャック・ライアンを演じていたが、本作ではハリソン・フォードが演じている(フォードは、第3弾「いま、そこにある危機」(小説では第四作目)でもジャック・ライアンを演じる)。 IRA過激派テロリストのショーン・ミラーを演じるのは、007ゴールデンアイで006を演じたショーン・ビーン。ひたすら悪役を演じる。 粗筋 CIA分析官を辞職してアメリカ海軍兵学校の教官となったジャック・ライアンは、仕事を兼ねて妻と娘、三人でイギリスのロンドンを訪れていた。 ライアンが講演の仕事を終え、家族との待ち合わせ場所としたバッキンガム宮殿の広場に着いた時、イギリス王室のホームズ卿がIRAの過激派グループに襲撃される。 ライアンは、襲撃犯と撃ち合いになりホームズ卿を助け、IRAテロリストのショーン・ミラーの逮捕に協力。彼の弟を射殺する。 ミラーを裁く裁判で証言したライアンは、家族と共にアメリカに帰国。これまで通りの平和な生活を遅れる、と思っていたが……。 ミラーは、護送中に仲間のケビンに助けられて脱走。彼は弟を殺された復讐に燃え、直ちにアメリカへ渡り、ライアンの妻子を襲撃。大怪我を負わせ、国外に脱出した。 これを機に、ライアンはCIAに復職。ミラーと、その仲間を追う。数少ない証拠や、同じIRAでありながらも過激派とかした一部にうんざりしていたIRAの穏健派からの協力により、ミラーとその仲間の居所――北アフリカのテロリストキャンプ――を掴む。 ライアンの分析結果を元に、アメリカは奇襲攻撃を仕掛け、テロリストキャンプを殲滅。これで一件落着と思われた。 しかし、ケビンとミラーは、奇襲直前にテロリストキャンプから離脱して、アメリカに戻っていた。 実は、ライアンによって救われたホームズ卿が、公務でアメリカを訪れていたのである。その一環として、命を救ってくれたライアンに礼を述べる為、ライアン邸訪れる事になっていた。 ケビンとミラーは、これを絶好の機会と見る。ケビンは、ホームズ卿を人質に取ってアイルランドの政治犯を釈放させるという目的を果たせるし、ミラーは弟を殺したライアン一家を殺害出来る、と。 そんな事も知らず、ライアンはホームズ卿を出迎える。 そこを、ケビンとミラーは襲撃。イギリスのVIP警護員には、ケビンらに通じる内通者がいたので、難なくライアン邸に侵入出来た。 異変に気付いていたライアンは、ケビンらの襲撃にどうにか耐え、復讐に燃えるミラーを返り討ちにする。 感想 映画版と原作小説では、当然ながら違いが多い。 小説では、本作は時系列的には処女作「レッド・オクトーバーを追え!」の前の出来事となっているが、映画版は、「レッド・オクトーバーを追え!」に続く映像化とあって、そのまま「レッド・オクトーバーを追え!」の後の出来事扱いされている(らしい)。 原作では、IRA過激派に襲撃されるのは英国皇太子。映像化では、流石にそれはまずいと判断されたらしく(ライアンは皇太子に無礼な発言をする)、本作で狙われるのは王室の一員、となっている。 綿密に練られている様に思える小説も、いざ映像化されると穴だらけであるのが明瞭になる場合が多い。 本作も、その例に漏れず、穴がとにかく多い。 IRA過激派テロリストらは、身元が判明していて、指名手配されているにも拘らず、ほぼ問題なくイギリスを脱出して北アフリカに渡っている。ケビンやミラーは、そこにずっと留まるのではなく、2度もアメリカに渡る。アメリカは、中央情報局(CIA)が衛星画像の分析でテロリストらを難なく特定する一方で、国境警備はまるで成っていないのである。 イギリスの要人警護も隙だらけ。そのお陰で、ホームズ卿は2度も襲撃され、2度もライアンによって命を助けられている。そもそも要人警護員の中に、内通者がいて、それが全く疑われないのは、おかしいとしか言い様がない。 ミラーが、弟を殺されたとはいえ、ライアンを執拗に追うのも、よく分からない。そこまで殺された事を恨むんだったら、そもそも弟をテロ活動に参加させるべきでなかった。 ミラーは、テロリストながらも家族思いなのか、と思いきや、最終場面でイギリス軍によって殺害された親の代わりに自分と弟を育ててくれたケビンをあっさりと射殺しているので、そうでもなさそう。 仮に弟が「テロなんかに参加したくない」と拒んでいたら、何の躊躇いもなく始末していただろう。 結局殺しが好きなだけの様だ。 上述した通り、ミラーを演じたのはショーン・ビーン、007ゴールデンアイといい、本作といい、悪役ばかり。そういう顔付きなのかも知れないが、ちょっと気の毒。 ケビンは、IRA本体が穏健になり過ぎて、北アイルランド(イギリス領)のアイルランドへの返還という目標が達成出来ない、という理由で今回の行動に出る。王室を狙わないと目標の達成は不可能だ、と。ただ、何故ホームズ卿を執拗に狙ったのかは、分からない。王室の一員ではあるが、唯一の一員ではない。何故他の一員を狙わなかったのか。 本作の主人公はジャック・ライアンであるのは間違いないが、物凄い活躍をするのか、というとそうでもなく、戦闘に関わるのは最初と最後だけ(無論、それだけでもかなりのバトルだが)。 それ以外は、パソコン画面とにらめっこしながら分析を進める、といったシーンばかり。小説の時は緊張感溢れるシーンも、映像化されるとひたすら退屈である。 最大の戦闘となる北アフリカのテロリストキャンプ襲撃も、衛星からのライブ映像によるものだけで、不鮮明な画像もあって、緊迫感が全くなく、あっと言う間に終わっていた。 無慈悲なIRAテロリストが登場し、銃撃戦もあるが、ライアン一家など、死んでいて不思議でない登場人物は一部重傷を負うものの全員が死なずに済む。死ぬのは雑魚や、死んで当たり前の者ばかり。 その意味ではハッピーエンドが大好きなアメリカ人向けのハリウッド映画。 迫力があるのか、ないのか、分からない一作。 原作者トム・クランシーは、処女作でテクノスリラーという小説ジャンルを確立したものの、本人はそういったものから早々とポリティカル・サスペンスへと移行。 ただ、アメリカ人によるポリティカル・サスペンスなので、アメリカの思想、アメリカの思惑ばかりが強調され、アメリカ人以外には受けない代物ばかり連発する様に。 その事もあって、全米1位のベストセラーが多いにも関わらず、映像化されたものは初期の作品ばかりで、最新作は対象となっていない(ジャック・ライアンが、シリーズが進むに連れ政界に転じ、最終的には大統領になってしまう、という展開が突飛過ぎるのも問題だろう)。
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Last updated
2010.08.26 19:31:24
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